1999年の8月、私は高校時代の友人とスペインとポルトガルを旅することになっていた。
彼女に前の年から誘われていて、まだ学生の彼女が、大学の生協で早々と申し込み手続きをとってくれたのが4月。後は航空券を残すのみとなっていた。

私が彼とICQでチャットをし始めたときも、「夏にスペインとポルトガルに行くの」とは言っていたが、話はそれ以上膨らまなかった。
航空代金が出始めた頃、一番安かったのがKLMだった。だから、私はそれを予約した。そしてそれを彼に告げた。

「じゃ、アムスにも寄るんだよね?」

「うん、行きも帰りも寄るよ。」

「帰りにアムスに寄るのは9月の半ば?じゃ、僕のテストも終わってる。僕たち会えるよねぇ。アムスでストップオーバーしていかない?」

「そうだね。うん、そうする。じゃ、詳しい日程をメールするね。」

「うん、そうして。空港まで迎えに行くから。」

ごく自然に話がそうなった。不思議と私の気持ちのなかに何の不安もなかった。いつも石橋を叩きすぎて壊してしまうタイプの私が、どうしてだか彼との事に関しては全然不安にならなかった。

そして、スペイン・ポルトガルに旅だった。旅行中、行く先々で彼に葉書を送り、インターネットカフェを見つけてはメールを出した。そして、2週間の旅を終え、友人に冷やかされながら私はマドリッドからアムステルダムに飛び立った。
旅行中、彼女には一部始終を話したが、彼女は賛成してくれた。そして、「お土産話を待ってるね!」と笑って見送ってくれた。

マドリッドからアムスへの飛行機がなかなか出発せず、1時間以上の遅れは確実だった。私は気が気ではなかったけれど、どうすることもできず、ただイライラするだけだった。
ようやく飛行機が飛び立ったものの、私は数時間語に彼に会うなんてまだ実感がわかなかった。正直、あまり緊張もしていなかった。

やっとアムスに到着し、荷物が出てくるのを待っている間、窓越しに外を見て、これから出会う彼を何となく探してみた。たくさんの人がいるなかで、ちゃんと見つけられるだろうかと心配になっていた。

自分の荷物を受け取り、外に出たとたん誰かに呼び止められた。
彼だった。こんな出入り口近くで待っているなんて、思いもしなかったので驚いたけれど、約束のDutch kiss. 無事に出会いを果たした。

とりあえず、その日は彼がYHを予約してくれた。出来たばかりのとても綺麗なYHですっかり気に入った。その後、彼の部屋へ。
綺麗に整頓されているので驚いた。そこで、お土産を渡したり、色々話をしたりした。初めて会ったのに、初対面の同士の人がする質問は既にすんでいるので、何か変な感じがした。しかし、実際会ってみても、私の彼に対する好印象も、話しているときの居心地の良さも変わらなかった。一緒にいて、こんなに自分が自然でいられる人は今までいなかった。
お土産を一つ一つ説明していると、彼は、
「こんなに重いのをずっと運んでいたの?大変だったでしょ。ありがとう。」
といって私の頬にキスをした。

12時近くになって、そろそろYHに帰った方がいいということになって、送ってもらうことになった。真夜中のアムスは独特の雰囲気で、慣れない私には恐かった。トラムを降りてからYHまでの道、浮浪者がたくさんいて表情がこわばる私を彼が見て、「恐いの?じゃ、手を貸して」と言って私の手を取って、自分の手とつないだ。

別れ際、彼が言った。「僕の事信用できるかな?もちろん、君次第だけど、明日から僕の部屋に泊まる?それとも、もう少し時間をおいた方がいい?」
私は彼の事を十分信用していたので、もう少し時間をおく必要もないと思ったので、次の日からは彼の部屋に泊まることに決めた。