選挙のはなし。


選挙のはなしと言っても、オーストラリアじゃなくて、日本の選挙のはなし。
日本の選挙のはなしと言っても、政治のはなしではない。
では、一体何の『選挙のはなし』なんだと言えば、海外に住んでいても日本の選挙に参加できるんですよ、って言うはなし。

数年前から話には聞いていたのだけど、長く海外に住む日本人の間で
『私達にも選挙権があるはずだー、海外でも選挙させろー』
てなことになって、海外でも選挙ができるようになったのだ。これを『在外選挙』と言う。

1年程前に引越しをしたので、領事館に提出している在留届けの変更に行った際に『在外選挙人名簿』に登録しますか?と聞かれたのでついでに登録してみたのだ。その時にパスポートもあったし、在留届けに本籍なども書いてあったので、特に改めて必要な書類が無く申し込み用紙に書き込むだけだった。

最近になっていろいろ領事館や日本の藤沢市選挙管理委員会から郵便物が届くようになった。そうだった。日本は間もなく参議院選挙だったのだ。かれこれ選挙なんて最後に行ったのっていつだっけ??ってくらい大昔の話なので、今回せっかくなので行ってみることにした。

必要なものは領事館から送られてきた在外選挙人証、パスポート、日本の選挙委員会から送られてきた投票用紙。
送られて来た案内を読むと、投票期間は6月25日から7月6日で土・日も投票できると書いてある。投票用紙を日本に郵送することもできたが、せっかくなので、友人宅にウェディングのプレゼントを持っていった帰りに領事館で直接投票することにした。

シドニーの領事館は、マーティン・プレイスに面して建っているコロニアルタワーというビルの中にある。選挙会場は33階にある領事館のミーティングルームにセッティングされるということだった。

フィリップストリート側の入り口の近くまでいくと、手にトランシーバーを持った日本人のお姉さんがガラスのドアを開けてくれる。通常は自動ドアなのだが、土曜日なのでセキュリティーがかかっているのだ。
『お疲れ様です』と言われ、なぜかちょっと照れくさくなり会釈して入館。エレベーターまでそのお姉さんは付き添ってくれ、33階のボタンを押してくれる。
『33階、降りて右です。』と言われて、そのお姉さんとはそこでお別れ。33階に到着して言われた通りに右に曲がってすぐ左にその会議室はあった。

部屋の入り口手前にセキュリティーが立っていて、中にはいるとすぐ左側に3人のスタッフ。1人は叔父さん、あとの2人は女の人。その内の1人は在留届けの変更に行った際にいた女の人だった。正面には長テーブルがあり、そこに4人の女の人が座っていた。内訳は左側2人が受付け、左から3番目の人は投票用紙を受け取る人、一番右の人は立会人として署名をする人のようであった。そして入り口入って右側に投票用紙に記入する為の申し訳程度の囲いのあるカウンターが設置されていた。

その顔を唯一知っている女の人と唯一のオトコである叔父さんがテキパキと案内してくれた。手取り足取り状態。なぜなら、投票に行ったはいいが、なにしろ、私1人しかいないのである。私1人に対してスタッフが7人。スタッフ7人の目が私の姿を追っているのが嫌でもわかる。そうそう人から注目されることのない私は、緊張しつつも意味もなく愛想笑いを浮かべるというなんとも怪しい状態で、テキパキ2人組に誘導されるままに書類に記入したり、署名したりして受付けをした。

受付けも並んで2人いるのでどちらに頼もうか、ということになる。その日は凄く暇そうであるので、2人とも目が『私の方に来い!来い!』と言ってるように感じる。とりあえず、自然にどちらかへ出せばいいかなと、近くへ寄っていくと2人がいっぺんに反応するものだから、私もそこで一瞬迷ってしまっい、動きが止まってしまった。
ワタシ『…どちらに出せばいいのでしょう?』
2 人『どちらでもいいですよ。』
仕方ないのでちょっと左よりに立っていたので、左の人に受付けをしてもらった。パスポートと在外選挙人証を出して、日本から送られてきた投票用紙と領事館にあった投票用紙を交換してもらう。
そして、投票用紙にいよいよ記入。
各囲いにファイルがおいてあって政党名やら人名やらがのっていた。そういや、比例代表制なんていうのは初めてだな〜なんて思いながら、ファイルをペラペラめくっていると、周りが静か過ぎることに気付く。どうも、背中に視線を感じられてならない。7人の視線がじりじりと背中に突き刺さっているに違いないのだ。なにしろ、私1人に暇そうなスタッフ7人である。
そう思うと、鉛筆で書いている音が妙に会議室中に響いているようで気になる。

もしや、自意識過剰なだけ?

とりあえず、封筒に入れて立会人のサインをもらい、回収担当の人に渡した。
ワタシ『これで、終わりですか?』
回 担『終わりです。』
正味8分くらいだったが、妙に静かな空気の中での8分間とは、なんと長く感じることだろう。朝、支度している時の8分なんて『あっ』というまに過ぎてしまうのに。
部屋を退出するまで7人の視線は私にむけられ、部屋を1歩出たと同時にようやく『ほっ』と一息できたのである。
セキュリティーに『SEE YOU』と送り出され、『BYE』と言ってそそくさと帰ってきた。

『選挙のはなし』なんてタイトルだが、結局は
『選挙でこんなに緊張したのは初めてであるというはなし』ということで、
略して『選挙のはなし』ということなのだ。






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