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恵比寿山車
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花山車
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愛知県三河地方を訪ねたのは、10月の秋晴れの日だった。
JR東海道線三河三谷の「八劒神社」の奇祭は、午後1時の号砲を合図に始まった。満艦飾に飾り付けられた、各地区から集まった4基の山車が、神社に向けて進んで来た。
先頭の山車は、色鮮やかな中区の『花山車』だ。太く、長い柱が山車に取り付けられ、その先端には、赤や青、黄、橙色の花飾りが艶やかだ。
山車の屋根の真ん中を跨ぐようにして、恵比寿様が座った『恵比寿山車』は、西区のものだ。柱の上部に黄、青、赤色と3つの傘をあしらい、山車の竜飾りの見事なのが、北区の『三蓋傘山車』だ。上区の『剣の山車』は、鶴の飾りと、屋根には金のシャチホコが輝いている。それぞれに、個性豊かな華やぎのある山車である。
どの山車も引綱のほかに、後方に子どもたちが掴まる細い綱がある。さらに、山車の前後に太い丸太を取り付けて、法被姿の若者たちが左右から押している。
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剣の山車
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三蓋傘山車
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お囃子にのって、山車の後ろに続く行列は華やかだ。
毛槍をかざした奴の一団。宮廷姿の青年たち。法被を着て、笹を持った女の子たち。それに、花笠を被り厚化粧をした子どもたちは、まるで歌舞伎役者のようだ。
揃い半纏を着て、ねじり鉢巻で横笛を吹いている若者たち。歩きながら一升瓶の回し飲みをしながら、気勢をあげているどの若者も楽しそうで、ふだん街で見かけない笑顔が眩く輝いている。
神社前に、4基の山車が勢揃いした。すると、若者や子どもたちが鳥居をくぐって境内に入って行った。なかには、七福神の姿をした若者もいる。
鳥居から本殿に向かう石畳の脇で、毛槍をかざした踊りが始まった。裃を着た青年と、2人の子どもの奴による滑稽な踊りは、三河万歳をしているような姿だ。
石畳の真ん中に2脚の椅子が運ばれ、2人の若者が座った。その周りに法被姿の若者が、三重の円陣を組んだ。わたしは、これが奇祭のクライマックスとばかり、輪に駆け寄った。背後から背伸びをしながら覗くが、何をやっているのか分からない。ちらりと、巻物を丸めている手元が見えた。
聞くところによると、これが奇祭の性に纏わる神事という。
『三谷祭』は、実に華やかであり、古の栄えた三河の地を彷彿とさせる。

