@インド バグスー村(1)
「自分が正義だと思える方を信じればいい。自分が幸せだと思える方に行けばいい。それが君を愛する全ての人々にとっての幸せだからだ。」
同じ宿で暮らしていたフランス人青年に、両親のことを聞かれた。
私の家庭は、物心ついた頃には崩壊していた。特別なことでは無かった。
16の時、私は当たり前に、実の父親から“逃避”した。そして平穏に暮らすことに成功した。だけど自身を守ることに精一杯で、残された母親のことを考える余裕なんて無かった。
彼に淡々とそんな話をしているうちに涙が溢れた。そして突如言葉を失って黙り込んでしまった。見ると彼の眼からも涙が溢れていた。
アランの幸福論にこんなフレーズがあった。
「なるほど、我々は他人の幸福を考えねばならない。その通りだ。しかし我々が自分を愛する人達の為になすことが出来る最善のことは、自分が幸福になることである」
そのフレーズを彼が知っていたのかどうかは解らない。だけどただ、彼のその時のその言葉が本当に嬉しかった。