犯罪FILE No. 01 火を噴くマシンガン!

4月頃だっただろうか、ゴルゴが突然、アラスカに行くから同行しないかと言ってきた。彼がカナダにちょくちょく出かけているのは知っていた。そして彼が暑いところが苦手なことも。しかしよりにもよってなぜアラスカなのか? 誰しもが疑問に思うことである。しかしシゲゾーはプロである。そのような疑問はおくびにも出さず、「わかりました。同行させていただきます」と即座に答えた。

日程は6月23日から29日までの7日間と決まった。最初ゴルゴが組んだスケジュールでは6日間だったが、オプションがギチギチのツアーで、自由時間がほとんどなかった。そこでシゲゾーが1日延泊を頼んで1日自由時間の日を作ってもらった。自由な時間こそゴルゴが犯罪を犯すチャンスである。しかしそれで旅費20万円強というのはかなり痛い出費である。アラスカ旅行は高くつく。

6月16日(土)
出発の1週間前、旅行代理店で渡すものと説明がある、ということで、ゴルゴと渋谷で待ち合わせをした。その旅行会社は、渋谷駅の近くにある、株式会社アクセルというところで、ビルには表札もない怪しい会社であった。一応、ここがそのホームページらしいが、アラスカについては一切触れていない。別のホームページでかろうじて宣伝しているぐらいだ。しかし雑誌には大きく宣伝していた。
オフィスは思ったよりもこぎれいで、従業員は女性ばかり。かなり雰囲気が良かった。
コーヒーが出されたテーブルで待っていると、われわれの担当者である吉里さんが現れた。挨拶をして、旅券や日程表等を渡され、彼女は日程に沿って説明を始めた。われわれはアラスカに行くために、シアトルで飛行機を乗り継がなければならなかった。そのシアトルの空港がかなり複雑な構造をしていて、どこからどこへ行けばいいかを説明し始めた。

渡された資料の空港マップ

そのときである。ゴルゴがおもむろに持ってきた鞄に手を滑らせたかと思うと、中からクリアファイルを取り出した。そこには何枚かの資料らしき紙が束ねられていた。その中の一枚はインターネットで入手したと思われる上図のようなシアトル空港図をカラー印刷したものだった。ゴルゴはITを駆使するハッカー(ホームページを印刷しただけだが)であることをアピールしつつ、用意万端、抜かりのないことを吉里さんに見せつけたのだ。
「すごいですねぇ」
吉里さんは感心していた。そして立場は逆転したのだ。そう、ゴルゴがシアトル空港について説明し出したのである。あらん限りの知識を動員して。吉里さんに説明してどうなる? 釈迦に説法という言葉の意味は? うどん屋がどこそこにあってそれが食べたい? いったいオレは何しにここへ来たのか? 飛び散るマシンガンの火花を目前にして、シゲゾーはただ呆然とするばかりだった。
遠くへ遊離した意識の緒をたぐり寄せると、ゴルゴがなぜか以前に行ったカナダ旅行の話をしているようだった。帰りの飛行機が故障してシアトルに引き返し、航空会社の手配でホテルに泊まったとか。夕食が出なくてカップラーメンを持っていって正解だったとか。
しかしさすがに吉里さんは接客のプロである。ゴルゴの話についていっていた。また、マシンガンの弾をぬうようにすり抜けつつ、予定通りの説明を進行させていた。
ここでゴルゴのすべての話を記述することはできないが、知り得た有益な情報を提供しよう(さすがにシゲゾーもプロであった)。それは、最初の疑問、「なぜ、アラスカなのか?」についてである。
カナダを旅行した際、現地のガイドが一度行ってみたいところがアラスカだ、と言っていたから。(それだけかい?)
ゴルゴも弾を打ち尽くしたと思われるころ、吉里さんも一通りの説明が終わり、何か質問はないかと尋ねられたが、シゲゾーに何か話す力が残っていようはずはなかった。ぐったりとしてその会社を後にした。

使用された武器 被害者(被害規模)
マシンガン(セミオート) 吉里さん(小:接客のプロだった)
シゲゾー(大)