焦がれた膝を抱えながら
1:焦がれた想いを抱きながら
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無意識の底に追いやられていた「海外旅行」がちらちらと姿を現すようになったのは、そんな頃だったと思う。年が明けると学内では、「卒業旅行」の相談をしている人達が見かけられたが、私は端から誰かと卒業旅行に行こうとは考えていなかった。
思うと、初めて一人旅をしたのは大学3年の頃だった。北海道の美瑛まで行く、青春18きっぷを使った各駅停車の旅。
函館から札幌へ向かうミッドナイトの車中で寝袋に包まりながら、暗い闇に落ちていくような気持ちの悪い孤独を感じた事。室蘭の駅で楽しそうにお喋りをする女子高生を見ているうちに、訳の分からない激しい疎外感に襲われた事。
膨大な量の自分と向き合う時間、私はそれに正直恐怖した。日常自分がいかに多くの人間に囲まれて暮らしているかという事を思い知らされた。美瑛の宿で「標茶に鮭の卵取りのバイトに行くんだ。」と話をしていたフリーター。一人は寂しい。だけど、一人だから出会える人もいる・・・。
ホテルの社員にいくら怒鳴られても、授業を3時間受けた後6時間もの労働に向かう時、あまりの疲れにいくら逃げ出したくなっても、「旅立つんだ」と、そう思うだけで胸がはち切れんばかりになった。
この感覚だ。体は旅に出たがっている。旅の事を考えるだけで興奮していくのが何よりの証拠だ。そう考えると、重いテーブルを運ぶ手にも力が漲ってきた。
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