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2月11日(月)
今日はひどかった。

先週の結果を見直した。大体間違いは無い。多少修正の必要な個所を見つけただけだった。

たぶん、既知の事実だと思う。残念だが、私のオリジナルの結果ではありえない。

いつまでも、くよくよしてても始まらないので、次に進めることにした。最後まで行けば、わたしのオリジナルだ。

それには自信がある。

それで、次に障害となる問題を整理してアタックしてみた、というのが今日の仕事であった。

それが惨敗、惨敗。どうしようもない。

この問題を迂回していくルートが無いわけじゃない。しかし、それではエレガントにならないのだ。

エレガントに問題が解けないと、英語力の無い私には魅力的な論文は書けないような気がするのである。

というわけで、どうしても克服したいヤマなので、また明日、頑張るぞヨ。
 

ところで、今日は私のオフィスの同居人が現れた。50歳ほどの女性である。テレサさんとか言ってたかな。

あまり話をしないけどスペイン語を流暢に話すのでスペインの人かな。
 

そういえば、朝出勤したとき、若い男性が私のオフィスでパソコンを使っていたので、MAiAの学生さんかと

思ったら(ときどき、こういうことがある)、あとでNuriaさんとディスカッションしてたから、たぶん共同研究者で

短期滞在なのだろう。お昼ご飯も、ご相伴した。



2月12日(火)
先週とは違って、今週は本当にひどい。今日もめちゃくちゃ。全然わからない。

気が付いたら元の式に戻っていたりするところは、青木ヶ原の樹海を横断することに喩えたくなるね。したことないけど。
 
 

先月末あたりから、来年度の天文台共同研究旅費の申込書を書いていた。それを今日発送した。

思い出せば、そもそも今の研究テーマは、2000年度の共同研究旅費を申請するときに捏造したものだった。

約2年前ね。あの時は、いろいろ考えて、考えた挙句に搾り出したアイデアで、

いいアイデアだけど、しょぼいな、しょぼいけど簡単には終わらなそうだな、

こんなテーマがライフワークになっちゃったら悲しいなぁ

なんて考えていたっけ。でも初めに期待したより面白そうでよかった。
 
 

さて、昨日登場のテレサさん、ぼちぼち話すようになった。パソコンのことをいろいろと聞かれるのである。

インターネットのブラウザを立ち上げたいとか、プリントしたいとか。

お昼ご飯のときは、サンパウロの話をしてくれた。日本人が沢山いて、日本語の書籍も沢山、日本食のレストランも

沢山あるって。すしも好きだと言っていた。ブラジルから来たらしい。

研究の話はしてないけど、広げてた本を見るに、商売敵らしい。
 
 

昨日の青年は(名前?知らないよ)デンマーク出身なんだって。ポスドクでフランスのトゥールーズに来ているんだけど

Nuriaさんとディスカッションするために1週間ほど来てるんだって。何研究しているか聞いたら、Holomorphic equation

だって言ってたけど、なにそれ、知らないよ、知らないけど、あーそうって返事しちゃった。一応、聞いたことはあるから、

すぐに聞き取れたけどね。

で、彼も私に、何やってんだって聞くから、天体力学、N体問題だよ、ニュートンの重力の問題だよ、って話したけど

何回も聞き直すし、挙句、あぁ、それって代数でしょって、とんちんかんなことを言うので彼は聞いたことも無かった

らしいね。もちろん、こんなこと比較しても50歩100歩だけど。
 
 

取り留めの無い話のついでに、学内散歩中にタマキさんにばったり会う。以上。



2月13日(水)
ようやくSimo先生とお話することになった。先週渡したメモを使っての面接となった。

Simo先生のコメントはこうである、"It's not clear for me"

つまり、証明になってない、ということ。

もうひとつ、既知ではないということ。

証明は書き直す必要があるにしても、既知ではないということには大いに励まされるのである。

でも、不思議なことに、この数学のように厳密を追い求める世界で、

「ある定理が既知ではない」ことを厳密に証明する手立てが無いのである。

長老達の合議制で決まると言っても過言ではない。やはり人のなせる業なのか。

今回は、著名な一人の老練なる学者の意見だけしか見ていないが、有力な状況証拠の一つといえるのだ。
 

さて、証明の書き直しが命ぜられたのと、昨日までの難問に取り組むのとで、ぼんやりしているうちに

セミナーをすっぽかしてしまった。別に何も約束していたわけではないが、

実は、今日のセミナーは、久しぶりの開催なのであった。ただ、それだけ。

内容に関心が無いわけではないが、(たとえば今日の一人目の話は非線形微分ガロア理論)

今は、それどころではない。
 

ところで、昨日までの難問の中で歪対称行列(あるいは交代行列)の行列式やカーネルを求める問題が出てきた。

奇数次の場合の行列式がゼロになるのは高専でも授業するけど、偶数次の場合は知らなかった。

調べると、Pfaffian多項式の2乗になるという。つまり、非負なのね。カーネルの次元も一般には

奇数次で1次元、偶数次で(条件を一つ付加して)2次元、ということみたい。

へぇーっ、感心感心。

これが出来ることは必要だったけど、十分ではないので、まだまだ、先が長いよ。

3体問題の場合では証明が終わったけど、一般のN体問題ではね、どうしますか、帰納法?いけるかな?

まぁやってみましょう。



2月14日(木)
しまった。また、ぬか喜びだ。

"It's not clear for me"

は「既知ではない」こととは関係ないぞ。むむむ・・・・・・・・でも既知なら既知と指摘してくれたよね。相転移のときもそうだった。
 

それにしても今週は、わからな週間ですな。先週までの快進撃はどこへやら。いや、いや、昨日書いた証明の話ね。

全然わからないので、べつの問題を考えた。でも、それもどうにもならなかった。八方塞、ですか?
 

あ"〜あ"。
 

今日もテレサさんとぼちぼちお話ししたが、結構気のいいおばさんである。学者臭くないところがいい。

私にスペイン語で話し掛けてくれる。教育的配慮か。研究の話も世間話もした(これは英語)。
 
 

さて、Simo先生に相談してよかったな、と思う。改めて自分の書いた証明を読んでみると、やはり不十分ではないか。

内容に間違いがあるわけではない、と思う。ただ、表現やら証明方法に改善の余地が大いに残されている状態である。

論文を書くことがそのまま研究だなんて昔は思わなかった。

かつては、問題が解けたら論文を書く、という順番だと思っていたのだ。実に浅はかだった(失礼、今もです)。

でも、ようやくこの年になって分かってきた。論文を書きながら考えないと進むべき方向を見誤るし、研究が深まらない。

問題点も明らかになる。

パワーポイントも有効だ。でも結局、共通しているのはコミュニケーションツールだってことかな。

人に説明することで、自分が理解したことを明確に意識することが出来る。

言葉に置き換えることによって、はじめて、確立した知識と言えるのだと思う。

まさしく、人は言葉があって初めて考えられるのであろう。
 
 

それにしても、私のこの貧弱な言語能力は何とかなりませんかね。

スペインに来てから3ヶ月も経つというのに、いまだにろくに会話できないもんね。

異国で一番不安なのは、情報が不足していること(言語の所為ね)なので、

日本人留学生のみなさんに色々と情報を頂いたのには、ただただ感謝感謝。

でも、明日帰国するんだって。正直なところ寂しい。

色々お話をした。歳の頃は高専の5年生ぐらいの学生さんだけど、結構みんなしっかりしてるよね。

日本帰って、すし食べるんだろうなぁ、うどんとかそばとか。湯豆腐なんかもいいよね。いいなぁ。おでん、とかさぁ。

パスタだって、日本のほうがうまいよ。

いかん、いかん、日本の食べ物のことは忘れることにしていたんだっけ。
 
 

夜、11時。お別れパーティだ。留学生にとっては、打ち上げパーティだ。

SJの前にあるTaita2という店で酒盛りをする。彼らはここの常連さんだ。私もやや常連だ。

おしゃべりをしたり、写真をとったり、賑やかな夜だった。

それにしても、たぶんお店の人は私も帰国すると思っているんだろうね、次、行きにくいね、ちょっと。



2月15日(金)
今週の壁はとりあえず回避して、先週のレポートを見直した。

そして、もっと洗練しなければいかんと感じた。この記述では何も伝わらない。

この結果、今日のこの作業の中から新しい事実が浮かび上がってきた。少しだけ進歩。

運動方程式を変換した時の質量行列が必ず対角になるように変数を選べる、ということ。
この事実は、すでに個々の計算の中で気が付いていたのだが、一般化できることが分かったのであった。

そういえばSimo先生も、この点についてはどうなの?なんて言ってたっけ。

そのときは、分かっている例については、成り立っているとは答えたんだけど。

そのほかにSimo先生のコメントで思い出すのは、ポテンシャルの一般化ですね。

数学者は一般化がお好き。

これは確立した定理である、ん?
 
 

夜、SJ。

もう日本人はいない、

なのに、なぜおまえはここに居る?という視線が痛いね。食堂のおばさんまで、

ひそひそ (・・・まだいたの?・・・あの人は別みたい・・・)、きっとそんな会話をしているんだろう。

まだ、半年あるんだぞ。



2月16日(土)
ひどく朝寝坊をしてしまった。(11時半)

実はこのところ朝寝坊が続いている。朝ご飯の時間が決められているのでかろうじて朝起きていたが

今日は、その時間さえも大幅に超越して寝てしまった。

以前はSJを出てアパートを借りることを考えていたが、今や、その考えは無い。

理由は朝食の時間が決められていることだ。朝9時15分までね。

これが無ければ、たぶん私は午後まで寝て、MAiAの皆さんとの昼食に間に合うかどうかという

時間に出勤することになろう。あるいは、それも危ういかもしれない。

時限付き朝食がSJの最大のメリットだ。
 

ところで、今日SJの中でジムを発見した。体鍛えるところね。

先日、オネェさんがタマキさんに話しているのを聞いて、あぁそうなんだ、探しにいってみよう、と

考えていたのだ。

広くは無い。汗臭い。壊れている器械もある。まぁ、でも使ってみましょう。

日頃、まったくスポーツをしない私には、こんなんで十分だ。

ちょっと触ってみる。

名前はしらないが、ベンチに腰掛けて、上からぶら下がっているハンドルを引っ張ると重りが持ち上がる、

という器械がある。

ほんの数キロでさえ、容易には持ち上がらない。情けないねぇ。実に非力だ。恥ずかしくて人に見せられたものではない。

重りは100キロまで用意されているのに。
 

そういえば昨日、帰りがけにテレサさんに健康のために歩いたほうがいいわよ、なんて忠告されてしまった。

ものすごくひ弱に見えるんだろうね。



2月17日(日)
9時起床。朝食、洗濯。洗濯機の回っている間にジムに行ってみた。

船を漕ぐようなものと自転車みたいなものを試してみた。

日頃、運動ゼロなのでとりあえず、11分+15分。でも汗が流れてくる。

洗濯の後、歩いて大学へ。ちょっと迂回コースをとる。散歩に適したコースだ。

テレサさんは(どこに滞在しているか知らないけど)、歩いて大学に出ると

途中で買い物をしたくなるので危険だと言っていた。

今日歩いた道Rambla de Catalunyaは、そんなコースでもある。

ただ、日曜日なので、バルぐらいしか開いていない。

オフィスで、論文の校正をして、メールチェックをして昼食。

久しぶりにAlt Heiderbergに行った。ここのハンバーガーはお気に入りなのだ。

食後、オフィスで再び論文の校正。

そろそろ、裏門が閉まろうと言う時刻に、退出。

再びRambla de Catalunyaを歩いて、SJに戻る。

本を読んだりしてから、今、この記録を書いているところだ。

ふと考えてみると、今日で第16週が終わる。全日程のうち約40%を消化したことになる。

早いものだ。

しかし投稿した論文は1本だけ。しかも渡航前から用意していたものだから、実質ゼロだ。

やばい。

今月末をメドに頑張ろう。

えっ、あと10日?

無理だよ。んー。のんびりしすぎたな。弱った。


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