| こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。 今年の9月は、にわかに映画づいていたとすると、11月は急に音楽づいていて、日記にも書いていたのですが、先週はほぼ毎日フェニーチェ劇場に通っていました。月曜日に逆スト・コンサートがあり、水曜はオペラ”La
Juive”。その興奮もまだ冷めやらぬうち、木曜がピアノ・コンクール「プレミオ・ヴェネツィア」予選を聴きにいき、金曜が再び逆スト、日曜にはプレミオの最終審査がありました。
運と実力と
ピアノ・コンクール、最終日。日曜日の夜とあって、さすがにフェニーチェ劇場も大方埋まっています。
最終選考に残ったのは、1974年ソウル生まれのJi
Eun Kimさんと、1992年パドヴァ生まれのLeonora
Armelliniさん、どちらも女性です。この名前を見たときに、ああ、ではプレミオ(最優秀賞)はパドヴァのLeonoraさんに決まりだな、と思いました。
出来レース、とまでは思いませんが、昨年わずか12歳でパドヴァの音楽院の卒業試験を満点で通ったという「天才」少女。しかもパドヴァといえばヴェネツィアの隣町。かつてはライヴァルだったし、今でもそういう感情は残っているけれども、イタリアの他の地方、ましてや遠方アジアの国に比べれば、完全に地元、です。
東洋人初の受賞者、よりは地元の天才少女、最年少で受賞、のほうが残念ながらずっと、話題になるのは否めないでしょう。
審査が、どういう風に行われるのか詳しくは知りません。例えが、適切ではないかもしれませんが、おそらくフィギュア・スケートのように、1)
技術点、2)
芸術点、があって、それにプラス、3)
審査員の感情や好み、というのがあるのだとすると、木曜日の予選で、Ji
Eunさんの演奏は、1) は文句無しに誰よりも最高点。Leonoraさんは、1)+3)かな、という感じでした。初日はプログラムに経歴など出ていなかったのですが、彼女は見るからに、一段と若いし、パワーで押しまくって「がんばってます!」というふう。
イタリアなので、2)、それに案外3)もかなりあるのではと思います。土曜日の準・最終は都合により行けなかったのですが、出た5人は、この2人以外に、2)がよかった人、全体にバランスがよかった人、など、それぞれ違ったタイプで、まあまあ納得のメンバー。最終にこの2人というのは、正直のところかなり意外でした。
最終日は、先にJi
Eunさん。予選ではいかにも難易度の高そうな作品をこれでもか、これでもかと弾き、まわりを圧倒した彼女、この日は「歌える」ところも見せようとしたのでしょうか。確かに、どこをとっても、やっぱりものすごくうまいのでしょうけれども、彼女の歌は、ずいぶんとおとなしめに思えました。緊張していたのかもしれないし、やはり得意なのは激しい曲なのかもしれない。彼女の、1番のよさを出し切れずに終わったように思いました。
そしてEleonoraさん。ちょっとぽてっとした姿に、りんご色のほっぺた、ほんとにまだ子どもといった様相です。うーん、この子がここまでね〜・・・と思ったのはしかし、1曲めが終わるところまででした。2曲目に、R.シューマンの「カルナヴァル」9番。これは予選でも弾いていたのですが、得意曲なのでしょう。ともかく力ずくだった前回とは大違い。今までぐっと成長し続けていた固い蕾が、ステージの上でうわーっと一気に花開いたかのようでした。
この日は、彼女に勝たせたい、彼女に勝ってほしいという雰囲気が会場を支配していました。ですが、そんな贔屓目に甘えることなく、その期待に見事に答えたといえばいいでしょうか。そういう意味でほんとうにすごい、と思いました。
完璧だったとは思いません。それでもこの変容、そのチャンスを掴む力を見ていると、十分受賞に値したといえるのでしょう。
ピアノを弾く友人は、13歳の女の子を表彰するのは間違っている、と言います。賞金は、これからピアノでやって行こう、と決意している若者にこそあたえるべきで、まだまだこれから気が変わるかもしれない、そんな年代の子に名誉と大金は不要だ、と。また別の1人は、ともかく予選では印象にも残らなかった、と。
2人とも、最終日の演奏は残念ながら聴いていないので、わかりません。素人ながら私は、この日はほんとうにすごい、と思いました。ただ結局、具体的な講評も何もないまま賞だけが発表になり、後でわかったのは、その女の子の父親は音楽院の学長、母親もやはりピアニストであるということぐらい。
「もっと子ども時代を楽しんだら」とのまわりからのアドヴァイスにも「十分楽しんでるわ。それに、何よりピアノを弾くのが大好きだし、私にとっては音楽が全てなの!」と答えているのだそうです。
ではまた。
Fumie
30
novembre 2005
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