数えないで
伊豆でバイトをしているとき。
お客さんの中に、やけに貫禄のあるお父さんがいた。
食事の片付けに部屋へ行くと、
訊いてもいないのにご自身の職業を教えてくれました。
その道の方で、相当上のほうのポストを任されているとのこと。
「ところで兄ちゃんよ。おまえさんどっから来たよ?」
「○○県です。」
「ほおー、そうか。○○県といえば海のないところだな。それで、海でバイトか?」
「ええ、そうです。」
「海のない県っていくつあるか、兄ちゃん知ってるか?」
「いやあ、わかんないですねえ。」
「そうか教えてやろうか。 まず滋賀県だろ。群馬、岐阜、、、」
と、そのお父さん ↓
そこから指が無い
わずかに残された指の根元がぴくぴく動いてる。
さあーと血の気が引いていくのが自分でも分かった。
もういいです。
もう数えなくてもいいです。
それ以上数えないでくれ。
と、言えるはずもなく
ただひたすらに話が終わるのを、引きつった笑顔で待つばかりでした。