最近読んだ本、その5


『クロスファイヤ』 宮部みゆき・著 

 はい、また読みました。僕は同じ本を何度でも読みます。読み捨てするつもりの手軽な本、というのももちろんいいでしょう。しかし、何度でも読みたくなる本、それがいいと思います。厳選の蔵書が500冊ぐらいあれば、無人島でも暮らせるような気がします。(ただ単に忘れっぽいのでは?というつっこみはお受けしません)
 ”出張に行く電車での時間をもたせてくれるような本、それだけの存在であれば作家として幸せである”というようなことを、どこかで宮部さん自身がおっしゃられていたと思いますが、そんなことはありませぬな。少なくとも僕にとっては。宮部さんの作品は、やはりゆったりと茶でも飲みながら、それでいて心はドキドキしながら読むというのがベストです。

 さて、この『クロスファイヤ』ですが、『鳩笛草』という短編集の中の『燔祭(はんさい)』という作品で脇役であった、青木淳子が主人公になっています。淳子は”パイロキネシス(念力放火能力)”という力を持った超能力者です。
 この”パイロキネシス”、実にすさまじい能力です。火をつけるのみならず、衝撃波で人の骨をへし折ってしまう…。そして、火をつけたが最後、対象者は”まっくろくろすけ”状態になってしまう…。

 うーむ。淳子は幼き日に、まだコントロールしきれていない能力で友人を焼き殺してしまいます。これがトラウマになったのか、自分はなんのための存在なのだろう?と思い悩み、人とは関わらなようにひっそりと暮らしていました。
 が、とある超能力組織(非合法)に目をつけられ、能力を役に立てるべき場を与えられました。それは社会の表面上では無実になり、のうのうと暮らしている犯罪者を殺すという、”天に代わっておしおきよ!”的な仕事でした。

 もちろん淳子には正義感もあるし、社会的には目立たないごく普通の女性として描かれています。新聞記事として淳子の行動は”殺戮”でしかありませんが、淳子の中では”正義”であります。ようやく認められる場が与えられた、超能力者の悲哀が実にリアルです。

 そんな矛盾に満ちた仕事、そしてそれを実行した淳子がどうなるのか?それはあなた自身が確かめてください。

『僕流その日暮らし』  坪井伸吾・著  窓社

 坪井さんの著作、第二弾です。  ささっと読んで思ったこと…破天荒です。うーむ。坪井さんのHPにある文章にも、その感じはあるのですが、本人と会って話すと…そうなの?と思っちゃいます。序文にあるように、”『世界一周ライダー』と言われる人は、わかりにくい場所で静かにエネルギーを燃やしている”のだとすれば、坪井さんもまさにそうなのでしょう。

 ただ、全編を通して感じられること…”筋が通っている”ということです。もちろんそこには苦悩があり”予定調和”のない毎日が感じられます。ですが、やはり筆者の意志が強烈に感じられて、大変元気づけられます。人間のパワーを感じます。

 所持金500円という状況で、200円を失い、200円でカップラーメンを食べ残り100円。150円の有料道路に知らないうちに乗っていて、にっちもさっちもいかない、でも友人に電話して切り抜ける。旅で出会った友人がたまたま近所だった…なんという幸運。

   ……真似できませぬ(笑)。かつて九州をまわった時、鹿児島から屋久島に渡るかどうか?の選択に迫られたとき、僕は諦めてしまいました。金銭的な問題もありましたが、何より帰ってこれなくなるかも?という恐怖がありました。
   そこを突き抜けるかどうかで、差があるんでしょうか?僕はやはり予定調和を求めてしまう、”ツーリングライダー”のようです。”旅人”にはなれそうもないですな…。

   まあ僕は僕なりの形で、バイクとツーリング楽しみたいと思います(自爆)。

『ともに彷徨(さすら)いてあり』 野田知佑・著 文藝春秋

 野田さんと、初代カヌー犬”ガク”との話です。”テーマをガクに絞って書き通したのはこの本が初めてで、そして最後である。”と、あとがきにあります。
 初代カヌー犬と書きましたが、ガクの息子であるテツとタロウは、結局カヌー犬にはなれなかったんでした。神経の太い犬でないと、カヌー犬(急流に入っても、カヌーから飛び降りたりしない)にはなれないそうです。

 この本を読むと、人間にとって幸せな暮らしとは?そして人と共に暮らす動物にとっての幸せとは?という疑問が浮かびます。
 ガクは野田さんと旅のパートナーとして、その幸せを享受した幸運な犬でした。犬というよりは、一個の人格を持った存在であったように思えます。
 僕の実家にも犬がいますが、うーむ…駄犬ですな。今の日本で、犬が自由に行動できる場所は限られています。そういう意味では、野良犬のほうがいくらか幸せであるのかもしれません…。

   宮崎県の高千穂にあるYHでは、犬を飼っていましたが、完全な”放し飼い”でした。雨であろうが、晴れであろうが自由に散歩できます。彼は、1日目はほとんど僕を相手にしてくれませんでしたが、2日目にもなると、一応僕のことを認めてくれたのか、一緒に泥だらけになって遊びました。
 3日目の朝、バイクで出発する時には、吠えながらお見送りしてくれました(バイクのエンジン音が嫌いなだけ?)。人との出会いというのも貴重でしたが、こうした”人格(いや犬格?)”を持った犬と知り合えたのも、かなり貴重なことだと思いました。彼が生きている間に、もう一度一緒に遊びたいなあ。

 旅で出会う犬は、非常に興味深い存在なのでした…。

高千穂で会った犬、メイ(オス犬なんですが…)男前です


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