最 近 の 関 心 事





ご意見・ご感想お待ちしております。


ネットワークの関係性と領域性について:南アジアを舞台にした場合

この問題に関しては、固有の空間をもたないネットワークはありうるのか、ネットワークを欠いた空間はありうるのかとい う基本的な問題で考えています。インド社会は、領域的には開放的(異なる政治空間を自由に超えていく)であるものの関係 性においては閉鎖的(婚姻会食制限等)なネットワーク集団(=商人をはじめとする移動性の高いカースト)と、関係性にお いては開放的(ミーラース体制により異質な要素、新たな要素を領域内に受容)であるが領域性においては閉鎖的(ナードゥ 等の空間的枠組み内でのナーッタール集会)な地域社会の組み合わせにより、長い期間成り立ってきたとまず認識しています。 植民地化以前の時期に、地域社会の解体過程が進行し、それが植民地支配によって、インド帝国という空間領域を前提として、 領域性よりは関係性を軸としたネットワークが主となったわけです。その中から、国家レベルではヒンドゥー対ムスリムとい うコミュナリズム、地方レベルでは小カーストへの大カーストへの統合という過程が進み、独立に至ります。 独立後、一方で は印パ対立や中印紛争の下で国民統合が進み、他方では会議派の一党支配の下で地域政党が台頭するのですが、これは、関係 性よりは領域性を志向した動きが顕著であったとまとめることが出来るでしょう。

90年代以降になりますと、大きな変化が生じます。BJPのようなヒンドゥー原理主義政党(=関係性に基づく集団)が インド全体への、つまり国民国家という領域的な関係性を確立しようとし、地域政党が州政権を担当する一方で、グロバリゼー ションの下で、外国からの投資、企業進出が進み、あるいは中間層の若い階層がソフトウェア産業の技術者として欧米へ大量 に移動するという事態が進むわけです。これは、空間面での二極化(国民国家、地域)と非空間的な(地域を超越した)関係 性のネットワークの同時展開を意味しているのではと思います。




ネットワークの関係性と領域性について:グローバル・ネットワークの場合

インターネットに象徴されるグローバル・ネットワークの果たす役割について、空間性と関係性の二つの面から考えて見ま しょう。まず、空間性のネットワークについて。地球という空間への共有するという意識がある程度背景にあるとはいえ、基 本的には電子ネットワークという仮想空間を共有しているだけで、現実的な地球という空間を基盤としたネットワークではあ りません。いわば、非領域性、あるいは、非空間性を特色とすると言えるでしょう。このことは、固有の閉じた領域性を追求 し、地球を分割して展開してきた国民国家の理念とは原理的に矛盾する性格のものです。したがって、アジアの多くの地域が 追い求めてきた領域国家(=国民国家)の完成という目標を内部から浸食し、そこにおける国家アイデンティティー、地域ア イデンティティーを根本的に変質させる可能性をもっているわけです。例えば、アンダーソンの『想像の共同体』は、19世 紀以来の世界を風靡し、時には大きな犠牲を生み出したナショナリズムとそこから生まれてきた国民国家が、想像の産物であっ たことを論じています。しかし、この想像された共同体には共通項があります。それは、想像の行き先に、固有の空間を持つ 共同体を希求する点です(例:イスラエル建国やスリランカでの民族紛争)。

他方、 関係性のネットワークについて、インターネットの場合を考えますと、インターネット上で築かれる関係性のネット ワークの第1の特徴は、現実の空間性を欠いているという点にあります。第2の特徴は、関係のあり方が一方通行であり、相互 の関わり合いが恣意的にしかなし得ないという点で、インターネット上で関係が築かれたとしても、まずそれは基本的に個人が 一方的に、かつ時間を区切って築く関係です。情報を求める個人にとってはアクセス、非アクセスという一方通行の繰り返しで あり、情報の与え手にとっては、、一方通行の入り口で回路が開かれるのを待つ関係であり、総体としてみれば、一方通行の総 和であり、常に双方向の回路が保証されているわけではないと言えるでしょう。第3の特徴は、分散性、分節性である。個から 一方的に結ばれるこうしたネットワークは、あくまで多数の個が主体となり、個と個の二者関係が連鎖して広がっていく分散的 ・分節的な関係性のネットワークを特徴とします。但し、その場合、このネットワークにつながる参加者が、そのまま関係性の 共同体を築くわけではないでしょう。第4の特徴は、したがって、ここで築かれる関係性のネットワークは、自身の運動性もっ た自律的な共同体を形成するものではないという点です。第5の特徴は、こうした関係性のネットワークの非空間性自身が、逆 に現実の空間を超えた極めて広範な領域にわたる共同性を個人の内面に築き上げる契機を持っているということです。それは、 場合によっては、想像の共同体を生み出し、あるいは逆に空間性を基盤とした共同体を強化し、補助する役割を果たす可能性を 持つ。例えば、幾つもの政治空間を超えたエスニック集団を結成させ、NGOなどを成長させる可能性をもっていると言えるでしょ う(例:遠隔地ナショナリズム)。




GO BACK