私のオランダ滞在中、私達は傍目にはカップル同然に映っていたと思う。しかし、二人の間につきあおうといった話が出たわけではなかった。確実に友達以上だったけれども、彼のことをボーイフレンドと呼ぶには何かが確実に足りなかった。
実際、彼は私の事を大好きだと一日に何度も言った。けど、「つき合って」とは言われなかった。私は、彼が何かを避けているように思えて、私もあえてその話には触れなかった。もちろん、色々考えた。お互いにお互いの事が好きなのは明らかだけど、つき合うとなると話は別なのだろうか・・・とか。もちろん、私からも「つき合って」と言えたわけだけれど、「好きだ」という愛情表現は彼の方が強くて、それなのに何故?と思う気持ちが私の中にあったから、あえて様子を見てしまったのかもしれない。
しかし、私の帰国があと2日に迫った時、このままの状態は、曖昧すぎて良くないのではないかと思った私は、彼に私達の事をどう思っているか聞いてみた。
明らかに彼の様子が変だった。奥歯にものが挟まったような返事をする。「僕が日本に行くまで、その話はしたくない。」とか「今のままの状態で・・・」とか。私には、「今のままの状態」というのが、彼にとって何を意味するのかさっぱり分からなかった。
彼の反応にがっかりした私は、「分かった。じゃ、今のまま、いい友達でいよう。」とだけ言った。すると彼は、いい友達と言っても私にボーイフレンドが出来るのは絶対に嫌だと言う。そんな都合の良い話、約束なんかできないと言うと、暫く考え込んだあと、ようやく本心を語ってくれた。
彼は、前の彼女(日本人)と遠距離恋愛の末別れた。ある日突然、何の前触れもなく手紙が途切れて、電話をしてみたら「他に好きな人がいる」と一方的に別れを告げられたという。その経験があるから、遠距離恋愛にも自信がないし、自分自身にも自信がないそうだ。私を絶対に失いたくないから、私にボーイフレンドができるのは嫌だし、でも遠距離恋愛にもしたくないという、変な提案をした、と。
何とも変わった提案に、少々呆れ気味だった私は、そんな変な提案に賛成はできないけど、私は彼の良いところをたくさん知ってるし、一緒にいるとすごく居心地がいいと言った。つき合うなんていうのは、結局、相性だから一つの嫌な思い出で、自分自身を卑下するのは馬鹿らしいし、何にも悪いことしてないんだから、自信を持ってればいいと話した。そして暫く、「つき合う」と言うことに対しての二人の考えについて話し合った。
話し終わって、「おやすみ」と言って彼に背を向けて眠り始めると、彼はトイレにこもったっきり暫く出てこなかった。私はこのまま二人はいい友達でいるんだろうな・・・と思いつつ、すっかり眠りについていた。
ふと何か隣に気配を感じて目を覚ますと、彼がいた。「何?」と言うと、「今、トイレで考えてた事を話したい」と言う。「考え事をするときは、トイレに行くんだけど、さっきもそうだった。二人の事を考えてた。君と会ってから、毎日がすごく楽しくて、一緒にいると嬉しくて、ずーっとこういうのが続けばいいのにって思ってた。遠距離恋愛に自信がなくて、ずっと二度と遠距離恋愛はしたくないって思ってた。でも、君を失いたくなくて、自分の態度をはっきりさせなかった。都合がいいのも分かってたけど、自分に自信がなくてどうしていいのか分からなかった。
でも、君の話を聞いて、二人がちゃんと愛し合ってれば大丈夫って思えるようになった。君となら大丈夫だって思えるし、何より君を失いたくない。
君が僕にがっかりしてるのは分かってる。今更こんなことを言うなんて、虫がいいのも分かってる。がっかりさせた分は、これから埋め合わせ出来るように頑張るから。一生懸命努力するから、僕の事信じてくれる?
僕のガールフレンドになってくれる?」あれだけがっかりしてたくせに、「ガールフレンドになってくれる?」と言われると嬉しかった私。
私が少し話をすると、何年もの間「遠距離恋愛はしない」と決めていたくせに、考えを変えた彼。一体、どっちが単純なんだろうか・・・。
ただ言えるのは、二人ともつき合い始めたのを後悔していないこと。遠距離恋愛も大変だけど、彼は今となっては「遠距離恋愛だったから別れたってのは、理由にならない。お互いに the right one じゃなかっただけ」の考えの持ち主だ。
つくづく、出会いもつき合い方も変わっている私達。で、結局、
「出会うときは出会う」
「つき合うときはつき合う」
「続くときは続く」
これが私の持論。