<言語学−6.意味論

(1)意味論の対象:パラフレーズ関係を明らかにする。

パラフレーズ関係

言い換え関係 →辞書の編纂

統合関係(共起関係)

シンタグマティック

横の関係。語の順それぞれの形式が互いに一定の関係を保っている

範列関係

パラディグマティック

縦の関係。一定の位置で他の形式に置き換えが可能な関係

 

(2)成分分析:単語の素性=特徴を分析する

  ・語相互の類似点と相違点を簡単に提示できる。

  ・ある言語体系の中で、単語の意味をとらえることができる。

  ・同義反復の文(例「私の母は女です」)の矛盾を簡単に説明することができる。

絶対的成分

分類学的成分:男−女、成体−非成体

相対的成分

他と比較することで表す:〜の親など

余剰成分

他に補われることができる成分

 ※成分分析の限界

・素性の立て方が非常に困難

・弁別的特徴だけが意味のすべてではない→百科事典的(含蓄的)意味が必要→認知言語学へ

 

(3)語と語の意味関係

 ・語の多面的特徴:意味、形態的特徴、文体的特徴、表記、基本度(基本的な意味)

 A.同義関係

 B.上下関係(包摂関係):上位語と下位語

  (サピア・ウォーフの仮説(例:女教師、女医、オールドミス)

   上位語に対して下位語にすき間があるケースには、文化的、社会的背景が影響する)

 C.類義関係

文体差もなく語義がかなり近い

しみじみ/つくづく、準備/用意

中立的/好ましくない

長い/長たらしい、古い/古くさい

文体or位相の面での違い

あした/みょうにち、盲腸/虫垂炎

待遇の違い

いる/いらっしゃる、言う/ぬかす

 D.対立関係

 E.反義関係

俳反関係

一方が肯定されることにより、他方が自然と否定される関係(中間がない)

男/女、当たり/はずれ、夫/妻

対極的反意関係

物事の対極に位置する部分に名付けられた二語の関係(中間はあってもよい)

<名詞>満点/0点、頂上/ふもと、入学/卒業

連続的反意関係

連続的な尺度において、上位部分と下位部分を表す二語の関係

<形容詞、形容動詞>大きい/小さい、深い/浅い、重い/軽い

☆中立的用法(中和):大きさ、深さ、重さ

逆意関係

同一のことを逆の視点から裏返しに見た関係

売った/買った、貸す/借りる、表/裏

(4)多義語の分析:一つの音形に関連のある複数の意味が対応している語

 ※多義語と同音異義語の違い:関連性があるかないか、同音異義語はアクセントも同じ

<分析方法>

 @複数の意味を確認する:関連語(反義や類義)

 Aプロトタイプ(基本)的意味の認定(=最初の意味):制約が少ないもの

 B複数の意味の相互関係の明示:スキーマ的意味(共通する部分)

  →意味の拡張・派生の種類によって使われた比喩の種類が違う

 

☆類義語分析の意義

 ・意味の近い語同士を比較することで、単独ではわからないような各語の特徴を抽出することができる。

 →基本的な分析:一方のみが使える文に基づき、なぜ一方は使えて他方はダメなのかを考える。

 例:興味と関心、言うと話す、やっと・ようやく・ついに・とうとう(プリント)

 

(5)比喩(レイコフ):語の本来の意味とは異なる意味に用いること(語数を増やさない工夫?)

メタファー(隠喩)

<類似性>

二つの事物または概念の類似性(外見、性質)に基づいて、一方の形式で表す

(外見)職場の花、猫背、ブタ、目玉焼き、月見うどん、ビンの首、

(性質)組織の心臓部、語学力を武器にする、罠にはまる

・ところによってはにわか雨(空間的範囲)/このところいい天気が続く

(時間的範囲)※意味の拡張は空間から時間へ(逆はない)

☆表す語の元のイメージも残る

シネクドキー(提喩)

<上下関係>

より一般的な意味を持つ形式を用いて、より特殊な意味を表す

(上位→下位)<婉曲表現>花見、卵、不幸、おめでた

(下位→上位)お茶飲まない?、飛んできた

メトノミー(換喩)

<隣接性、関連性>

二つの事物の外界における隣接性や、関連性に基づいて、一方の形式で表す

(容器と中味)鉢をもらった、鍋を食べる、スタンドがわく

(部分と全体)手が足りない、扇風機が回る、眼鏡がくもる

(時間的隣接)お手洗い、化粧室、教壇を降りる

(関連性)作者名で著書を表すなど、漱石を読む、モーツァルトを聞く

 ・イメージスキーマの変換:比喩を用いて量詞や助数詞などを決め、語を増やさない工夫。

 

(6)句の意味

 ・句:語よりも大きく文よりも小さい単位

普通の句(仮称)

字義どおりの意味をつなぎ合わせたら句の意味になるもの句

連語(選択制限)

(意味の面から見て結びついても良さそうな語とは結びつかない)

ある程度、語同士の結びつきが固定化してしまっている句(順番を変えられる)

例:かぜをひく、約束をやぶる、たんかをきる、愚痴をこぼす、怒りをかう

慣用句

字義どおりの意味をつなぎ合わせても句の意味にならない

完全に、語同士の結びつきが固定化してしまっている句(順番も変えられない)

例:道草を食う、油を売る、足を洗う(※字義どおりの意味もある)

 ☆慣用句的な意味は比喩によって作られている。

 

(7)文法化(grammaticalization)

 ・名詞などの内容語が、接続助詞や助動詞などの機能語としての働きをする現象(拡張の一種)

名詞→助動詞、接続助詞:もの、あげく、ところ、ことだ、わけだ

動詞→接続詞:つまり、したがって