猫の食事
伊豆半島の下田からバスに乗り、しばらく南に行くと とうじ浜 という所に着く。
それほど広くない浜の真中あたりにあるバス停に降りると、海からの風が気持ちいい。
山に囲まれた所で育った私には、この潮の匂いは強烈だった。
今でも海の匂いをかぐと、このときのことを思い出すくらいだ。
約束の時間になったのでバイト先の民宿を訪れると、
電話の声から想像した通りの陽気なおばちゃんが迎えてくれた。
ここでならやっていけそうだと思った。
その日は疲れたので休まさせてもらい、翌日から働くことにした。
民宿の朝は早い。
おばちゃんは5時ごろに起きて、朝食の準備をする。
朝に弱い僕は7時起きで勘弁してもらい、途中から朝食の手伝いをした。
お客さんを起こし、朝食を運び、布団を片付け、お客さんを送り出し、部屋の掃除をする。
一般家庭でお母さんがする事 これが私の主な仕事だった。
午前中の作業の最後に、ごみ出しがある。
防波堤の上の道路までポリバケツを運ぶだけなのだが、これが結構キツイ。
生ごみ40リットル入りのポリバケツを持って、階段を一気に駆け上がる。
途中で休むようなスペースはまったく無い。
気合を入れて一気に駆け上がるのみ。
気を抜くと、ごみバケツを抱いて転げ落ちることになる。
ごみの回収は毎日行われていたので、
この仕事は毎日のいいエクササイズになっていたと思う。
それまでは毎日だらだらと過ごしていたので感じなかったが、
こういう生活に変わり、やたらとお腹が空くようになった。
話は変わるが、この民宿には猫がいた。
名前は忘れた。
特にかわいいわけでもない、ただの猫だ。
しかも太っている。
ある日、猫とじゃれていると、おばちゃんより猫のご飯係りに任命された。
毎日の余りもので猫のご飯を作り与える。それだけの係りだ。
早速、猫のごはんを作ることになった。
前の日におじちゃんが漁に出ていたので、魚介類はとても豊富にあり
余りものとは思えないくらいの 豪華な海鮮どんぶり ができた。
我ながら良い出来だ。
猫に持っていく途中、思った。
これ美味そうだなあ。腹減ったな。。。
ごちそうさまでした。
猫には悪いことをしたが、あれはとても美味しかった。