事務所にて

現地の空港の税関の手前に出迎えがきているはずだった
そう、そのはずだったのに誰もいないのだ


インドネシアのパイトン発電所に現地取替え部品を運び、
作業完了を確認してくるのが今回の仕事
香港で飛行機を乗換え
やっと現地に降り立ったのは夜9時過ぎだった
7時間近い長旅で疲れ果てていた
朝も早かったのでとても眠い 
急いでホテルにチェックインして熱いシャワーを浴びて眠ろうと思っていたのに
厄介なことになった


緊急取り替え部品を普通の荷物に忍ばせて運ぶため
税関で取り上げられる恐れがある
それで現地の出迎えの人にうまく誤魔化してもらう手筈だったのに

その出迎えがいないのだ。。。困った

仕方ないので素知らぬふりをして 申告なし で税関を通過しようと試みた
が、予想通り止められた
スーツケースをX線にかけられると
怪しげな鉄の塊がモニターに映し出された
一見、拳銃のようにも見える

カギを開けるよう促され
渋々部品を取り出すと検査官は厳しい表情でこっちを睨みながら言う
これはなんだ?
必死で説明するが、まったく聞き入れる気など無いようだ
事務所へと僕は連れて行かれた



事務所に入ると 5,6人に囲まれ
一通り形式的な質問をされた
異国の地で言葉もろくに通じないのに
これは堪える 

泣きそうだ

調書をとられたあとで
事務官らしき男が親指と人差し指をすり合わせながらこちらを眺めている
金をよこせと言うのだ

金次第では通してやろうということらしい

幾らほしい?
とたずねると 500ドルよこせという
高いなと思ったが
とにかく部品を現地に届けなければここまで来た意味が無いので
払うことにした

男は笑顔で金を受け取りそのほとんどを自分のポケットにしまいこんだあと
手でシッシとやって僕を追い払った


事務所から出ようとしたときにふと頭をよぎったこと それは
こういう金って、必要経費で落ちるのかなあ
まさか自腹か?


で、さっきワイロを渡した事務官に訊いてみた


















領収書もらえますか?





当然、もらえる筈も無く 僕はその事務所を追い出された