2時間ぐらい眠っただろうか?マスタングの時計を見ると6時だった。
そのまま視線をボンネットのほうへやると、3人のおっさん達がこっちを見て笑っている。何がおかしいのか解らないが、とりあえず「ヤバイ」と思ったので、大急ぎでエンジンをかけてパーキングから出た。寝ぼけながらのフラフラ運転だった。馬鹿でかいトレーラーにイジメラれながらも、無事にどこかの路側帯で落ち着くことができ、8時までマスタングの中で眠った。
昨夜見つけておいたユース近くのパーキングにマスタングを停めて1日分の料金$6を払い、やっとユースにチェックインすることが出来た。一泊$19だったが、ここらでは安いほうらしい。
言い忘れたが、今日はメキシコ国境沿いのTijuana(ティファナ)に行き、マルガリータを飲む予定だ。ティファナはアメリカ人観光客が多く、ドルも通用するので便利らしいのだ。
ユースのカウンターでTijuanaのへの行き方を教わったうえ、地図まで頂いた。「San Diego Trolley」という鉄道の路線図である。
ここの部屋は6人部屋で広くゆったりとしており、清潔だったがやはり男臭かった。リュックを背負い、さっそく駅へ向かって歩き出した。「おいおい、America Driveなのに電車かよ!?」と思われるかもしれないが、レンタカーの保険だけでは、メキシコ国内での効力が無いらしいので、今回は電車で行くことにする。
トロリーの駅まで、歩いて5分とかからなかった。自動販売機で切符を買って待っていると、しばらくして「ブルーレーン」という国境行きの列車がやってきた。青い車体色を想像していたが、やってきたのは赤い列車だった。40分ぐらい列車に揺られて国境手前の町、San Ysidroに着いた。
国境の手前なので、人が多く賑やかである。側のスーパーマーケットに入り、水を買ってから出国することにしたが、カビが生えたタコスの皮まで当たり前のように売っていた。「気分はもうメキシコだ!」
長い長い幾つにも曲がりくねった歩道橋を歩き、出てきたところに国境のゲートがある。アメリカ側のセキュリティーの人たちも、真剣な顔でトランシーバー相手に声をかけていた。
国境のゲートといっても、動物園から出るときにあるような鉄の回転扉をくぐるだけだ。審査もないので出国するような気分にはなれなかった。
回転扉をくぐると、すぐにタクシー乗り場がある。オンボロタクシーの運転手たちが「タクシー!」と叫んでいる。またボロボロの服を着たお姉さんが、ショッピングカートを押してゴミ箱をあさっている。しかもサインボードは全てスペイン語だ。急激な変化に対応出来ず、パニックを起こしそうだった。
一人のタクシー運転手が英語で話しかけてきた。「ついている!」その運転手にアメリカへの入国ゲートの場所を聞く事ができ、「いつでもアメリカに帰られる」という安心感が生まれ、ホッとした。
タクシー乗り場から少し歩いたところに、タコスの露店が3軒連なっている。一つの店を選び、中身の違うタコスを2つ頂いた。2つとも中にシラントロ(コリアンダー、香菜、シャンツァイともいう)というカメムシの匂いのする葉が大量に入っていた。「食えるのか?」と思ったが、驚いたことにかなり旨かった!
タコスを食べ終えてダウンタウンの方角に少し歩き出すと、また賑やかな商店街が出てきた。貴金属店の商人たちが次々と店から出てきては、「カチョウサン」「ハラキリプライス」というセールストークで必死に店に入れようとする。無視して歩いていると「チョットマタンカ」である。なんで「シャチョウサン」じゃないんだ!?
レストランの従業員たちも、メニューを持って客を探している。その中で感じが良く、英語の話せる男がいたのでレストランへついて行くことにした。レストランといっても外にテーブルが置いてあり、側の馬鹿でかいスピーカーからヒップホップの流れている、ちょっとイカした店だ。
マンゴーマルガリータとサルサチップスを注文。「マルガリータにテキーラを入れるか?」と聞かれたので「少し」と答えると、出てきたものはまるでジュースのようだった。仕方なく全部飲み干してからコロナを注文した。
しばらくすると7歳くらいの子供たちが、アクセサリーを売りにきた。「ダメ」と言って追い返すが、次々と順番にやってくる。もっと小さい男の子が「チップスが欲しい」というので、残りのチップスをあげると両手にたくさんかかえて、どこかへ行ってしまった。
担当のラファエルという男と話をした。なかなか楽しい奴で、下ネタ大好き男だった。「夜にダウンタウンのクラブに行けば、ボインボインで綺麗な姉ちゃんがたくさんいるぜ!アハハッ!!」と笑った。しばらくコイツと遊びたくなってきた。
「ちょっとダウンタウンに行って来る」と、レストランを後にした。歩道橋の上では貧しそうな子供たちが、デタラメなギターを弾きながら歌を歌っていて、前には空き缶が置いてある。貧し過ぎる子供たち、何だか悲しい気分になった。
ダウンタウンに着くと、ちょっとヤバイ匂いがする。店もたくさんあるのだが、さっきの商店街のような活気はない。まだほんの入り口に差し掛かっただけだろうが、少し見て回っただけでダウンタウンを出ることにした。が、そこで驚くことに「TACO BELL」を見つけた。
「あれ???」タコベルとは全米で展開している、タコスのファーストフードである。手書きではあるものの、綴りもまったく同じでベルマークもしっかりと入っている。メニューもまったく違っているが、これが元祖「TACO BELL」か?それとも...
商店街へ帰ってきて、またラファエルと話した。彼はなんとアメリカ人だった。ロスで育ったが、麻薬で捕まり刑務所に5年間いたと言った。それからここに移住し、今は結婚して1歳の子供がいると言った。真面目になったものだ。
2人で噴水のブロックに座り、彼がスペイン語を教えてくれた。もちろん下ネタのだ。女の子が通る度に「おっぱいは...」「おしりは...」「...は...」という具合だ。
しばらく話し込んでいるうちに暗くなってきた。楽しかったTijuanaに、ラファエルに別れを告げなければならない。ラファエルは「また来いよ」と言ってくれた。
入国ゲート手前の貴金属店でまた声を掛けられた。なかなか大きい建物だったので入ってみることに。しかしお年寄り向けのものが多く、店を出ようとすると店員は「俺はアステカだ!」「君はサムライだろ!?」と必死である。「時代がぜんぜん違うじゃねぇか!?」
入国審査は小奇麗なアメリカ人で長蛇の列だった。入国審査は簡単に終わり、帰りの列車に乗った。外国ではしてはいけないことなのだが、眠ってしまった。昨日の疲れが溜まっていたのだろう。
ユースに戻りシャワーを浴びた。1日入っていなかったので気持ちよかった。部屋に戻りラーメンを食べようと仕度していると、隣のベッドの「イー」というコリアンが部屋に入ってきた。「明日ハリウッドに行くんだよ」と言うと、そこのユースのクーポンをくれた。いい奴だ!
彼は3ヶ月間アメリカを周るらしい。すると驚いたことに、ハリウッドのユースでジョン・ブギョン(フラッグスタッフで一緒だった)と一緒だったと言うのだ。「マジかよ!」
パーティールームでラーメンを食べ終えて一服していると、3人のスパニッシュ達がいた。彼らはここで、日本で言う人力車の仕事をしているらしい。金を貯めてLasVegasに行くのだそうだ。
しばらくして、日本人の女の子達がパーティールームに入ってきた。彼女たちも今日ここに着いたらしく、明日Tijuanaに行ってタコスを食べるのだそうだ。緑茶をご馳走になり、旅の話で盛り上がった。
今日は衝撃的な一日だった。国境を越えるだけであれほどまでに違うとは...。
AM1:00就寝。
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