新ショートコラム〜エリア456(3)〜侵入者(1)
 外人部隊に休みはない。ヨーロッパでは珍しいことらしいけど、土曜も日曜も必ず誰かは働いている。ある日曜日、コーヒールームから戻ってきた中国人が、「コーヒールームに怪しい人がいる。僕は恐いから帰る。」と、言い残し本当に帰ってしまった。その日、来ていた人が交互に様子を見に行ったが、確かに誰も知らない人だった。

 僕らが働いている建物は、夜間や土日は入り口に鍵がかかり、特別なマグネットキーでドアを開ける仕組みになっている。日曜日に不審者が入れるはずがないのだ。しかし、現実に彼はコーヒールームにいるのだ。そこで、一番若手(!)のインド人が話を聞きに行くことになった。

 20分くらいしてインド人が戻ってきた。侵入者は、やっぱり怪しい人だった。彼の言い分(?)を要約すると、「ロッテルダムのサーカスに勤めており、世界平和のために勉強しないといけない。だから、ここで本を読んでいるのだ。」ということだった。確かに彼の手元には、物性データー集より写し取ったと思われるメモがあった。

 問題は、サーカスで使っているという刃渡り20cmほどのナイフを机の上に置いていることだ。彼はサーカスでナイフを的に当てる芸をしているらしい。

(つづく)