猫と執達吏と骸骨 (中篇)
アレクサンドル・デュマ
時計の針が一分ずつ進むのを目で追いました。そしてとうとう十二のところに届き、時計が震えるのが聞こえました。続いて金槌が一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、そして六つと叩きました!」
不幸な判事は続けた。
「六つ目の打刻に合わせて部屋の戸が開いて、議会の執達吏のような人物がまるでスコットランドの執政官の命令を伝えに来たような格好で入ってくるのが見えました。
私が最初に思ったことは、執政官が私宛に何かメッセージを伝えるために使者を送ったのだと思い、その見知らぬ人物に手を差し出しました。しかし彼は私の動作にまったく注意を払わずに見え、私の背後にある肘掛け椅子に座ったのです。
彼の姿を見るために後を振り返る必要はありませんでした。私は鏡の前にいたので、その鏡の中に彼が見えました。
私は立ち上がって歩きました。すると彼も数歩あとをついてきます。私はテーブルまで戻って呼び鈴を鳴らしました。
使用人がやってきましたが、猫が見えなかったのと同じように執達吏も見えませんでした。
使用人を下がらせて、私はこの不思議な人物と一緒に残り、じっくりと観察することにしました。
彼は裁判所の廷吏の服を着て、鬘をかぶり、剣を下げ、円形の縁どりの刺繍の入った上着を着て、帽子を小脇に抱えていました。
夜十時になったので私は床に就きました。執達吏はそばに控えて夜をすごすのに最も具合のいいように私のベッドの目の前の椅子にすわっていました。
私は壁のほうに顔を向けて寝ましたが、なかなか寝つかれずに二度三度寝返りを打ちました。そのたびに常夜灯の明かりでじっと椅子に座っている執達吏の姿を見たのです。
彼もまた眠っていなかったのです。
そしてとうとう朝の最初の光がよろい戸のすき間から射しこむのを目にして、私は最後に男の方に振り返りましたが、彼の姿はなく、椅子はからっぽでした。
その日の夕方まで私はその姿から解放されました。
その日の夜は国教会の大参事官の邸宅で大招宴(レセプション)がありました。正装していく身支度のためという理由で六時五分前に使用人を呼び、部屋に内側から錠をかけるように言いました。
彼はそれに従いました。
六時の最後の打刻とともに私は戸口に目をこらしました。戸が開いて執達吏が入ってきました。
私はすぐに戸口に行ってみましたがちゃんと閉まっています。錠は金具からはずれたようにはまったく見えませんでした。振り返ると執達吏は私の椅子の後にいて、ジョンが彼に気を取られることなしに部屋を行ったり来たりしていました。
明らかに使用人は猫が見えなかったのと同様に執達吏も見えないのでした。
私は着替えをしました。
そこで不思議なことが起きました。私に十分な注意を払いながら、この新しい仲間はジョンが手伝ってもらっていると感じさせずにジョンを手伝ったのです。ジョンが上着の襟首を持つと亡霊は裾をささえ、ジョンが短袴(キュロット)の上を差し出すと亡霊は裾先を持ったのです。
これほど丁寧な使用人はこれまで雇ったことがありませんでした。
出発の時間となりました。
そこで執達吏は私のあとに従うかわりに、前に立って歩きました。部屋の戸をすり抜け、階段を下り、馬車の扉を開けるジョンの後で腕に帽子を抱えて立ちました。ジョンが扉を閉めて馬車の後部の従者席につくと、彼は御者の席に上り、御者自身は右に寄って場所を作ったのでした。
国教会の大参事官の門前で馬車は止まりました。ジョンが扉を開きましたが、亡霊はすでに彼の後に立っていました。私が足を地面につけるやいなや、亡霊は入口に集まっている従者たちを通り抜けて私の前にやってきて、私が後をついていくかどうかを見ていました。
そのとき私は御者に対してもジョンにしたように試してみようと思ったのです。
「パトリック、お前のそばにいた男は何者かね?」と私がきくと
「ご主人様、どんな男ですか?」と問い返します。
「お前の席の横にいた男だよ。」
パトリックは自分の周囲を見回しながら驚きで大きな目を丸くさせました。
「いいんだ、私の勘ちがいだ。」と彼に言いました。
そして私も邸宅に入りました。
執達吏は階段で立ち止まって私を待っていました。私が歩いていくと彼も動き出し、まるで私の到着を告げるかのように前を歩いて大広間に入りました。続いて私が入ると彼は控えの間で適当な場所で待機するのでした。
ジョンにとっても、パトリックにとっても同じように亡霊は誰にとっても見えないのです。
そのときから私の悩みは恐怖に変わりました。私は本当に気狂いになったと確信しました。
その夜から人々は私の心の変化を感じ取りました。それぞれが何か気がかりな点があるのではと私に尋ねるのです。あなたも、他の方々のように。
亡霊は控えの間にいました。
私の帰宅に際して、到着したときと同じように目の前にやってきて、御者台に上り、家に戻って私の後について部屋に入り、前の晩に座っていた椅子に座ったのです。
そこで私はこの出現に何か現実の、とりわけ物証的な何かがあるのかどうかを確かめたいと思いました。自分から無理やり努力をして後ずさりしながらその椅子に腰をかけたのです。
何も感じませんでしたが、鏡を見ると彼は私の椅子の背後に立っていました。
前の晩と同じように私は床に就いたのは午前一時になっていました。すぐさま寝床の中から彼が椅子に座っているのを見ました。
次の日の朝になって彼は消え去りました。
それは一カ月続きました。
一ヵ月の末になって亡霊は現れなくなり、丸一日が過ぎようとしていました。
しかし今回は最初のときとは異なって、亡霊がすっかり消え去ってしまったとはもはや考えられません。むしろ恐ろしい変容があるかもしれないと思って、平静を喜ぶ代わりに恐怖の念をもって翌日を待ったのです。
次の日、六時の最後の打刻が鳴ると私のベッドのカーテンがかすかに揺れる音がしました。そしてベッドと壁とのすき間のところに私は骸骨を見たのです。
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原題: Le chat, l'huissier et le squelette
『千一亡霊譚』 Les Mille et un fantômes 所収
弟8話 (1889-90年刊)
作者: アレクサンドル・デュマ Alexandre Dumas
アンドリュー&コパン挿画
Illustration de C.A.Andrieux et Ed.Coppin
試訳: 写原祐二(2004年10月6日)
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