<応用・社会言語学−4.バイリンガリズム>

(1)種類

  ・モノリンガル:一言語のみを使用する

  ・セミリンガル:二つの言語を年令相応に使いこなすことができない

  ・バイリンガル:二つの言語を年令相応に使いこなすことができる

  ・マルチリンガル:三つ以上の言語を年令相応に使いこなすことができる

A.均衡バイリンガル/偏重バイリンガル

   均衡:いろいろな場面で二つの言語をほぼ同じバランスで流暢に使用できる

      (理想的であるがほとんど存在しないと言われている)

   偏重:二つの言語の能力に差があり、どちらか一方が優勢である

B.連続バイリンガリズム/同時バイリンガリズム

   連続:子供が家庭でL1を習得し、その後違った環境でL2を習得する

   同時:子供が早い時期に同時に二つの言語を習得する(国際結婚などで起こる)

C.付加的バイリンガリズム/消滅的バイリンガリズム

  付加的:L2の習得がある程度完了してもL1の言語やその文化が損なわれずに付加されるという考え方

  消滅的:L2の習得によってL1の言語やその文化が損なわれるという考え方

 

(2)カミンズ「均衡理論」

 A.分離基底言語能力モデル

   人の言語能力には限られた容量しかないので、二つの言語が与えられた場合、一方が優勢になれば他方が劣勢になる

 B.共有基底言語能力モデル

   基本的な部分(基底)は複数言語間で共有している

 C.敷居理論

   言語の発達を三階建ての家に見立てた理論

一階:(限定的なバイリンガル)

このレベルの子供は両言語において能力が低く、認知的にはマイナスの影響が与えられる。

   二階:(弱い均衡バイリンガル)このレベルの子供は片方の言語では年令相当の能力を持つが両方ではない。認知的な影響はプラスでもマイナスでもない。

三階:(均衡バイリンガル)

  このレベルの子供は両言語において年令相当の能力を発揮し、認知的な優位さを持つ。

  (ここで習得することがプラスになる。上限:12〜3歳:臨界期)

 D.発達相互依存仮説

   敷居理論を元に、「子供のL2における能力はすでにL1で獲得した言語能力に依存している。

   L1が発達しているほど、L2も発達しやすくなる。」という理論。

 

(3)バイリンガル教育

 A.BICSとCALP

 バイリンガル教育においてカミンズが提唱した説であり、この2つは違う能力である。

 認知負担(深く考えるかどうか)の大小と、コンテクスト(言語使用場面にどの程度依存するか)の高低

 による座標で紹介されている

BICS

Basic Interpersonal Communicative Skills):伝達言語能力

認知負担:小、高コンテクスト・コミュニケーション

日常会話のための言語能力(場面や状況に大きく助けられる)

CALP

Cognitive Academic Language Proficiency):学力言語能力

認知負担:大、低コンテクスト・コミュニケーション

教育を受けるための言語能力(授業中に使われる言葉などが理解できるかどうか)

 

 B.形態

 ・イマージョンプログラム:一つの言語話者に第二言語を用いて教科を教える、バイリンガル教育の一形態

  ()カナダのフランス語と英語の教育の成果

  (a)開始年令による分類

   ・早期イマージョン:幼稚園や小学校低学年で開始する場合

   ・中期イマージョン:9〜10歳くらいで開始する場合

   ・後期イマージョン:中等教育段階で開始する場合

  (b)授業時間の量による分類

   ・全面的イマージョン:最初は100%L2で授業、以降減少させる

   ・部分的イマージョン:最初からL2と母語を50%ずつ使用する

 ・サブマージョン:大多数の生徒にとっては母語であるが、少数にとって第二言語となる授業

 ・双方向バイリンガル教育(相互学習)

   二つの言語の生徒がクラスの半々である場合などで、教室内で両方の言語が説明や学習に用いられる。この場合は四技能をバランスよく伸ばすことを目標として設定する。

 

 C.年少者への日本語教育

  年少者:外国人児童生徒:ベトナム・カンボジア難民の子供、中国帰国者の子供、南米の就労者の子供

  (愛知・神奈川・静岡・東京:多い、「浜松宣言」教育権を考える宣言)

 (a)問題点

  ・教師の人手・能力・認識不足

  ・編入・転入の時期が一定しないため指導体制が組みにくい

 (b)授業形態

  ・取り出し授業:外国人のみ取り出して別のクラスで教育する

   −センター校方式:各学校から外国人のみ取り出し、中央の学校に集めて一緒に教育する

  ・入れ込み授業:生徒のそばに翻訳や解説をする先任者を置く

 

D.異文化適応

(a)適応過程のU/Wカーブ:異文化に接した人(子供)の心の動き

初期ショック→ハネムーン期→移行期ショック→安定→[帰国]

→再適応過程(リカルチュレーション)<危機(リエントリークライシス)

 (b)異文化適応トレーニング

  ・喪失感体験シミュレーション

  ・異文化適応体験ゲーム:バーンガ(教授法P.86)、バファバファ、エコノトス

  ・自己学習(カルチャー・アシミュレーター)

    クリティカルインシデント(危機的状況:異文化接触によって起こった摩擦の実例や作文)を読む

  ※共通する注意点:教師は講義や解釈・アドバイスを発してはいけない

    ファシリテーター(進行役)、コーディネーター、アドヴォゲーター(代弁)に徹すること