21世紀の課題

〜 閉鎖系システムと開放系システム 〜





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インターネットや、大量の旅行者が不断に世界の空を行き交うことに象徴されるグローバリゼーションという現象には、国境を越えたモノ、カネ、ヒト、そして情報の流れが含まれる。前の二つは、国際資本や多国籍企業の運動原理という性格が強く、国際通貨基金(IMF)をはじめとする国際機関が流れの妨げとなるものの排除に努めている。それに対して、後の二つは、生きる空間を自ら選びたい、自己を自由に表現し相手に伝えたいという、人間の基本的な思いに根ざしている。ところが現実には、この思いは,領域を基盤に成立した国民国家体制によって大なり小なり制限されている。

地球規模での人の移動は、近年になって突出した現象ではない。シルクロードに代表される古代からの東西交流があり、16世紀からの「新大陸」への移動や、19世紀からのインドや中国からの移動もある。その移動規模は、今日より19世紀の方がはるかに大きい。当時ブランテーション等の開発が植民地的体制下で地球規模で推進され、労働力の移動が進められたのに対して、その後多くの国民国家が誕生し、国境によって領域を囲い込み、外との差異化を図り、内部の統合を目指す動きが地球全体を覆うようになったからである。

国民国家は、それぞれの閉じた領域内で、統合という名で領域的均質化を図ってきた。交通・通信網の整備や共通語の設定などがそうである。これに対して,インターネットの展開は、国家の制約・領域を越えたコミュニケーションのグローバル化を一気に進めている。他方、移動の自由はどうだろうか。日本の海外渡航者が1000万を軽く超えることに示されるように、移動手段へのアクセスは一昔前と比べて革命的に容易になった。しかし、その大半は短期の旅行であり、生活の場の移動ではない。さまざまな移民制限が各国で採られているが、それは、人の移動の自由が国民国家体制の存立根拠と真正面からぶつかる問題だからである。近代の歴史が生み出し、我々が現在支えている国民国家という世界体制が、グローバリゼーションの中で根本的な問題に直面しつつあるわけである。

21世紀の初頭に生きるわれわれは、環境問題など多くの問題に直面している。それらは地球規模の問題であるがゆえに、国民国家やその集合体だけでは解決しきれない。さまざまな人々が知恵を出し合うネットワーク的な解決が求められ、現実もその方向に動いている。閉鎖的な領域を前提とするシステムが、ネットワークという開放系のシステムといかに折り合いをつけていくか、21世紀はそれが問われる世紀となるだろう。




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