ニュージーランド〜アメニモマケズ〜
1997年2月27日から3月10日にかけて、念願であった海外ツーリングをした。ハプニングの連続だったけど何もない荒野をぶっ飛ばしたときの気分はもう言葉では言い表せないくらいだった。何もかも忘れて風になった瞬間、果てしなく続く道の向こう側の真っ青な空のもっと向こうに自分の未来が見えるような気がした。何かもやもやとしたものが吹っ切れた気がした。
| いきなり虎舞竜。 |
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僕はバイクの中型免許しか持っていない。国際免許では、排気量は関係ない。しかし、今まで400cc以上のバイクに乗ったことが無かったため、比較的小さい500ccのカワサキのEX−5と言うバイクをオークランドのレンタルバイクで予約した。しかし当日、バイク屋で僕を待っていたのはヤマハのTDM850と言う排気量850ccのバイクであった。間違って、EX−5を貸してしまったので料金はそのままでいいからこれに乗っていってくれと言うのだ。そのデカさにビビッたけど、これしかないと言うのでしぶしぶ乗る事にした。一日90ドルで12日借りた。 |
| エナジーゼロ! |
バイク屋を昼に出発、ハイウエイを南に飛ばした。NZは日本と同じ左側通行、メーターもキロ表示。何一つ問題は無かった。ただ、ガソリンが少なかったのでハイウェイを降りたら最初のスタンドで給油をする事にした。しかし、ハイウェイを降りてからなかなかスタンドが現れない。道の左右には牧場風景がどこまでも続いていた。「そろそろヤベェかな」と思った瞬間、プスリとエンジンが止まってしまった。やっちまった、日本でもしたことが無いガス欠を…。さらに、フューエルのコックがリザーブになっているではないか。トホホ、汗だくだくででかいバイクを延々と押して歩いた。
運がいい事に1時間くらいえっこらえっこら押していたらスタンドを発見。命拾いしたぜ、ホッ。夜はコロマンデルのモーターキャンプにテントを張った。浜辺のキャンプ場で夕日が心に染みた。 |
| またまた虎舞竜! |
ツーリング5日目。北島の東側、ギズボーンのモーターキャンプにいた。昨晩、テントの周りがガソリン臭いような気がしのでバイクを調べてみた。どうやらキャブレターの辺りからガソリンが漏れているようだった。暗かったので今朝もう一度調べてみたがやはりキャブレターの辺りからポタリポタリとガソリンが漏れていた。つたない英語でレンタルショップに電話したら「近くのバイク屋に持っていってくれ」
といわれたので町のバイク屋で修理してもらう事になった。ガスケットが駄目なので明日部品が来るから明日また来てくれと言われ、1日足止めを食らう事になる。またまたついてない。一人ションボリする。しかし、悪い事ばかりでは無い。退屈だったので町をぶらぶらしてたら、鳥の丸焼きのテイクアウェイを発見した。鳥1匹がまるごと串刺しになって釜の中でぐるんぐるん回っていた。「あたしを食べて!」と言わんばかりの皮をキツネ色にテラテラ光らせたグルグル焼き鳥を見ていたら、いてもたっても居られなくなり、昼飯にグルグル焼き鳥を食らう事にした。なんと、とり丸ごと1匹を真っ二つに切ったやつ1ピースとフライドポテト大盛りとコーラのセットがたったの6ドルだった。シビレタね。ギズボーンの海岸に腰をおろして一心不乱にむさぼり食ったね。あのグルグル焼き鳥の味は一生忘れないね。 |
| ダニ地獄 |
またまたギズボーンのモーターキャンプ。昨日の夜から強い雨。朝目覚めても依然として降りつづける。今日は10時半に修理の終わったバイクを取りに行くのでそれまでテントの中でくつろいでいた。ふと、テントの壁を見ると黒い点々が…。カビかな?と顔を近づけて目を凝らしてみるとモゾモゾうごめいている。「ギェー!?ダニだ。」 「ものすごい数だ!1000や2000といった感じだ!!」 キモチワルイ。テントをゆするとパラパラ落ちてくるではないか。片っ端から手で潰す。1匹残らず手で潰す。殺りくのダニキラーマシーンと化して目を血走らせながら雄叫びを上げながら数千匹のダニを退治した。こうなったらくつろぐどころではないので、雨の中しぶしぶテントを撤収した。 |
| ノミ地獄 |
| ダニ地獄の日の夜、ティロハンガビーチモーターキャンプに居た。誰も居ないテレビ室があったので、おんぼろソファーに腰をおろしてユッタリとテレビを観ていた。誰も居ないのに、プチンップチンッと音がする。 「なんだろ?」 プチンップチンッ 「足がカユイなぁ。」 プチンップチンッ 「ゲっ!?」 なんと、音の正体はノミだった。無数のノミが僕の足に向かって飛び付いてくるでわないか。プチンップチンッの正体はノミがコンクリートの床から跳ねる時に発する音だったのだ。勘弁してくれ。僕は泣きながらテントに逃げ帰った。ダニの次はノミかヤレヤレ…。 |
| アメニモマケズ |
このツーリングで僕はアメ男である事を確信した。12日間のうち8日間雨に降られたのだ。ほとんどカッパを着っぱなしだった。朝、目が覚めてパラパラという雨音を聞くとちょっぴりブルーになったが、テントをたたんで1度走り出してしまうともう止まらない。雨なんか気にしない。200キロでも300キロでも走ってしまう。地平線まで続く一本道では、190キロのメーターを振り切った。渓谷沿いのワインディングロードでは、すれ違うハーレー軍団に手を振った。ナショナルパークのデザートロードでは自ら前方に立ちふさがる分厚い雨雲の中に突っ込んでいった。雨の日もあれば晴れの日もある。大事なのは、どんな状況でもその瞬間を楽しむ事だ。今、好きな単車に乗って旅をしている。その事だけで大満足だった。
11日目の夜、オトロハンガモーターキャンプ。空には雲ひとつ無く、ビックリするくらい無数の星が輝いていた。今にも降ってきそうだった。天の川が見える。南十字星も見えた。体が冷えて震えてきたが、そのままずっと空を眺めた。いつまでも空を眺めていた。 12日目、抜けるような青空だった。まぶしい緑の丘が連なるうねるような牧場地帯を、丁寧に楽しみながら走った。このツーリングの間ずっとしてたように奥田民生のイージューライダーを歌いながらゴールであるのオークランドに向けてスロットルを全開いにした。 |