第九章闘争記



一家百年の闘争記

  この話は大分前に新聞で読んだ物です、印象深かったので今でも良く憶えており此処に載せます。

  あるゴミ集積地(注 中国のは乞食がゴミを荒らさないように集積地が一つの小屋になっている)でゴミの中から声がする、という苦情が相継いだ。 ある朝その声があまりにも大きかったのでゴミ集積地の周りに人が集まり、その内の一人がゴミ集積地の奥へ思いっ切りゴミを放り込んだら
「誰だ!!ゴミを投げ込むのは!!」
  と、怒鳴り声が中から聞こえてきた。 中から出てきたのは老人一人、老婆が一人、赤子が一人、計三人。  ゴミを投げ込んだ男がお前達は此処で何をやっているのか? と、聞くと老人が長きに渡る闘争を語りだした

  この三人は家族で赤子は息子の子供だそうです。 今息子と娘は他の街に物乞いに出ており、孫の面倒はこの老夫婦が見ているそうです。 この老人は抗日戦争、国民党との戦争、朝鮮戦争を切り抜けてきたバリバリの共産主義者であり、共産党が国内を固めた後、党幹部としてかなり上の地位にいた。 しかし文化大革命発動後権力闘争に敗れ失脚する。 批判運動を逃れる為乞食に身をついやし、持っている全ての勲章を胸に着け北京にある党本部へ汚名を返上してもらうために向かった。 しかし当時は電車に乗るのにも身分証明書や、移動証明書が必要なため歩いて北京へ向かうのだが、途中で収容官捕まり、故郷に強制送還され、批判される事の繰り返しであった。 
  そんな事を何回か繰り返しているうちについに、上手い具合に北京にたどり着き党本部に駆け込むが全く相手にされなかったそうです。 今まで命を賭け敵軍と戦い続け、共産主義国家を作り上げるため命を捧げたのに・・その証拠に沢山の勲章も持っているのに・・無視をされた
  北京にいても埒があかないと思い東北地方へと向かう。 東北地方には昔の戦友がかなり上の地位に着いているので何とかして貰えるだろう、と思っていたのだが着いてみると戦友はすでに死亡しており、途方に暮れるのみであった。

  そんな事を繰り返している間に娘も大きくなり、息子も生まれたのだが生活はいっこうに良くならず乞食のまま・・子供達は勿論教育を受けていないので将来も乞食のまま・・

  観衆の一人がもうそんな昔の事は諦めて、せめて孫達だけでも正常な生活に戻してやればどうだい? の諭したが、すでに息子の代から国に届け出を出していなかったのでどうすることも出来ない、のだそうです・・。