独断場 

 

従来の地下鉄駅とはあまりに大きくかけ離れている。まず構内が非常に明るい。また各部のデザインは小物の細部に渡るまで創意工夫がなされている。それはホームやそれに連なるコリドーで顕著である。

私が特に驚いたのが、階段・エスカレータ部分の“ウェブフレーム”に同調するようにコンコース天井の蛍光灯が配置されていることである。ここまでやるか、と思った。

尚、この駅の設計者である 『渡辺 誠』(わたなべ せい)氏のホームページには設計に関する解説が掲示されているが、とても私の気づかないところまで、重要なコンセプトや細かい配慮がなされていたことに気づかされる。特に、「駅は都市の魅力を高める文化資産である」「都市の情報開示」(ここでは駅などの構造を利用者にも見えるように造ること)等という言葉には共感を覚える。

ユニークな点は地下部分にとどまらない。換気塔には植物の構造をモデルにした巨大なオブジェをデザインしている。これは【地下鉄=都市構造の中の生態系→地上部分としての換気塔=表層する植物】という発想から生まれたものである。「植物の構造」も、そのすがた形自体ではなくその合理性に着目したが故採用されたデザインだという。ただ、その姿から“アール=ヌーボー”様式でデザインされたパリ・メトロの出入り口を思い浮かべるのは私だけか? 

では、この駅が良いところばかりかといえばそうではない。むしろ現代の駅としては致命的(と敢えて明言する)欠陥が存在する。それは二つあるコンコースのうち一方の、それも他の路線との乗換え口になっていて、相当数の利用者が予想されるはずのコンコースにエレベータが設置されていない、ということだ。双方のコンコースは地下自由通路で連結されていないから、どうしてもエレベータを利用したいならば地上の道路を、しかも途中で歩道橋を上り下りまでしていかなければならない(コンコースに通じる地上口にはそのための案内図を掲げているが、もはや嫌味でしかない)。

渡辺氏もその点はよく判っていて、氏が構内設計に携わる段階でトンネルなど土木設計が終了していてエレベータの数と設置場所が既に決まっており、やむを得なかったという。もちろん、土木設計を担当した人もわざわざ利用者に不便な構造を目指していたわけではないだろうが。

この点から、渡辺氏は施工者と設計者とは土木部分の基本設計から協調すべきだと説く。

駅(だけに限らないのだろうが)の設計には私たちの予想以上のハードルや非合理が数多く存在することを教えてくれる。

 

                   [ 飯田橋駅(東京都交通局) ]     [Station List]