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| とうふ料理「順正」 |
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「茶わん坂」の舞妓さん |
清水寺から、「茶わん坂」への石段を下りて行くと、二人の舞妓さんが立っていた。カメラマンの青年が、身振りに注文をつけながらカメラを構えている。やや離れた後ろからは、欧米人のカップルが、彼女たちの写真を撮っていた。
両側に土産屋が並ぶ坂に入ると、前方から二人の舞妓さんが上がって来た。すると、近くを歩いていた修学旅行の女子中学生らしきグループが、代わるがわる舞妓さんと記念撮影をしている。
子どもたちが撮り終えるのを待ってから、妻がカメラを構えて、わたしも美女の間に収まった。左側の舞妓さんは黒を、右側の舞妓さんは赤を基調にした着物で、どちらも華やかな花柄だ。
妻がシャッターを押し終えたので、二人の舞妓さんにお礼を言うと、「もういいんですか」と、赤地の舞妓さんがにこやかに言った。
近くに、妻のお目当ての「近藤悠三記念館」があった。しかし残念なことに、今日は水曜日で、休館日だった。ここは、人間国宝の陶芸家・故近藤悠三氏の生家を改造して、作品を展示してある。妻に聞くと、青色が鮮やかな絵付けだという。
「茶わん坂」との名の通り、右も左も陶器を並べた店が多い。どれも、桃山時代から歴史をもつ京焼や清水焼である。
黄昏が迫ってきた。楽しみな京料理と般若湯が待っている。これからタクシーで南禅寺近くのとうふ料理の老舗「順正」へ行く。
話し好きな、タクシーの運転手。先ほどの舞妓さんとの写真を撮った話をすると、中年氏はこちらを振り向きながら笑顔で言った。
「それは本当の舞妓さんではないでしょう。6時過ぎないと、出歩いていません」
それはそうだと思った。まだ舞妓さんの仕事時間ではない。つまり、一緒に写真を撮った舞妓さんは、今はやりの「体験舞妓さん」たったのだ。ちょうど今は、大学生の卒業旅行の時期であり、彼女たちは憧れ(?)の『にわか舞妓さん』に変身していたのだ。
「夢を壊してしまって、申し訳ありません」
タクシーを降りるしな、中年氏は何度も頭を下げて詫びていた。

