■T-BOLAN、その活動の終焉
T-BOLANが99年12月をもって解散することが決まった。その最後の作品としてベストアルバムと初のビデオがリリースされる。その2作品には、9年間のT-BOLANの活動の軌跡が封じ込められている。
作品の説明に入る前に、まずは彼らの略歴を紹介しておこう。
T-BOLANは91年7月にシングル「悲しみが痛いよ」でデビュー。現在までに16枚のシングルと10枚のアルバムをリリースし、その中には「離したくはない」「じれったい愛」「Bye For Now」「LOVE」「マリア」など数多くのミリオン・ヒットを記録、活動最盛期の92年〜94年には一世をふうびした超人気ロックバンドだった。メンバーは森友嵐士(Vo)、青木和義(Ds)、五味孝氏(G)、上野博文(B)の4人。解散までにメンバーチェンジはなく、最新作は今年1月23日にリリースされた初のリミックスアルバム『T-BOLAN 1999 REMIXES』。しかし、95年以降活動が鈍化し、ライブは95年3月26日以来停止、96年以降は本人達が一切登場しなくなったため、いつしか、”幻のバンド”的な存在に。時折、新曲レコーディングの噂が漏れ聞こえはしていたのだが、実質的なオリジナル作品としては96年3月にリリースしたシングル「Be Myself/Heart of Gold 1996」が最後だ。そして、今年に入ってからリミックスアルバムのリリースがあり、「再始動か!?」と期待されたが、12月に解散を表明、9年間の活動に終止符を打った。
と、彼らのストーリーをざっと紹介するとこんな感じになるだろうか。彼らのヒット曲の数々を聴いたことがある人は数多いだろう。そして、現在第一線で活躍している20代前半のJロックバンドにも少なからず影響を与えているだろうし、90年代のJロックシーンに於いて忘れてはならないバンド、それがT-BOLANなのだ。
そして、ジェイロックマガジンにとっても、T-BOLANは忘れ難いバンドである。実は、何を隠そう、本誌95年6月創刊号の表紙はT-BOLANであり、彼らがライブ活動を停止した94年3月26日大阪厚生年金会館のライブをレポートし、その後そのライブの是非について論争が起こったとき、ボーカルの森友嵐士の独占インタビューを行ったりと少なからず彼らを追いかけてきた経緯がある。
そんな彼らが、最後に『T-BOLAN FINAL BEST GREATEST SONGS & MORE』というベストアルバムと『T-BOLAN FINAL BEST LIVE HEAVEN LIVE & CLIPS』というビデオをリリースする。その2つのアイテムを紹介することにより、本誌は彼らへのレクイエムを捧げたい。
■『T-BOLAN FINAL BEST GREATEST SONGS & MORE』
T-BOLANは現在までにベストアルバムと銘打った作品はリリースしていないが、ベストアルバム的な作品として『SINGLES』(96年6月発売)と、ベストバラード集『BALLADS』(97年1月発売)をリリースしており、今回のこのベストアルバムとも、実際、曲は重複している。しかし、ひとたびこのベストアルバムを聴いてみると、次々と新しい発見があるのに驚かされるはずだ。以下、アルバム収録曲を紹介すると、「刹那さを消せやしない」「Bye For Now」「マリア」「LOVE」「じれったい愛」「離したくはない」「悲しみが痛いよ」「Hold On My Beat」「サヨナラから始めよう」「びしょ濡れの優しさの中」「すれ違いの純情」「泥だらけのエピローグ〜Acoustic Version〜」「Heart of Stone」「No.1 GIRL」「Be Myself」「Smile」「Heart of Gold(Live at LOOZ)」の全17曲が収録が収録されており、その内10曲のシングルヒット曲と2曲のアルバム初収録シングル曲(「No.1 GIRL」「Be Myself」)、初のライブ音源1曲(「Heart of Gold(Live at LOOZ)」)、そして未発表曲1曲(「Smile」)収録といった内容になっていて、これ1曲でT-BOLANの魅力を凝縮した形になっている。
まず、一聴して驚かされるのは音源が少しも色あせていないということだ。シングル曲は最新でも96年度リリースの作品であり、少なくとも過去3年以上が経過しているにもかかわらず、そのサウンド、曲、詩、歌、演奏、アレンジ、どれをとっても古さを感じさせない。というよりもむしろ耳新しく聞こえるほどなのだ。きっとT-BOLANを知らない若者層に新人バンドの新曲だといったら飛びつくだろう。今をときめくGLAYの楽曲もかくやと思わせるほどのインパクトがある。それが、森友嵐士が作り出してきた普遍的な歌詞とメロディーの底力だ。これが誇張ではないことは、とにかく一度聴いてみることをおすすめする。そして、このアルバムのもう一つの魅力が、未発表曲「Smile」。このミディアムバラードは、まったくの新曲であり、沈黙を続けていた彼らが、試行錯誤しながらも再始動するためのレコーディングを続けていたことを示唆している。そして、もう1曲、最後に収録されているT-BOLAN初のライブ音源「Heart of Gold(Live at LOOZ)」は、ライブツアー『Tour V LIVE HEAVEN’93〜’94「LOOZ」』からのものだが、冒頭の森友の「また、会おうな」というひと言から、T-BOLANを知るファンにとってはたまらない寂寥感を感じさせるナンバーだ。間奏のオーディエンスに歌わせている部分も泣ける。この1曲だけは、T-BOLANが最後にT-BOLANファンのために贈ったスペシャルボーナストラックだと思いたい。しかし、全体的な構成としては決して懐古的な記念アルバムというよりは90年代を代表したバンドの99年を代表する1枚として、内容的にも語り継がれるベストアルバムとしてのクオリティーを保ったアルバムとなっている。
■『T-BOLAN FINAL BEST LIVE HEAVEN LIVE & CLIPS』
ベストアルバムと時を同じくして完全限定生産でリリースされるのが、彼らにとっておそらく最初で最後になるであろうビデオ作品『T-BOLAN FINAL BEST LIVE HEAVEN LIVE & CLIPS』だ。この作品が、T-BOLANにとって初の映像作品となるのも意外だが、まずその2時間弱全19曲を収録した圧倒的なボリュームに驚かされる。タイトル通りここには彼らのライブ映像とクリップ映像の2本立てが緻密な編集作業によって収録されているわけだが、これを完全に観るにはそれ相当の体力が必要とされるのは覚悟してほしい。なにしろ長さだけで映画1本分はあるのだ。T-BOLANの映像を撮り続けたスタッフの執念すら感じさせるが、そのボリュームに相応しく内容はかなり充実している。
オープニングはモノクロームの映像でライブ会場に入るメンバーの姿が映し出されていく。そして、そこに解散の意志表示の、日く「T-BOLANという4人の才能をバンドの枠内で発揮するには限界だった・・・」というテロップが重なり、1曲目「泥だらけのエピローグ」のライブシーンでこのビデオは幕を開ける。そして、映像はライブとクリップを交互に挟みながら進んでいくのだが、とにかくレアな映像満載なのでかいつまんで説明していきたい。
まず、ライブ映像の方だが、これはボーカルの森友嵐士が長髪であるところから推測して93〜94年ごろのライブツアーを追いかけた映像ではないだろうか。だとすれば今から少なくとも5年以上前の映像になるわけだが、こちらも先のベストアルバム同様、あまり時代の流れを感じさせない。というよりは4人の姿は、まるで現在のロックバンドのお手本のようだ。その立ち振る舞い、オーディエンスとのかけ合い、楽屋でのショット、リハーサル風景、そんな今まで未公開の映像がふんだんに出てくるのだが、ロックミュージシャンかくあるべしのようなドキュメンタリータッチの映像は、90年代のロックバンドの一つの典型を確実に映し取っている。また、中盤では彼らのインタビュー風景を映した貴重な映像が挿入されており、4人の肉声が聴けるのも魅力だ。そして、もう一方のビデオクリップだが、これはより実験的な映像が楽しめ、当時、T-BOLANが映像作品に対してもどん欲な姿勢を見せていたのがうかがえる。特に94年以降の作品にはその傾向が顕著で「LOVE」の燃えるヒマワリのシーンや「Lookin’for the eighth color of the rainbow」の色あい、また「SHAKE IT」や「Be Myself」は今でも充分通用する先進性を兼ね備えたビデオクリップだと思う。また、モノクロームやセピアを多用した作品作りにも彼らのバンドイメージに対する姿勢とこだわりが見えて興味深い。
このビデオはT-BOLANの9年間の軌跡を克明に知ることができるだけでなく、90年代に活躍した、あるロックバンドの記録的映像としても価値ある作品となっている。
以上、T-BOLANの解散にあたってリリースされるベストアルバムとビデオの紹介をしてきたわけだが、同作品とも一貫して、作品としても優れているので、T-BOLANファン以外の層にも幅広く受け入れられるのではないだろうか。ことわざに「虎は死して皮を残す」とあるが、T-BOLANはこの解散を機に素晴らしい2作品をJロックシーンに残してくれたのだ。♪
テキスト 斉田 才 text by Sai Saida from『J-ROCK magazine 2000 JANUARY』