地中海を肌で感じたのは初めてだった。今まで見てきた海とは一味違う、濃いブルーだが透明度が高く、穏やかで静かな海だ。それに水平線がぼやけて空と一体化している。「地中海を見てから死ね」(ナポリの人ごめんなさい)といっても過言ではないほどの美しさなのである。最初に25日間イタリアの南に位置するマルタ共和国を訪れた。ここには世界遺産に登録されている蜂蜜色の首都ヴァレッタ以外にも美しい見所はたくさんあったが、ページ上の都合で省略させて頂く。

チュニジア共和国…マルタより欧州寄りに位置するわりには、国の雰囲気がガラっとイスラム風に変わる。看板はアラビア語・フランス語オンリー!幸い第二外国語でフランス語を履修しているのでカタコトでどうにかなった。空港、街中、カフェ、すべて男だらけ。アフリカの先進国とはいっても、女性の社会進出はまだまだ先のようだ。それに彼らはよく日本のサッカー選手を知っていた。何回歩きざまにナカータ、スズーキ、イナモトと叫ばれたことか。よっぽど珍しいのか、3回以上振り向いた者もいた。このように私は珍獣が来たかのように扱われた。

 チュニジアの人々はマルタ人と比べて温厚でアグレッシブ(男)だ。親日家が多く、すぐに声を掛けてくる。中でも英語がある程度できる上流社会の者がよく声を掛けてきた。君は美しい・・・愛してるよ☆などと囁いて来る気持ちの悪いホテルの従業員もいたが、日本語に興味のある博物館員など下心なく接して来る者も少なくなかった。

 夜九時頃マルタ発エアマルタに乗り、十時に首都チュニスに到着。そこから空港で紹介してくれたホテルに電話をして空室チェック。空いているというのでそこに泊まった。(かなり無謀なことをしていた)一泊2000円でかなり清潔で広々とした部屋だった。また、ここの朝食のクロワッサンは、何故かパリで食べたものよりおいしかった。

次の日、しつこく寄ってくる悪質ガイドを振り切りながらメディナ(旧市街)へ。ここは庶民的なスーク(市場)があり、値段交渉するのが楽しい場所である。ここで香水を1500円から200円に下げたが、怪しかったので結局買わなかった。なんて無礼な観光客だ!と思われたに違いない。

その後、ハンニバルで有名なカルタゴ遺跡へ。チュニスからTGMという郊外線で所要20分。電車に乗り込むときも宇宙人が来たかのように見られ、ただでさえバカでかい瞳を真ん丸にしてくるものだからかなり怖い。カルタゴ遺跡は駅からすぐの所にあり、見る価値はある。その時、暇そうにしていたジョン・トラボルタ似のチュニジア人大学生2人組(男)が寄ってきた。彼らは20歳で、経済学を専攻しているのだそうだ。初対面でいきなり結婚しているのかと尋ねられ、その上今夜うちでクスクスを食べにこないか、と誘ってくるではないか。もちろん丁寧にお断りをして、遺跡の中へ。カルタゴ遺跡ではローマ人の住居が必見!遺跡とは思えないほどの保存状態で、今にもタイムスリップしそうだ。そしてカルタゴ博物館には出土された貴重な遺物がたくさん展示されていた。そしてここの博物館員はいろんな日本語を知っていた。骨、服、指、骸骨・・・。すべて博物館にまつわる語である。彼は日本語が大好きで、独学で勉強しているのだという。しばらくアラビア語を教えてもらい、彼に日本語を教えてあげた。

そこからTGMでシディブサイドへ。ここは鮮明なチュニジアンブルーと美しい白で統一されている街である。これは私の一番好きな色の組み合わせで、見ているだけでもウットリ☆帰りの電車でアルジェリアから来ているという男と出会った。彼は英語がペラペラで、コミュニケーションに障害はなかったが、目的はただ一つ。これもまた丁重にお断りをした。 その夜、旧市街で宿を探した。幸い空室のある安宿発見!一泊450円窓付き。夜中になると外からアラビア語の怪しい歌声が聞こえてきたり、廊下では茣蓙を敷いて唯一神アッラーに祈りを捧げている老人がいたり、かなり興味深い光景であった。だが部屋と共同トイレは想像を絶するほど汚かった。部屋はまだいいが、トイレなんて一体どうやって汚したんだ?というくらい汚くて、カフェのトイレを借りることにした。しまいには帰りの支払いのときに、シャワー代100円程度を請求してくるではないか。大した額じゃないが、泊まるときにそんなこと一言も聞いてなかったので余計に腹が立った。

翌日チュニス鉄道駅でスースまでの切符を購入。2等で所要2時間。座り心地の悪い席で前日大量に買ったクロワッサンを頂く。だが、周りを見回してみると昼食時だっていうのに誰も飲み食いしていない。車内に何も書かれていないので飲食禁止ってわけでもなさそうだ。チュニジアで公共の場所での飲食はタブーなのであろうか。

しばらくすると乾いた荒野が広がった。さすがサハラ砂漠の入り口!周りには見たこともないような植物が生えている。時々オリーブ畑も見えたりして、かなり地中海チックな光景であった。その景色に見とれていると、隣のおばさんが車掌と口論し始めた。アラビア語だから何がなんだかわからない。しばらくして諦めたのか、車掌はふてくされた顔で去っていってしまった。おばさんがキセルでもしたのだろうか。それにしてもどこの国でもおばさんは強し。

約2時間でスースに到着。駅を出るとまず宿を探した。この町はチュニスと比べてリゾート色が濃い。道は広々としていて、海はご存知の通りチュニジアンブルー。でもチュニスより南にあるので日差しが強く、バカみたいに暑かった。ハドルミテという宿で部屋を見せてもらい、気に入ったのでそこに泊まることにした。

しばらくスースの旧市街を散策して土産物を買おうとしたが、西欧人用プライスというのだろうか、あまり日本と変わらない。値下げ交渉してもだめだったので結局断念。ここで日本人の彼女が東京にいるという怪しい若者が寄ってきた。彼女の名前はユキコちゃんと言うのだそう。本当なのだろうか。その後しつこい彼を振り切り民族博物館へ。そこで昔のチュニジアンライフを見学。そして北アフリカ名物クスクスを食べにクスクス専門店へ。魚が恋しかったので白身魚のクスクスとチュニジアンサラダを注文。クスクスとはパスタを粟粒状にしたもので、その上にトマトシチューらしきものをかける。すごくマイルドで日本人の口に合う料理である。チュニジアンサラダはトマト、キュウリ、タマネギ、ピーマンをみじん切りにし、サイドにちぎったレタスとゆで卵を置き、上にツナとオリーブをのせたものである。チュニジア産オリーブオイルをかけるので、さっぱりとしていて見た目も味もいい。また家庭で簡単にできるのもいい。

その夜、空からこぼれ落ちるるほどの星を見ることができた。相変わらず外で怪しい音楽が流れているが、真夜中になるとそれも止まり、静けさが漂う。まさに千夜一夜物語の世界☆しばらく星を眺めていると、一瞬青い星が左上から右下方向に流れた。私は日本で獅子座流星群を見ていなかったので、これが初めての流れ星体験☆しかも夢のチュニジアで見られるなんて感無量である。

次の日、Hammametへ行くためにチュニス方面の電車に乗った。スースとの別れを惜しみ、よほど疲れていたのか、鞄を抱えながら電車の中で眠りこけてしまった。気が付いたらHammameという文字が見えたので急いで降りた。すると何か街の雰囲気が違う。おかしいな、と駅員に尋ねると、ここはチュニスの近郊"Hammame Let"という街だった!ここからチュニスまで普通電車で20分程だというので、チュニスに戻ることにした。これだから旅は何が起こるかわからない。

普通電車は相変わらず中が暗い。日差しが強いからか知らないが、チュニジアの普通電車には電気が付いてないのだ。30分程してチュニス鉄道駅に到着。ヨレヨレになりながら宿探し。と、駅の近くにトランスアトランティークという安宿を発見。案の定一泊1800円!ロビーのアラベスク調のタイルが美しかったが、部屋はスースの宿より汚かった。

その夜またクスクスを食べに出た。今度はチュニスで有名なカルカッソンヌという食堂で頂く事にした。今回は野菜のクスクスを注文。バカでかい人参、じゃがいも、ピーマンが下のクスクスが見えないくらいたっぷり。後はひよこ豆と小さな牛肉が乗っかっていた。チュニスのクスクスのほうが値段が安く、味に深みがっておいしかった。

食事の後、スーパーへ土産物のお菓子を買いに行こうとしたら、数人の若い男が付けてきた。怖くなり、途中で免税店に入った。ここならチュニジアの庶民なら入ってこられないだろう・・・と思いきや、彼らは外でずっと待っている。しょうがなく裏の出口から宿へ戻ることにした。彼らのせいでチュニジアのお菓子は断念せざるを得なくなった。

宿に戻り、最後の夜にあんな思いをするのが悔しくてしょうがなかった。しばらく部屋に戻る気もせず、ずっと宿のぼろいソファで煙草を吸っていた。すると従業員が隣でピタパンらしき夕食を食べ始めた。ちらちら見ていると、これがチュニジアのサンドイッチだ!と、ほんの少し分けてくれたではないか。凹んでいるときの優しさは普段より感動が大きい。それはチュニジアで食べたパンの中で一番おいしく感じられた。

翌日、朝一番でチュニス国際空港へ。もっと日数があれば南部まで行って砂漠ツアーができたが、今回はこれでおあずけ。チュニジアは私が今まで訪れた国の中で一番親切で美しかった。それにアジア人がほとんど来ないせいか、ものすごく歓迎してくれた。欧米人はイスラム文化圏をあまりよく思わない傾向があるが、チュニジアは違うと思う。(他の国はどうだかわからないが)本当に行って良かった!と心底思えるのだ。新宿に日本唯一のチュニジア料理店があるというので、実家に帰ったら訪れてみようと思う。また行くわよ!Vive la Tunisie☆

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