衝動的台湾旅 【1日目】

旅立ちの前に・・
 
10月11日から14日まで会社が4連休の休みである事は知っていた。しかし、4日間で1人旅でどこへ行こうかとなると結構難しい為、別に旅に出るつもりはなかった。
 それでも旅に対する未練が捨て切れず、インターネットで格安航空券の空き状況をチェックしたりしてみると、4・5日でしかもビザ無しで行ける台湾やタイが残っていたりした。値段もさほど高くない。タイは何度行っても楽しいが、この8月に行ったばかりである。台湾は前回行ったのが6年前。香港とベトナム旅行のおまけに4日間寄っただけだ。ほとんど何も覚えていない。もう一度行けばもっと印象が強くなるかなと日頃から思っていた。そして自然と足は近くの旅行代理店に向かっていた。
 インターネットで事前に調べた通り、チケットはあっさり取れた。有給をプラスして、10月10日から14日までの5日間の旅。チケット代は14日帰国になると少し高くなるが、それでも47000円と普通に沖縄へ行くより安いのだ。チケットを買うとすぐに「地球の歩き方」の台湾編を購入し、家に帰った。

 今まで基本的にピークシーズンにしか休めなかったから、普段チケットはかなり前から買い、綿密にプランを練っていたので、僕にとってこの様なケースは2年前に博多からジェットフォイルで行った釜山以来2回目である。その時は、夏だったのでエアコンのない安宿でうだうだしてしまい5日間をかなり無駄に過ごしてしまったし、他に旅行者もいなかったのでただ退屈なだけだった。今回はこの二の舞を踏むような事はない様にしたい。
 一応、台湾には2、3回だけメールを交わした台湾人がいた。ペイと言う名前の20歳の女子大生だ。屏東と言う台北からかなり離れた南部の場所に住んでいるし、連絡も取っていないので、会えるかどうかは分からないが、携帯電話の番号を知っていたので、その番号をメモ帳に控えておいた。もし会えるようだったら会いに行くのも面白いし、会えなければ、前に行こうと思って行けなかった太魯閣峡谷に行こう。
 

2002年10月10日(木)

@関空→台北
 
行きは16時55分出発の便なので、前日はゆっくり眠る事が出来た。いつもの様に出国手続きを済ませ、ボーディングゲートのソファに腰掛ける。この便はデトロイト発、関空経由の台北行きなので、ソファで寝ているアメリカ人が多い。また、僕の様な1人旅の日本人はどこにも見当たらない。ほとんどが若い女の子の2人連れ、他はカップルか。台湾人の女性も多いが、何故かみんな垢抜けない感じがする。
 搭乗案内があり、飛行機へ乗る。いつもはトイレに行く時に気を使わない為にも通路側を選ぶのだが、今回は3時間ほどの短いフライトだし、何よりも到着した時の風景が見たかったので窓側を選んだ。
 座席を見つけるが、ショックな事が起こった。僕の席は確かに窓側だが、そこには窓がなかったのである。これでは窓側を選んだ意味がない。
 定刻通りに飛行機は出発し、僕は制限時間3時間の中でガイドブックを読み漁った。まずは今日の宿から決めないといけないのだ。適当な安宿に第一希望から第四希望まで目星をつけておいた。
 機内食を済ませると眠たくなった。ちょうど窓がないので、しっかりと壁際にもたれて眠る事が出来た。意外にラッキーだったのかもしれない。

A中正国際空港→台北駅→「おおしろ」
 午後6時45分に飛行機は中正国際空港に到着した。時差は1時間台湾の方が遅い。両替、入国手続き、荷物の受け取りを済ませると、パックツアーの日本人達から離れ、電話ボックスに向かった。宿の予約を取る為である。
 公衆電話はすぐに見つかったが、 1つを除いて全てカード式だった。そこには1人だけ順番を待っていた。台湾人の中年女性だ。前の人が電話を終えると、その女性がこっちを見たので、僕は手で「お先にどうぞ」というジェスチャーをした。
 彼女は台湾人だが、そこそこ流暢な日本語で自分の子供らしき人を話をしていた。恐らくだんなさんが日本人なのだろう。
 彼女が電話を終えると、
「受話器上げているから、そのまま使えます」
 と言って去って行った。電話の画面には「3」と表示されていた。台湾の電話はお釣りは出ないが、緑のボタンを押して受話器を上げておけば引き続き使えるシステムになっている様だ。
 僕は第一希望として目を付けていた「おおしろ」と言うゲストハウスに電話を掛けた。ガイドブックによると日本人経営で、全てドミトリーである。ドミトリーは気を使わないといけないのでそんなに好きではないが、安いし、必ず旅行者同士のコミュニケーションが取れるから楽しい。
 日本語で男性が電話に出た。彼がおおしろさんらしい。部屋は空いているとの事。鉄道の台北駅まで迎えに来てくれるそうなので、駅についたらもう一度電話を掛ける事にした。
 次にメル友のペイに電話をしたが、出て来たのは彼女の妹で、本人は外出中との事。後で電話を掛け直すと言って、電話を切った。携帯電話に掛けると高くつくのか10元(約37円)がまたたく間に飲み込まれた。

 早速バス停まで行き、台北行きのリムジンバスに乗った。110元(約407円)と安い。6年前と全く同じスタートだが、当時は宿がなかなか取れず非常に苦労をした覚えがあった。今回は幸先の良いスタートだ。辺りはすっかり暗くなってしまっているが、漢字だらけのネオンが心地良い。
 台北駅の向かい側の道路にバスが停まり、巨大な台北駅構内へ足を踏み入れた。6年前の台北駅は、外観以外ほとんど覚えていないが、明らかに綺麗になったのだけは分かった。整備された地下鉄、やたらと多いセブンイレブン、当時はこんなものはなかった。
 セブンイレブンで100元(約370円)のテレフォンカードを買い、再びおおしろさんに電話をし、指定された場所で待った。
 約10分後、Tシャツに短パンといったラフなスタイルの中年男性がやって来た。彼に先導されて地下街に入り、「おおしろ」に向かう。名前の通り、沖縄の人で、台湾に住んで8年だと言う。
 10分程上がり下がりの多い地下街を抜け、「おおしろ」に到着した。玄関のドアを開け、狭い階段を上がると溜まり場の様になっていたが、今はみんな出かけているらしく、誰もいなかった。
 鍵を渡され、宿代の400元(約1,480円)を払った。ベッドのそばに荷物を下ろし、ガイドブックをペラペラをめくりながら、龍山寺に行く事にした。ここには6年前も行ったのだが、道が分からずタクシーで行った記憶がある。だが、今回は地下鉄で楽々行けるのだ。

B龍山寺へ
 MRTと呼ばれている地下鉄駅まで歩き、切符を買う。まず目的地と同じ料金のボタンを押し、その後でお金を入れるシステムになっている。アジアの国々ではこのシステムが結構多いが、どの自動販売機もまずお金を入れることから始める日本の様な国は意外と少ないのかもしれない。料金は初乗りで20元(約74円)だった。
 電車がやって来たので乗り込むが、関空と同様、台湾の人々はなんだか垢抜けない。この2ヶ月前にシンガポールの地下鉄に乗ったが、みんなヨーロッパチックでお洒落な雰囲気を醸し出していた。
 龍山寺駅で降り、地上へ。祝日らしく、かなりの人混みである。まずは6年ぶりに龍山寺で訪れる。当時の事は全く覚えていないが、門の中に入り、派手な装飾や、長くて太い線香を持って祈る人達を見ている内に、少しずつ記憶が蘇って来た。再訪しなければ一生思い出す事はなかっただろうと思うと、少し嬉しくなった。
 
 次はスッポンやヘビを食べさせてくれる華西街観光夜市に向かった。何か事件があったのか、ガードマンが数人道を塞いでおり、周りは野次馬が集まっていた。仕方なく裏道から入る事にした。
 夜市の横道にも食べ物の屋台がズラリと並んでおり、晩御飯をどうしようか目移りしてしまう。かなり腹が減っているのにも関わらず晩飯が決まらず、裏道より夜市に入った。そこに事件らしきものは見当たらなかった。
 ガイドブックの通り、ヘビやスッポンを食べさせてくれる店が並んでいるが、店の人達はどこも怖い感じで、異様な雰囲気があり、入りにくい。僕は今年の正月に香港でヘビスープを飲んだが、スープはかなり美味く、店も古めかしいが、ごく普通の食堂といった感じだった。
 本当は食べてみたかったスッポンスープを諦め、夜市の奥へと入っていった。奥へ入るに連れて人が増えて行き、あるヘビ料理店の前でついに動けない状態となった。何故ならそこにはテレビ中継をしていたからだ。近くの看板を見ると、どうやら今日は台湾の国慶節で、陳水扁総統が来ているらしい。近くにはそれらしきリムジンが待機していた。
 雨の中横断歩道を渡り、夜市の一番奥の店で食事にする事にし、食堂のおばさんに、「牛肉麺」と書いている看板と、「小」という文字を指差した。するとおばさんが、
「スモール?」
 と聞いてきたので、頷いた。
 暫くして牛肉麺がやって来た。おばさんは笑顔で、
「アーユージャパニーズ?」
 と言うので、 こちらも笑顔で、
「イエス」
 と答えた。一人旅にはこんな一声だけでもちょっと嬉しかったりする。そんな牛肉麺は薄味だが、結構美味かった。

C再び電話
 夜市をぐるぐる巡っている内に時計も10時を回っており、そろそろ宿に戻る事にした。台北駅まで戻り、もう一度メル友のペイに電話してみた。今度は本人が出て来た。明日は暇だと言う。屏東までは台湾第2の都市、高雄を経由した所にあり、明日の出発状況で何時に着くか分からないので、屏東駅に着いたらもう一度電話をする事で話がまとまった。明日も移動の1日になる事は間違いない。

 そのまま歩いて「おおしろ」に戻った。3階まで上ると日本人旅行者達が5,6人話をしていたので混ぜてもらい、1時くらいまで談笑した。海外で日本人しかいない場所にいるとここが台湾である事をすっかり忘れてしまう。


「おおしろ」のドミトリー
外観は日本と同じ地下鉄 MRT
龍山寺
台湾最初の食事 牛肉麺