走り納め、走り初め
2002年の大晦日。帰省した次の日に、走り納めとして、実家からショートツーリングに出ることにした。特に行き先は考えてはいないが、とりあえずどこかの林道を走ってみるつもりで、出発した。
で、どこに行くか?であるが、すぐに思いついたのは、”剣山スーパー林道”だ。バイクの免許を取って、2ヶ月後にこの林道を走った。総距離は60kmに及ぶロングダートである。パンク修理の用意もせずに走ったのだから、実に無知というのは恐ろしいものである。実際のところは走りやすい林道なので、普通に走れた(途中で日が暮れて、1泊2日だったが)。
ただ、この時期問題なのは、もう路面が凍結、ないしは積雪のために通行禁止になっている可能性があることだ。というのも、スーパー林道があるところは、四国でもかなり山深いところであり、秘境とも言えるような場所だからである。
とりあえず行ってみないことには始まらないので、駄目な時は予定変更することにし、国道28号線、11号線、55号線と徳島東部を南下。勝浦川を渡った所で右折し、県道16号線で西に向かう。
スーパー林道までは、この道一本なので、あとは景色を楽しみながらゆっくりと走る。とは言え、交通量は少ないので、あっという間にスーパー林道の始点のある、上勝町に到着してしまった。
スーパー林道始点の標識には、”12月1日〜3月31日、積雪、凍結のため、全面通行禁止”とある。うーむ。やはりか・・・。そのまま引き返すのも嫌なので、行けるところまで行ってみることにした。
ここまでの道も、日陰になっている所では凍結の痕跡らしきものがあったが、今日の天気(快晴)ならしばらくは大丈夫そうだな・・・と思ったら、ダートに入ることもなく、こういう路面状況になっていた。

写真では少しわかりにくいが、アスファルト全面が薄氷に覆われている状態。新雪のあるところまで行けば、走れそうではあったが、ブレーキングに失敗すれば、即、谷底グッバイ、である。スパイクタイヤでも履いていれば強行も可能だろうが、そんなことをする意味もない。もしもの時にかけるのは迷惑だけである。そこまでいくと、自己責任の範疇外なので、引き返すことにした。
すごすごと県道16号線を引き返した。途中で公衆便所に寄った後、コーヒーを飲みながら休憩する。天気は快晴である。時間はまだ昼前。このまま同じ道で、実家に戻るのはもったいない。そう思って改めて地図を見ると、国道193号線から国道439号線に抜けるルートが浮かぶ。積雪している可能性はあるが、とりあえずこのまま同じ道を帰るよりは面白いだろうと思い、県道16号線から国道193号線に向かうことにした。
八重地という所を過ぎ、上勝町から木沢村に入ると、もはや山、山、山である。人気は全くない。途中でつららが垂れ下がっている場所があった。

うーむ。このつららを見て、先ほど林道を引き返したのは正解である、と思った。氷でタイヤをパンクする可能性もあるのだ・・・。自分の技量とその時の装備を鑑みて、引き返すのもやはりアリ、なのである。
県道16号線から国道193号線に入ろうとする頃には、こういった景色が増えてきた。日陰に入ると、ほぼ100%雪が残り、氷が張っている。注意しながら走りつつも、雪景色は美しく、こういう景色を見られるのなら、冬に走るのも悪くない、そう思った。


手堀りのトンネルを抜けると、日本の滝100選という表示のある、”大釜の滝”に出た。100選に選ばれているというのはともかく、美しい滝であった。


冬のツーリングもまたオツなもんだなあ、と思いながら走り続けると、雲早トンネルに到着。国道193号線は、ここと2キロほど手前でスーパー林道と交わっている。どちらも厳重なゲートが閉まっており、どのみちスーパー林道を全線走行するのは不可能。何より積もっている雪は道を分かりにくくしているようであり、ヘタを打てば間違いなく転落する状況であるようだった。
良かった、良かった、引き返して。凍結している場所を慎重に避けながら、トンネルをくぐり、木沢村から神山町に入ると・・・
雪、雪、雪、雪
”まぢすか?”そう叫んでしまった。うーむ。この時の衝撃は、まさに『雪国』(川端康成)の冒頭の文章を理解させるに足る。とりあえず路面全体が雪なのである。むう。どうしようか?引き返すべきか?。しかし、ここからは下りだ。上りならともかく、下りなら最悪バイクから降りて押せば良いだろう。そう判断し、ローギアのままゆっくりと下っていく。
こういう路面状況の時に心がけることは、急激な操作はしない、ということに尽きるだろう。急にハンドルは切らない、バイクもバンクさせない、ブレーキも慎重に。二足二輪でゆっくり下る。
ローギアでは、アクセルを戻したときにエンジンブレーキが強くかかり、バランスを崩しそうになることに気付き、セカンドギアを使う。スピードが出たら、半クラッチにして、慎重にフロントブレーキで速度調整をする。この繰り返しだ。
遠目には、2台の車が凍結路面を上れなくて引き返すのが見える。オペルのワゴンと、もう1台は・・分からない。大した装備もなく、冬季の山奥に来るとは尋常ではない。心臓に毛が生えているとしか思えない(僕もですが)。チェーンぐらいは必要だと思うが。この時期なら。
そんなことを考えていると、山肌から水が流れている場所に出た。当然のごとく路面の上には厚い氷が張っており、とうとうバイクから降りて押すことになった。うーむ。寒い。レッド・ホット・チリペッパーズの歌を口ずさんでみるが、暖かくならない。当然である。
10分ぐらい押して歩くと、先ほどの車のうちの1台が停まっていた。車種はトヨタのレビンで、香川ナンバーである。横を通り過ぎようとすると、助手席のおねーちゃんが、ここから上の路面状況を尋ねてくる。僕が”峠まで凍結してますよ”と言うと、おねーちゃんは”峠越えるのは無理だよ”と運転席のおにーちゃんに言った。
僕は再びバイクにまたがり、二足二輪でゆっくり下り始めた。ミラーを見ると、どうやら香川のレビンは引き返すらしい。僕はぎりぎり左に寄って道を譲った。別に急がなくてもいいのに、かのレビンはコーナーに突っ込み・・・コントロール不能に陥った。ガードレールにリア右をこつん、とヒットさせて停止。スピードはそれほどでもなかったので、惨劇を目にすることはなかったが、これはひょっとして僕のせいなんだろうか?うーむ。見た感じではボディはへこんでいないので、大したことはないだろう、と希望的観測でもって、再び前進。
低速で下りていくと、衝撃的な場面に遭遇することになった。

・・・・・・絶句。ナンバーが徳島なので、どうやら地元の車らしい。雪の上のタイヤ痕が新しいので、今日、もしくは昨日に事故を起こしたのだろうか。破損が少ないので、スピードは出ていなかったようだ。明日は我が身である。これを見た後で、さらに登坂を続けたオペルとレビンには寒気がする。自分は関係ないと思うのが、この世の常である。僕は運が良かったに過ぎないのだ。
この場所を過ぎると、雪は減ったので、普通に走れるようになった。途中でまた先ほどのレビンを見たが、ぶつけた箇所を確認しているようだった。”気の毒ですが、それは自業自得でしょう”と思いながら、僕は国道193号線から国道438号線と439号線の合流部分に向かった。
そして、相変わらず風の強い吉野川を渡り、実家に帰った。走行距離は183、7kmであった。
冬に走るのはなるべく沿岸沿いにして、山に入るときは、最低でもバイク用のチェーンと靴につけるアイゼンを用意していくべきだ、と反省しきりだった。危険を回避するのなら、初めから冬には無謀なツーリングはしないこと、それが一番であると思う。
明けて2003年。2日は、阿波の一ノ宮である大麻比古神社(おおあさひこじんじゃ)へ走り初めと初詣を兼ねて行こうとしたが、あまりの渋滞に嫌になって、その辺りの土手(未舗装)を走り回ってお茶を濁した。
3日には、神戸に帰るために淡路を通った。オフ車で初めて走った林道(TM関西版P57B4)を経由して、伊弉諾神社に今年の交通安全を祈願し、神戸に戻った。


DRで初めて走った林道 入り口はGPSがないと分かりにくい 走り回れば見つかりますが(笑)
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