● 単為発生
卵子だけでマウス誕生 東農大、ほ乳類で世界初
受精をしていない雌の卵子だけを使い、新たに雌マウスを誕生させることに東京農業大の河野友宏教授(発生工学)らが成功し、22日発行の英科学誌「ネイチャー」に発表した。雌の遺伝情報だけからの個体発生は「単為発生」と呼ばれ、ほ乳類での成功は世界初。研究チームは「家畜の品種改良などに役立つ」としている。理論的にはヒトへの応用も可能で「男女両性の関与による生殖のあり方を脅かす」などの論議も呼びそうだ。
ほ乳類の受精卵は母親(卵子)と父親(精子)の双方から染色体を1組ずつ受け継ぐ。染色体には遺伝子があり、特定の遺伝子は片方の親から受け継いだものだけ働くことが、受精卵の成長に欠かせない。ゲノム刷り込みと呼ばれる現象だ。
研究チームはマウスの遺伝子を操作し、染色体が精子に近い刷り込み状態になる雌をつくった。生後間もないこの雌の未熟な卵子(卵母細胞)の核を精子代わりに使い、別のマウスの成熟卵子に移植して胚を作成した。
胚を別のマウスの子宮に戻したところ、28匹の妊娠に成功。このうち2匹は健康な状態で生まれた。1匹は処分して詳しく調べたが遺伝子の異常などはなかった。残り1匹は「竹取物語」のかぐや姫にちなみ「かぐや」と名付けた。かぐやは通常の交尾をし、2度の出産に成功した。
河野教授は「研究は、ほ乳類の発生メカニズムの解明が目的で、ヒトへの応用は考えていないし、許されない」と話している。【永山悦子】
◆ことば◆単為発生
卵子が受精することなく細胞分裂し、成長すること。自然界では昆虫やは虫類、鳥類、魚類、植物などで単為発生がみられる。卵子が作られる過程で遺伝子の組み換えが起きるため、単為発生で生まれた子のゲノム(全遺伝情報)は親とは異なり、クローンにはならない。体細胞の核から作るクローンは、核に父親由来と母親由来の遺伝情報を含むため、単為発生ではない。
◆解説◆「もう男は不要?」 進化の謎、解明期待
生命の歴史上初めて、雌からの遺伝情報だけしか持たないほ乳類が生まれた。東京農大の河野友宏教授らが遺伝子操作や核移植などの技術を駆使し、マウスの卵子だけから子どもを誕生させた。論文を掲載した英科学誌「ネイチャー」は「もう男性は不要?」との見出しを付けた。
マウスを遺伝子操作し、2匹の卵子を使うことから「単為発生とはいえない」との批判もある。しかし、科学的には、ほ乳類の発生メカニズムに迫る画期的成果だ。東京医科歯科大の石野史敏教授(分子生物学)は「生殖細胞で、父と母のどちらかに由来する遺伝子だけが働くゲノム刷り込みの解明につながる。ほ乳類は、雄と雌による両性生殖でしか生まれないのはなぜかという進化のなぞを説明できる日が近づいてきた」と評価する。
一方、「マウスで成功した以上、ヒトへの応用も論理的には可能」と警告する専門家もいる。
米国のベンチャー企業は02年、カニクイザルの卵子を単為発生させ、どんな細胞にも変わる能力を持った胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を作った。機能を失った臓器などの再生医療のためで、ヒトでも試みる方針を示した。
今回は、遺伝子操作を含む非常に複雑な手法を使っており、河野教授は「ヒトへの応用は考えられない」と強調する。日本では、国の指針で生殖細胞の遺伝子操作は禁止されている。妊娠に成功した28匹のうち、健康に生まれたマウスはたった2匹で、成功率も低い。
だが、人間の欲望は限りがない。子どもを持つことを望んだ同性カップルが、技術の利用を求めるかもしれない。いまだに完成した技術ではないことを念頭に、研究の進展を注視することが必要だろう。【永山悦子】
毎日新聞 2004年4月22日 2時00分
■ 海外で背負う自己責任について
イラクでの日本人人質事件報道を見ていて、大いに考えさせられました。まずは当たり前のことですが「私も日本人なんだ」ということ(特に人質の方々のパスポートの
アップ映像を見て)。パスポートを持って外国へ降り立った瞬間から、「日本人」としての自己責任を負うんだ、ということを重く受け止めました。
次に考えたのは「自己責任」という言葉の意味についてです。確かに3人は「尊い思いを行動に移すタイミング」の判断に甘さがあったのかもしれません。また追い詰め
られた家族に理性を欠いた言動があったとも言えるでしょう。
でもイラクでの3人の自己責任とは、攻撃・拘束・殺害されるかもしれないというリスクを自ら負うことであり、救出にかかる費用を負担するとか、自衛隊撤退を迫る交
渉材料になるということについて責任を持つということではなかったはずです。イラクの報道を現地のフリージャーナリストに頼っているマスコミがバッシングを煽るかのような
報道を行う姿勢にも疑問を感じました。
■ 事件から学びたいこと
「お金を少しでも有利に運用したい」と思っている人すべてにとって、今回の事件は「人ごと」ではありません。金融自由化が進んできているここ数年で私達はイヤという
ほど「自己責任」という言葉を聞かされてきました。イラクの事件とお金の世界では自己責任の意味は異なりますが、言葉の持つ重さは実感できたかと思います。自己
責任を果たすためには(1)正しい知識、(2)常日頃からの情報収集に加えて、(3)状況に応じた適切な判断と実行が必要だということを、私達は今回の事件を通し
て学ぶことができたのではないでしょうか。
今日本人は、学校やその他の場所で、十分な金銭・投資教育や消費者教育を受けることなく、お金の運用に関して「自己責任」の自由競争の場に放り込まれよう
としています。政府は「自己責任」という言葉のアナウンスは行っていますが、自己責任で自分の金融資産を守っていけるだけの知識を普及させる努力はほとんど行っ
ていません。また最新の情報も、投資家保護の法整備も不十分です。
政府は「金融市場の活性化」を優先課題としており、金融の消費者保護は後回しで力を入れていません。金融自由化で先を行く英国では、金融の消費者保護策
の整備まで金融庁が取り組んでいます。ところが日本のスタンスは一言で言えば「被害が出てから救済策を考える」というものです。日本でも金融の自由化を進めるな
ら、それと同時進行で、投資家保護の仕組みを整備していくことが必要ですが、残念ながらそのような流れになっていません。
ここ数年で「自己責任」という言葉ばかりを繰り返し刷り込まれてしまった結果、何でもかんでも「自分で責任をとることが自己責任」といったような誤った思い込みをして
いる人が増えているように思います。
このような認識の延長線上で「詐欺まがいの金融被害が起きたらどうなるんだろう?」と今回の件をきっかけに心配になりました。詐欺まがいの金融被害は、後で振り
返ると「何であんな言葉を信じてしまったんだろう」とか「何であそこで踏みとどまれなかったんだろう」と本人自身も自分を責めることがよくあります。被害者の救済が行
われる前にもし監督省庁の高官が「自己責任」という言葉を出したら、「騙された人がバカなんだ」「自己責任だから損は自分でかぶればいいんだ」という世論で、被
害者が救われない可能性もでてきてしまったのではないか、と思うと危惧を覚えます。
■ 自己責任を支えるのは「保護の仕組み」「バランス感覚」「チャレンジ精神」
理由はどうあれ「邦人保護」は政府にとって重要な責務であり、「命の次に大切」とも言われるお金の保護の仕組みを作ることも大切な仕事なはずです。私達は「個
人の力を超えた暴力や(金融)被害に遭った時」のために税金を払っているのです。また私達の豊かな生活(特に災害救援・福祉・国際貢献の分野)はボランティアや
NGOの尊い志と貢献に支えられているということも忘れてはならないと思います。
イラクの事件を機に「政府の義務」と「個人の自己責任」そして「ボランティアの役割」のバランスについて、冷静に考えてみてはいかがでしょうか。拘束された3人を自衛
隊と並べ「誰も危険を冒さなければ私達は前進しない。(3人を)日本の人は誇りに思うべきだ」と述べたパウエル米国務長官の言葉をかみしめながら、資金運用を含
めたあらゆる「自己責任」について、私も改めて考えてみたいと思います。
AFP 伊藤美和
提供:株式会社FP総研
● イラク人質事件とオカネの自己責任? 2004年4月27日
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