新ショートコラム〜エリア456(6)〜勤労
 外人部隊の夜は遅い。ヨーロッパでは珍しいことらしいが、土日もなく夜の10時とかでも働いている。通常の学生は夕方5〜6時頃帰るものだ。さすがに、外国に来て、勉強したり、仕事をしたりして、次のポジションを探そうという人たちは真剣だ。そのため、いつの頃からか帰りの挨拶が「働き過ぎに注意しろ!」となった。

 もちろん、この挨拶は額面通りに受け取ってはいけない。こちらの学生のレベルで言ったら、この部屋にいる人はみんな「働き過ぎ」だ。しかも、そういう挨拶をしているにもかかわらず、みんなの生活は一向に変化しない。

 同じ部屋にいると言っても、研究テーマは多岐にわたっている。計算化学、触媒反応、流体の実験、無機材料開発などである。こちらに来た事情も、こちらでの立場も随分違う。でも、異国に来て、これから研究者として生きていこうという意味では似ているのかもしれない。もちろんみんな、頑張っている。きっとストレスも随分あるだろう。その中で、「働き過ぎに注意しろ!」と言うのは、なんか、「お互い頑張ろう!」と、みんなに、そして自分に向けていっているように聞こえるのだ。しかし、毎日「お互い頑張ろう!」なんて恥ずかしくて言えないから、「働き過ぎに注意しろ!」となっていたのではないだろうか。

 「働き過ぎに注意しろ!」と言い合っていた仲間は、もう、みんないなくなってしまった。僕もここにはあと2ヶ月もいない。それぞれの道で「働き過ぎに注意?」しながら生きていくしかない。彼らとは、この先会えるかどうかわからないけど、一生貴重な仲間だ。

(つづく)