私がスキポールに着いたのは、朝の8時頃。一時間もフライトが遅れてしまった。荷物が出てくるのにも時間がかかり、やっと出口を通って外に出ると、すごい人だった。
キョロキョロしている私に、少し離れた所から彼がゆっくり歩いてきた。

「あっ・・・」

何も言わずに抱きしめられた。そして、半年ぶりのキス。空港では人目があるからキスはしないと言ってたくせに。(笑)

そして、彼のアパートへ。実は、前回オランダに来た時、彼は仮の住まいだったので、彼の本当のアパートへ行くのは今回が初めて。
着いてみると、綺麗な部屋で驚いた。キッチンは共同だけど、部屋も広いし、綺麗だし、申し分ない。
ここで、彼とずっと一緒にいられるかと思うと、嬉しくなった。

私達は、色々話した。半年間を埋め合わせるかの様に、色々話した。ただ、ただ、時間差なしでコミュニケーションが取れることが嬉しかった。
最初の一週間は、彼が全ての予定をキャンセルしてくれたため、私は1日中彼と一緒にいることができた。
朝起きたら、隣に彼がいる。夜寝るときも、隣に彼がいる。私はしみじみ自分の幸せを実感していた。

彼とまがりなりにも一緒に生活を始めてみると、色々見えてくることがあった。それはお互い様だったと思う。お互いの性格はどのように「生活」に作用するのか、遠距離時代には全然考えてもみなかったことだ。
例えば、家事分担。始めは何でも一緒に・・・と思っていたが、そのうち得手不得手がはっきりしてきた。だから、料理は私が引き受け、後かたづけは一緒にしようと決めた。けれど、食べたらすぐに食器を片づけたい私と、ゆっくりしてから片づけたい彼とでは、時々喧嘩になった。そして、そのうち双方が妥協することで同意した。それは、私がすぐに食器を洗い、彼がその後かたづけを寝るまでにする・・・。そういった妥協策が、私達の間で色々生まれてきた。私は、どちらかがどちらかに合わせるということでなく、歩み寄るということを自然に学んだ。

生活することが、観光と違った点は、平凡極まりないつまらない日もあるということ。私の学校が始まってからは、私もそれなりに忙しくなったが、たまに休みが続いたりすると、暇になる。そういうときの過ごし方というのは、いまだ持って私の課題であるけれど、彼は学生だったため比較的自由がきき、できるだけ私に合わせてくれた。それに随分と救われていたと思う。

そのうち、私も一人で自転車に乗って色々出歩けるようになり、買い物も一人で出来るようになり・・・と当たり前の事が少しずつできるようになった。

もちろん、彼のママのこと、度重なる引っ越し等、色々問題はあった。「オランダに住んだ」と言うには短すぎる期間だったけれど、彼と一緒に生活したというのは、私達には大きな収穫だった。

遠距離恋愛中の彼を久々に訪ねるドキドキした気分はなかったが、それには変えられない安心感がそこにはあった。

何でもない生活を、最愛の人と重ねていくことは、平凡極まりないけれど、私が一番欲しかったものだった。