八丈島旅行記(2001年11月29日〜12月01日)
その1:11月29日(木)

01プロローグ

 着替えと本にタオルくらいしか入っていないバッグを持って羽田空港へ向かう途中の上野駅、エスカレーターを上り終えたところで、突如、腹痛。しばしその場でうずくまる。…数分後、完治。上野常磐普通9・10番線ホーム最奥入り口ひざまずき腹痛こらえタイム・ロスによって、この八丈島突発的思いつきツアーはめでたく静かに幕を開けたのである。早めに家を出ておいて良かった良かった。


02ANKの飛行機は空港の隅からスルドク飛び立った

 さて搭乗予定のヒコーキはエアーニッポン829便13時15分羽田発の予定である。旅行会社から送られてきた旅の計画表には、12時30分にANAの団体専用カウンターに集合せよ、と命じられているので、東京モノレール羽田空港駅を降り立った後に素早くそちら方面へ向かう。上野駅でのタイム・ロスにより時間的余裕はないのだ。ここ1年間で出迎えやら見送りやら旅行やらで、やたらめったら羽田に行っている経験が役に立った。無事時間内に到着する。そのカウンターにて旅行券を航空券・宿泊券と交換。ちらっと名簿が目に入ったのだが、どうやらこの時間帯で出発する同ツアーの客は、自分たちだけのようである。そりゃあ木曜日の昼間に八丈島へ旅行に行くヤツなどおるまい…、となぜか妙に納得しつつ八丈島行きヒコーキのチケットを入手したのであった。

 友人Kと合流し、その大きさの割には中身がスカスカなので妙に「でろーん」と垂れてしまっているバッグを預ける。ほぼ手ぶらの状態になり、まだしばらく出発までは時間があるのだが、特にすることも無し、サクッと待合室へ行くことに。搭乗口24、とチケットに記されている。24、24、24と表示を目で追いながら進んでいくと、おお、突き当たった。搭乗口24ってば一番端っこなのである。その24番搭乗口の電光掲示板に表記された「八丈島」という文字を見て、うーむ、と特に大きな意味もなくうなりつつ、出発時刻を待つ。

 八丈島に携帯の電波が到来しているかよく分からない。よってこの待合室にて携帯としばしのお別れかもしれない。などと思って何とはなしに携帯をいじっているとメール着信。前々から八丈島へ遊びに行くと言っておいた地元の友人Bからであるが…。
「八景島って電波とどくの?」
 んー。シーパラダイスとかあるし、きっと届くんじゃないかなぁ。

 しばしそんな感じで(どんな感じか)ボケーッとしていると、予定時刻より少々遅れたものの搭乗準備が整った模様。ヒコーキは夏に北海道に行った時以来だ。端っこ行き止まり的24番ゲートを通じてそのヒコーキに乗ってみると、おお、通路が一本しかない!真ん中に一本通路があって、その両側に3席ずつ広がっているのですな。座席番号は30番位までの、定員計180人程度のミニ・ヒコーキである。考えてみれば、羽田福岡か羽田千歳だけしかヒコーキに乗ったことのない私にとってこのような小さいのは初搭乗になる。チケットによって指示された席は最前部。うーむうーむとまたも意味無くうなりつつ静かにその指定された席に着いたのだった。

ドアが手動で、よっこらせえガコンっ、という感じで閉められ、離陸体制完了である。乗客は定員の半分程度だろうか。空席も目立つ。そんな我らがANK829便は、ごごんごごんごごんごごごん、と振動しつつ徐々に加速。と思ったらもう宙に浮いている。ミニ・ヒコーキは飛び立つまでの距離が短いようである。あまり長い距離を走らなくて良いので空港の端っこからの飛び立ちでも全く問題なく、ゆえに24番出発ゲートよりのヒソカ的旅立ちとなるのであろうか。

 そんなことを考えている間にも、機体はスルドク上昇し、いつの間にやら窓の外には壮大な風景が広がっているのであった。八丈島へ向け視界良好、である。


03友人K小学生化の35分でひとっ飛び

 この旅行で同行する友人Kは大学の同級生である。彼はヒコーキという乗り物に乗るのが生涯3回目という。空港待合室にて搭乗待ちしている時からやや言動が不審であったが、実際に搭乗してからはますます不審になってきた。それを隣から見ていると非常に面白いのだ。窓の外の風景を身を乗り出すように見ていたかと思えば、ちょっと機体が揺れると恐れおののき隣席のサラリーマンの表情を窺っては
「彼は平静を装っている!」
 と激しく主張したりして、小学生そのまんまである。にわかに小学生化した友人Kを観察などしていると、高度が下がってきた。何ともう着陸態勢だという。離陸時のシートベルト着用時間が解除されてから、30分も経っていないはずだ。さすがに東京からわずか300キロ、あっという間に到着である。10000キロ単位で飛んでいってしまう文明の利器ヒコーキにしてみればこんな距離はまさにひとっ飛び、ってヤツなのだろう。機内の友人Kではないが、さすがヒコーキ、と秘やかに敬服の態度などを見せつつの着陸と相成ったのだった。


04八丈島はアロエと富士の島だった

 ヒコーキが降り立った八丈島空港は、滑走路がまっすぐ一本走っているだけの、非常に簡素かつ素朴なものであった。建物も空港と言うよりは、地方の駅舎といったたたずまいである。うむ、非常にいい感じではないですかなぁ、とつぶやきつつ空港内へ。まずは預けた荷物を受け取る、あのベルトコンベアがぐるぐると回るヤツが非常にコンパクトなのに静かな感銘を覚えた。全周6メートルほどの楕円形なのだ。羽田空港のように他の客に混ざって延々と待ち続けるという事もなく、なかなか自分の荷物が出てこないという事もなく、非常にスムーズに受け取りが完了。遂に八丈島初上陸である。

 空港を一歩出ると、まず目に入ったのが、どどーん、とそびえる山だった。いやはや、なかなかの景観である。空港入り口に備え付けられていた地図にて確認すると、どうやら八丈富士という山らしい。そういわれて改めて見てみると、確かに形は富士山に似ている…ような気もする。八丈島にあって富士山に似た山だから、八丈富士。何ともわかりやすいネーミングではないか!

 などとその昔の誰かもわからぬ山名命名者に激しく同意を見せつつも、宿泊予定の「八丈島国際観光ホテル」を探して歩き始める。電話連絡をすれば空港まで無料で迎えに来てくれるとの事であったが、せっかくの八丈島初見参であるので歩いて目的地まで向かってみることにしたのだ。車で5分と書いてあったのでさして遠い距離でもあるまい。八丈富士を右に見つつ、パンフレットの地図を頼りにてくてくと歩を進めた。

 その右手の八丈富士方面、一面の緑で覆われている。よくよく見てみると、その緑の元は全てアロエであった。あのギザギザのアロエである。もうそこら中見渡す限りのアロエの海。これでいくら虫刺され・火傷等になっても大丈夫だなぁ、などと友人Kと一つ安心をみたのである(?)。


一面の緑の正体はアロエであった。

どこに行っても八丈富士が見えるのだ。


05八丈島の道路は広く美しくそして複雑を極めた

 しばらく歩いていると、目指すホテルが見えた。見えた、と言っても、遙か彼方である。海岸に向かって見渡しがいいので、海の近くにあるホテルはすぐ目に入るのだ。早速その目的地へ向かっていると思われる道路を進んでみる。と行き止まり。む。もう1本奥の道も行き止まり。むむ。結局元の道路に戻り歩いていくのだが、これは明らかにホテルからは遠ざかっている。しかし道が無いことには仕方ない。ケモノ道のようなものなら何本かホテル方面へ向かっていたのだがさすがにトトロにも出会えるようなその道を進む気にはならなかった。トトロは子どもにしか見えないというしね(?)。

 どんどん目的地から離れていくという不毛の行進の末、ようやく出会った海岸方面への道路は非常に美しかった。綺麗に舗装されていて、歩道もあって、南国チックな木と花が植えられている。なのだが、全く人がいない。どこかで工事をしているのだろう、通行する物と言えばもっぱらトラック。それ以外にはほとんど人工的な音がしない。八丈島に来て一番はじめに思ったことでもあるのだが、この島は圧倒的に静かである。そんな静寂の中を相も変わらず目的地を目指して進む。持っている地図が略図であることが発覚していたので自分らがどの辺りを歩いているのかわからないという状況ではあるのだが、それでも健気に歩き続けたのだ。なぜならば歩かないとたどり着かないからである(当たり前だ)。その上空をさっきまで乗っていたエアーニッポンのヒコーキが飛んでいった。男たち(自分たちの事ね)はいまだに八丈島をさまようが、ヒコーキは再びひとっ飛びで東京へと帰っていくのだ。

 道をずっと下っていくとようやく海に出た。水平線がはっきりくっきりと見えるのだ。これはなかなか良好な眺めである。そして、その後方には目的地であるホテルも見える。いやぁやっと着いたぁ…などと思っていたら、ここは入り口じゃ無い模様。やや肩を落としつつもその周囲をまたぐるっと周り、結局、ホテルの全景前後左右360°を全て見渡した後にようやく入り口を発見。車で5分、徒歩1時間。ちょっとした八丈島ウォーキングを、着くなりいきなり実践してしまった。


道無き道を突き進む友人K。

勝手に命名、トトロの小道。

南国風の綺麗な道路は静寂さに包まれていた。

ようやくの海を臨む。


06部屋に着いたら「とりあえずビール!」である

 ふいぃ、と一息つきながらも息つく間もなく(どっちだよ)素早くチェックインを済ませ、5階だという部屋へ向かう。畳がひかれている和室は、その広めの窓が海に向かっている、いわゆるオーシャン・ビューというヤツだ。ちょうど夕暮れ時、眼下に広がる一面の海がオレンジ色に輝いていて神秘的な雰囲気である。空港からの徒歩の疲れも吹き飛ぶかのような綺麗さであった。

 そしてエレベーターを降りたすぐにあった自動販売機へ向かう。その自販機にアサヒスーパードライが売っていた事を目ざとくチェックしていたのだ。早速2本買い込み、ごくごくっと飲み干す。これで「かのような」ではなく、空港からの徒歩の疲れが本質的本格的に吹き飛んでしまう。ロマンチックではないが、とりあえずのビールは眼下の美しき景色にも勝っているものなのであった。


07島の辞書に「J-PHONE」という文字は無い

 さてしばらくは部屋でまったり、といった趣でごろごろとしている。暇つぶしといえば携帯電話。当然、しっかりちゃんと持ってきている。さてその電波の入りの状況だが…。全島的に圏外、のようである。空港に降り立ち、機内では切っていた携帯の電源を再投入した際からずっとかたくなに圏外表記は続いているのでほぼ間違いないだろう。八景島には電波は来ているかもしれないが、八丈島には来ていないのであった。部屋に置いてあったとある店の連絡先に「携帯:090-****…」と書かれていたので携帯全てのキャリアが使えないわけではなさそうだ。きっとドコモなら通じるのであろう。あぁ、せっかく充電器まで持ってきたのに。悔しいので着メロなどを鳴らしてみた。するともっと悔しくなった。これで友人Kがドコモだったりしたらますます悔しかったのであろうが、共にJ-PHONE使いであるがゆえにその悔しさを味わわずにすんだのは幸いであった…のかもしれない。夏に那須に行った時などは、自分以外皆ドコモでメールなどしているのにJ-PHONEは圏外で、独りなにやら異様な疎外感に包まれた事をにわかに思い出しつつ、しかしかといってそれで電波が来るわけでもなく、我が携帯電話は静かに目覚まし機能程度の着メロ演奏マシーンないしはただの低性能デジカメと化していたのであった。


08天気予報士の兄ちゃんは八丈島だけ午後まで雨でしょうと言った

 部屋のテレビの写りはいたって良好だ。八丈島とはいえ東京都、チャンネルも関東圏そのままである。で、気になるのは明日以降の天気。早速各局それぞれ18時50分頃から一斉に始まる天気予報をチャンネルを動かしつつ見てみる。自分はこれはもうかなり確信的に「アメオトコである!」と宣言出来る体質の持ち主なのだ。雨男というものが、体質なのかどうかは定かではないが、とにかくどこかに旅行に行く時はやたらめったら雨が降る。特に今年の夏は凄かった。まず8月21日の北海道旅行の出発日が台風直撃の日。何とかヒコーキは飛んだものの、台風の進路を先取りするような道程だったため、本州と北海道の双方で同じ台風の影響を受けるという離れ業を演じた。そして9月のゼミ合宿。これは軽井沢で行われたのだが、この時も大型の台風がまさに到来しようか、という時期での出発であった。着いたら大雨でタクシーに乗る前にずぶ濡れ、2日目にはさらにひどい暴風雨となり長野新幹線は開業後初の終日運休という有様。最終日の3日目、新幹線の復旧は午後にずれ込み大幅に予定を遅れての帰宅となったのであった。

 こんな今年の経験から言って、今回の八丈島でも雨に見舞われるのでは…、と内心ほぼ諦めにも似た境地で悟っていたのであったが、幸いにして本日は快晴であった。しかし安心するのはまだまだ早い。問題は明日以降なのである。出発前に見てきた新聞では、都内の明日の予報は雨だったはずであった。
「夜更けに降る雨は明け方には止んで、通勤通学には影響ないでしょう」
 そう言ったテレビの中の気象予報士は、おまけのようにもう一言付け足した。
「しかし伊豆諸島南部の八丈島“だけ”は、午後まで雨が残るでしょう」

 どうやらしばらくは、旅行に傘を必ず持ってこなくてはいけないようである。


09圧倒これでもか的夕食

 ホテルまでの徒歩が効いたか、かなりの空腹状態に陥っていたので、夕食スタートの6時と同時に食堂へ向かった。ホテルの夕食は量が多いような気がするが、ここ八丈島国際観光ホテルの夕食もご多分に漏れず、であった。たくさんのおかずがあって何が出ていたのかもうほとんど覚えていないが、島の特産品としては、「明日葉」というものが出てきた。これは…、大人の味、とでもしておく。マグロのステーキと思しき一品がなかなか美味しかったということは記しておこう。


10妖しく緑に輝く風呂は激しく熱かった

 食事の後は風呂である。アロエ風呂、と書いてある。がららっ、と入り口を開け湯船を見てみるとお湯が見事にエメラルドグリーンであった。壁は木製で天井も高く爽快感がある良い風呂場だ。これで、外れ宿にありがちなへろへろ湯量しかも温度調整不能熱いと思い水を増やすと突如冷水吹き出し型シャワー、などであったならその気分も台無しなのだが、お湯の勢いも温度の微妙な調整も可能な合格的シャワーで気分も良好維持である。お試し用で置いてあった、小学校時代の書道の墨汁の匂いがする炭セッケンなるもので洗顔してみたりしつつ身体全体を洗った後に、満を持して緑に輝く湯船へ浸かった。

 のだが、これが熱い。くはっ、とうめきつつもその緑の液体に身を委ねてみるも、結局一瞬にて半身浴、そして足浴と徐々にその身委ね率は低下していくという情けな指数98%強といった感じの初日入浴であった。


11手早いビールで優等生的早期就寝

 この夜はあまり酒類を飲まずに早めの就寝。明日以降はレンタカーを借りて行動する算段である。果たしてこの島はどんな表情を見せてくれるのだろうか。楽しみである。

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