「えらいわ、たくやくん。よくできたわね」
やぎの妙子先生がたくやをほめました。たくやは素晴らしい微笑を浮かべています。
「今日いい子にしてたらおかあさんがむかえに来てくれるんだ」
たくやは元気にそういいました。
「そう…よかったわね。たくやくんはおかあさんに会ったことないの?」
妙子先生はたくやにたずねました。
「あるよ。でも、忘れちゃった。ぼく、とっても小さかったんだ。名前しか覚えてないんだ。でもいいんだ、今日会えるから。ぼく、いい子にしてたから会えるんだ」
たくやはそう言って、時計に目をやりました。
「3時になったら今日は終わりだよね」
たくやは嬉しそうに言いました。
やがて、3時になりました。他の幼稚園のお友達のお迎えが次々にやってきます。
「早く来ないかなぁ」
たくやは目を輝かせて待っていました。しかし…
やってきたのはおとうさんでした。
「たくや、おかあさんはね、遅くなるそうなんだ」
「おかあさんは来てくれないの?どうして来てくれないの?」
たくやの目に涙が浮かんできました。あんなにおかあさんに会いたかったのに、おかあさんは来てくれなかったのです。
「ぼく、いい子にしてたよ!」
そういうとたくやは走り去ってしまいました。
「たくや!」
「たくやくん!」
おとうさんと妙子先生はたくやを呼びましたが、たくやは走り去っていきます。
「ここで待っていてください!」
妙子先生はつよくおとうさんにいいました。そして…
「どうして…」
妙子先生の口から言葉が漏れました。
「すまない…」
妙子先生がその言葉を聞いたかどうかはわかりません。妙子先生はたくやを追って走って行きました。
つづき