焦がれた膝を抱えながら
1:焦がれた想いを抱きながら



結局、ニュージーランドかオーストラリアなら治安も良いらしいし、英語圏だから困る事も少ないかもしれない、という考えに至った。

 航空券の値段を調べてもらうと、オーストラリアのケアンズという所が安くて近いとの事である。じゃあ、そこにしよう。あっさり決断すると、その航空券を予約した。
 
 ついでなので、担当の武田さんに、「オーストラリアは治安良いからトラブルとかはないですよね」と付け足しのように聞いてみた。すると、彼は「多分大丈夫なんじゃないかと思います」と言った。口調が暗に『私、行った事ないから分からないですけど』と言っている。

…聞くんじゃなかった、何の慰みにもなりゃしない。

 出発の朝まで私の精神状態はひどいものだった。ガイドブックを開いても、トラブルの欄にしか目が行かない。

「ああ、こんな事されるのか。あんな事もされてしまうんじゃないか」
で、不安が増幅していく。何かしてないと気が紛れない。ガイドブックに手が伸びる。で、トラブルの欄を…悪循環だ。
 
 正直、前日などは、セットした目覚ましが何らかの理由で動かなくならないだろうか、と本気で思ったりした。いくら行きたくないとはいえ、途中で辞めるのはどうもカッコ悪い。
 で、だ。目覚ましをセットしたけれど、鳴らなくてねぇ。ホントは行きたかったけれど、不可抗力でしょうがなかったんだよ。そんな事にしておけば、世間にも申し訳が立つ気がする。
 
 当日。 予想に反して目覚ましは定刻通り鳴り出した。良く眠れなかったせいだろうか、頭がジンジンする。あぁ、この日が来てしまった。起きてしまったんだ。

 とにかく、もう後戻りはできない。