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5:30、食堂へ行く。大きな部屋だ。きっと披露宴に使う部屋だろう。シャンデリアがあちらこちらに下がっている。
割り当てられた席に行くと、ささやかな食事である。全ての費用が18,000円だから、食事の内容は期待していないから驚かない。一般客は別の食堂があるはずだ。こんな食事では怒るに違いないから・・・。
他には”じゃっぱ汁”5種類が食べ放題となっている。全部食べてやろうと意気込む。
かみさんが、”じゃっぱ汁”を2種類持って来た。見るとお椀に普通の盛り方をしてある。
「おいおい、こんなに盛り付けたら5杯も食えないぞ!」と怒る。バイキング方式だから、持って来た物は全部食べないと失礼に当たるし、卑しく思われるのが嫌だから無理をして椀を空にする。するとお腹がかなり膨らんだ。
一番食べたいものが来ていないので、これを少し取りに行く。20年前に胃を2/3切り取った身にはきつい。案の定、腹はネズミを飲み込んだ蛇の腹のように膨らんで試合終了だ。残念!!!
食堂を出て、喫茶室へ行き”ねぶた”の前で記念撮影等をして、時間を潰す。さあ、いよいよイベント会場へ行く時間が迫ってきた。
ホテルの前から、イベント会場まで送迎バスが出る。ホテルを出ると足元はツルツル滑る。気をつけて乗り込む。
辺りはもう真っ暗だ。バスは直ぐに出発。間も無く会場に到着する。歩いても5分ほどの所だろう。バスを降りた所で持参したスパイクを装着する。既に手がかじかんでいて手間取る。
そのスパイクは、ゴムの裏に金属の鋲が付いているもので、日常での雪の日には抜群に効果を発揮する優れものだ。買っておいてよかったな〜と自分を褒めてやりたいね。
会場には大きな雪像やかまくらがあちらこちらに作られており、雪像の中には豆電球が埋められていて実に幻想的だ。
室内イベントのためのドームもあり、中には店があって暖かい食べ物や地元の名産品を食べさせるコーナーが所狭しと並んでいる。勿論休憩所もある。
正面には雪で作られたイベント用の大きな舞台があり、音響装置や出演者用の噴出し型の大きな暖房器具が準備されていて、舞台照明が本格的な舞台を照らして美しい。
7:00の開演に合わせて多くの観光客が舞台の前に集まって来た。雪は殆んど降っていない。
微風が吹いていて、寒さになれぬ者にとっては寒さがじわじわと寄せて来ている。先程からビデオとカメラを交互に撮り続けているので、右手の感覚は失せている。手袋は厄介者だが、左手だけは外せない。上手く撮れるだろうか心配だ。
いよいよイベントが始まった!
津軽三味線の音が、凍てついた空気を震わす。
若い男性奏者の撥には力強さがあって、音が耳の中で弾けるようだ。生演奏を聞いたのは初めてで、些かの興奮がある。
撥で弦を叩いているのにどうしてあんな優しい音が出せるのか?強い音と弱い音が実に綺麗に絡まる。
この頃から、雪が激しくなってきた。今の気温は−4℃で暖かい、昨夜は−10℃だったとは司会者の弁。
ビデオを持つ右手は完全に感覚を失い、靴底から痛い感覚が伝わってきた。
そうだ!オンパックがあった。思い出すと直ぐに取り出して靴に入れよう。手がかじかんで袋から取り出すのが大変。足元が暗く靴の中に入れるのも一苦労。
演奏が済むと「ハネト体験」が始まる。
「ハネト」とは、ねぶたの周りで踊る踊り手のステップの事。「ラッセー」「ラッセー」の掛け声で跳ねる。ステップを変えて「ラッセラー」「ラッセラー」「ラッセラー」と飛び跳ねる。これが中々難しい。
全員で練習した後、太鼓に合わせて踊りだす。声を出しながら「跳ねる」のは、かなりの体力が必要だ。3分ほど踊った所で小休止となる。
会場の客からは、激しい息遣いが聞こえる。お陰であれほど冷え切った体がポカポカと温かい。
ふと照明を見上げると、雪がライトの前で踊っている。デジカメに持ち替えシャッターを押す。
脇に目を移すと、雪で作った大画面に地元の四季の様子が投影されている。上手く工夫してあるな〜と感心する。
次は4人での大太鼓演奏が始まった。町中で聞く太鼓より迫力がある。氷点下の空気はよく響くのだろうか。感動ものである。
2〜3分打つと小休止。真ん中の若い奏者の息を上がらせようという演出があるらしい。リーダーが「まだまだ」と声をかけるとまた演奏が・・・。
同じ事を何度繰り返しただろうか?「もう駄目だ!」と叫ぶ声を無視してまた演奏。観客も乗せられて拍手、拍手、拍手。
もう立てないほどの疲労困憊の様子。こちらも少々心配になって来た。
太鼓の連弾は、15分も続いただろうか?
若い奏者は息も絶え絶えで、見ているこちらも苦しくなってきた。でも拍手に協力した自分たちにも一端の責任はある訳で・・・。
オンパックのお陰で足元は何となく暖かいが、右足のつま先のほうが冷たい。何か変だ。ま〜いいっか。
舞台が終わると、舞台の後ろ側に花火の打ち上げが始まるようで、全員後ろのほうへ移動させられる。
10分間の花火に期待が膨らむ。真冬の花火を見たことが無いからだ。
我が団地の夏祭りで毎年打ち上げるが、自分はその費用の高さを知っている。毎晩打ち上げる費用は一体何処から出ているのだろうか?他人事ながら気にしてしまうよ。
花火が始まった。全身に振動が伝わってくる。観客からは打ち上がる度に大きな歓声が上がる。
時折ハート型のものが上がるが、これといった特徴は無い。10分もすると大量の花火が始まり、終わりに近づいたらしい。ガイドが「フィナーレは見事ですよ」といっていた言葉を思い出した。
やがて終わると、客は一斉にドームを目掛けて歩き出した。我々ほどの温度対策はしていないだろう。
小走りに向かうが、押元が滑るので、みんなくの字になって歩いている。自分たちは滑る心配はない。
地元の人たちが大声で何やら叫んでいる。傍へ近づいて見ると両手に小箱を抱えて、共同募金を呼びかけているのだ。
来年の花火に備えての募金らしい。かみさんが、サイフから抜き出して幾らかを入れたようだ。我が家は貧乏だから、一番小さなお札だろうね。
風が出てきて寒いので、ドームへ飛び込む。大勢の人達が暖を取る為に集まって賑わっている。さあ、何か暖かいものをお腹に入れよう!
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