EU、思惑それぞれ


こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。
こちらはなんだか梅雨のような変なお天気。ずっと曇り空で肌寒かったのが、今日は久しぶりに晴れ間が出ています。これで今度こそ夏になるのでしょうか。
ヴェネツィア・ビエンナーレ国際美術展が、この12日(日)に開幕しました。ビエンナーレについては、感想、感慨含め、いろいろとお伝えしたいことがあるのですが、これはまた次回以降に、と思います。
EU憲法のフランス、オランダでの国民投票による否決、英国の投票凍結。一連のニュースを見ていて、ちょっと前に聞いた話を思い出したので、今回はそちらから。

ヴェネツィアの砦

ヴェネツィアの市立美術館の入場券は、3つのカテゴリーに分かれています。たいていの有料の美術館と同様、一般、割引、そして無料。割引は学生や若者、無料は、子どもと、65歳以上のEU市民。そして、もうひとつ、ヴェネツィア市民は、年齢にかかわらず無料となっています。ここでつっかかったのが、英国人。EU市民は、その国籍に関わらず、EU内であれば、どこでも同じ権利を有するはず。ヴェネツィア市民だけ無料というのは、不当な優遇だ、というわけです。販売窓口あたりでごねるくらいならともかく(といって、ごねたところで普通はどうにもなりませんが)、すごいのはなんと、EUの公正取引委員会というのでしょうか、そこへ正式に訴えたというのです。確かに、規定上はそうあるべきなのかもしれませんが、入場券ごときで、です。いや、最近はイタリアも入場券関連がどんどん値上がりしていて、確かに1回の旅行でもいくつか回ると、案外ばかになりません。それにしても、たかだか、10ユーロ、15ユーロ。雇用とか、そういう話ではありません。それで、訴えてしまうところがすごい。この問題、どのようなお達しが出るのか、関係者も現在回答待ちなのだそうです。
もう1つ、実はこれは完全に二重価格なのが、ヴェネツィアの水上バス。普通に観光で来て乗ると、一回あたり、コースにより3.5ユーロから5ユーロ、ところが住民は、1回1ユーロで乗ることができます。初めに専用のカードを作る必要があるのですが、市立美術館の方は「住民票」を基準とするのに対し、こちらは住民票がなくても、短期でもヴェネツィア内に在住、または通勤・通学などしていれば作れます。
これもやはり英国人から差別だとして同様に訴えられたのだそうです。ただ残念ながらこちらの場合は、水上バスも住民にとっては生活の足、観光客と分けて考える必要があるというので、どうやら却下されたとか。
イタリアはEU圏内、彼らにとってはここヴェネツィアも、「わが地元」ということなのでしょうか。イタリア人がロンドンに行って、確かに大英博物館やナショナル・ギャラリーが一般に無料で公開されているのには驚嘆し、堪能し「さすがは大英帝国!」と賞賛はするでしょう。そして、入場券は払わない代わり、充実したミュージアム・ショップで、たくさんお買い物をするでしょう。が、どこか私立や市立の施設で、地元の英国人と、自分たちの扱いが多少違ったしてと、まあ切符を買いながらブツブツ言うことはあるかもしれませんが、やはりそこはよそ様の国。差別だ、と公式に訴えることはまずないのでは、と思います。通貨もまだユーロになっていない上、大陸内EU間なら全くないパスポート・コントロールも、英国・イタリア間の移動の際には存在します。少なくともイタリアから見ると、英国は外国です。発端が1人の英国人なのか、英国人団体なのか、それはなんとなく「大英帝国」の名残といっては大げさかもしれませんが、奇妙な感じを受けました。
いずれにしても、英国人はもちろんEU内外、国籍にはかかわらず、在住者なら恩恵を受けられる制度です。へえーーー、さ、さすが大英帝国・・・と驚いてしまうのと同時に、「どうせなら、ばれないようにいっそ表に明記しなければいいのに」と思ってしまう私は、既にかなりイタリア化しているでしょうか。

ではまた。
Fumie

15 giugno 2005