○追記

●恭子の自由研究「世界トイレットペーパー事情」報告

今を去ること十数年、世が平成となった3月、恭子は父と二人初めての海外旅行に出たの

だった。「香港・マカオ4日間、7万なんぼ」という、当時としては破格のツアーだったと

記憶する。思い返すと、飲みたい水を3日間、ガマンにガマンを重ね、最終日の朝「ホテルの

冷蔵庫は高いから、1本だけだぞ。」という父を拝み倒して飲んだときの不快感。(当時はまだ

無臭のペットボトルなぞなかった。その上、恭子は苦手な英語表記が理解できず、ガス入り

トニックウォーターを開けてしまったのだ。)あれぞまさしく珍道中であった。お土産好きの

恭子が、金がかからず人と交渉せず手にはいる珍しいモノ、として目をつけたのが、行きの

機内の座席ポケットにあった、エアシックバッグ。(ヘンな奴だと我ながら思うが、大学時代に

やってたキャンプリーダーとして必需品で、各自が使いやすさを工夫していたので、とても

身近だったのだ。)香港からマカオに渡る、高速船の座席ポケットにも発見し、喜んで手に

取ったら、それは中身こそないが、使いかけのものだった。瞬時に気分が悪くなり、トイレに

行くと、目に飛び込んできたのは鮮やかなショッキングピンクのトイレットペーパー。おかげで

一気に酔いが醒めたのだったか座り込んだのだったかは、今はもう忘れたが、これが恭子

をして「世界にはいろいろなトイレットペーパーがあるんだ!!」と気づかせ、行く先で必ずトイレに

立ち寄るようになった濫觴である。余談だが、エチケット袋をお土産にするのは即刻中止した。

(悪夢がよみがえる。)そして、数十p程トイレットペーパーを切り取っていただいてくるのだが、

彼らは非常にデリケートなので、帰国した頃には、他の有料土産に押しつぶされて、見る影も

なかったりするので、最近は“見るだけ”にしている。さらに余談だが、先日インターネットで、

同じテーマできちんと現物も採集、展示している研究者(?)を発見した。私のは、まるっきりの

お遊びである。

1.シンガポール チャンギ国際空港

 トイレの数は、あまり多くない。ロビーに面しているトイレが少なく、店の横を入った奥とか、

待合いスペースから広い通路を横切って向こう側とか、階段を降りていった人気のないところ

(ここは少し怖かった。声を出しても、誰も来てくれないだろう。)とかなので、あまりトイレが

ない印象なのかもしれない。 個室は、洋式3に対し、和式(というか中国式の金隠しのない

タイプ)が1、ぐらいずつあり、和式は個室に入ると40p位の段の上にしつらえられている

ので、西洋系の人たちはかなり困っていた。(扉の下方が開いているせいだが、きっと

使い方の見当がつかないだろう。)トイレットペーパーは、白のダブル、柔らかい質感もGood。

幅も日本のモノと同じくらいだった。 恐れていたトイレおばさんはいない。清掃の人が頻繁に

回っているようで、一瞬“いた!”と思ったが、客には全く意識を向けない。

2.ドバイ空港  

本編の方に詳しく書いてしまったので、それ以外のことでは、まず個室の設備。個室は

たて(奥行き)が深く、慶祐がシャワー室と間違ったのもうなずける。(つぶれてしまったが)

ワイルドブルーヨコハマのシャワー室と雰囲気が似ていたが、タオルをかけるフックはない。

タオルかけがないのは当たり前だが、荷物をかけたり置いたりするものが何もなくて、

広い個室で下は濡れているし、困ってしまった。 床拭きオバサンのために、個室の3方の

足元は広く開いている。床が濡れていることについては、彼の国の女性たちが身につけて

いる長い長いスカートにも、とても不都合がある様子で、控えめにたくしあげて入っていた。

トイレットペーパーは、バージンパルプだろうか。(本当にお金持ちの国だ。)真っ白のダブル

で、ミシン目もきちんと入っており、ちゃんとそのミシン目に沿って切れた。 男女別を表す

絵表示(色つき)がすぐ横に大きく出ていて、親切だ。

3.ケニア ジョモ・ケニヤッタ国際空港

 西洋人が日本人をイメージするとき「ちょんまげに刀」を何の疑いもなく思い浮かべるように、

私のイメージするアフリカは、現地の人がきいたらきっとあきれるようなものだった。しかし、

ここはさすがに外国の資本援助をたっぷり生かして整えられただけあって、きちんとした

清潔な空港だった。トイレの数は多くはないが、十分あり、ここの男女表示も髪をきれいに

編み上げた男女が、浮き出すような美しいデザインに仕上げられている。しかし、これが

単色で異邦人にはわかりづらく、(男性の髪もセミロングだ。)その上万国共通男女マークの

絵がないので、英語の表記(これもうんと上の方とか、見づらいところが多かった。)を確認

しないと危険だ。さすがに、金ぴかのドバイから来ると、まるで急に山奥の分校に転校して

きたようなうら寂しさはあるが、トイレの設備が例えば破損していたり、「使用禁止」の札が

下がっていたり、というところは一ヶ所もなく、もちろん落書きなどもない。汚れていることも

なかった。 トイレットペーパーは、紙質は少し落ちるが、ここもダブル。幅の狭いものだ。

ひとつのロールが小さいように思ったが、あとでホテルのロールの包装紙を見て納得。

ロールは長さでなく、200sheetsと書かれていた。1sheetも小さく、10p程だろうか。

単純計算で20m、日本の一般的ダブルの2/3しかない。

4.ケニア ウィルソン空港

 カウンター前が待合室になっており、その奥にもう一つ待合室がある。トイレはさらにその

奥の、一段下がったところを2、3回曲がってようやく辿り着く感じ。何といえばいいのか、

観光地の、一階が土産物屋で二階が食堂、みたいなドライブインの、店を抜けていった奥の

トイレ、といった感じ。一人が行くのを見ると、“私も行っとこうかしら?”となるのはドイツ人

にも共通らしく、恭子が行ったときは無人だったが、個室が二、三しかないので、行列に

なってしまった。 そして、ここで素晴らしいエメラルドグリーンのトイレットペーパーに出会って

しまった! 日本で、瀬戸物を買うとくるんでくれる、あの色だ。私に旅のこのテーマを思い

出させてくれた彼は、柔らかさも十分、そしてやはりダブル。感激しながら洗面所で手を洗うが、

石けん入れはあるのに中身が入っていなかった。

5.ムパタ・サファリ・クラブ

 これは、ムパタについて、のところに書いてしまったので、その追加だ。 私が探せなかった

だけかもしれないが、ゲストルーム内にはトイレが2つもあるのに、パブリックスペースには

トイレがなかった。一度、食後に部屋に戻ると、ハウスキーパーさんが在室中だったことが

あった。敷地内を散歩して15分くらい時間をつぶしたが、緊急時だったら辛かろう。(別に、

入ればいいのだが…。)最近はそうでもないが、慶祐は旅行に行くと、朝食後用を済ませて

から部屋に戻る。外の音を意識するとひっこんでしまう、というデリケートな性格ゆえだが、

すべての音が聞こえる客室(息を詰める音も聞こえた。別に、聞いていた訳じゃないけどサ。

ゴメン。)の構造には、重ね重ね賛成できないなぁ。 トイレットペーパーは、前述の通り

小さいので、あっという間になくなってしまう。 ところで、ここの排水はどうなっているのだ

ろうか。ダブルはシングルより一回あたりの使用量がうんと多い。おそらく浄化槽をつかって

いるのだろうが、設備の寿命のためにも、環境への優しさのためにも、できることがいろいろ

ありそうだ。そしてそれをウリにすればいいのだ。「環境」とか「エコ」とかいうとクサくなるので、

「ワイルドライフ」。私たちは自家発電の不自由さを、十二分に楽しんだ。

6.ブッシュトイレ

 これも本編に記したとおり。最近、例えば尾瀬や山など、自然の中に本来そこにいない

「人間」が大量に残していく足跡じゃないものの問題が声高に論じられている。

ブッシュトイレも、本来そこにいない人間のものなので、マズいのではなか?と

一瞬思ったが、実際サバンナに降り立つと、そこら中に人間じゃないものの残したものが、

足の踏み場もないほどあるので、全然平気なんだ、と考えが変わった。しかし、これも

よくよくかんがえてみると、野生動物は予防注射をしているわけではないので、

もし人間が病原菌を持ち込んだりしたら、えらいことになる。

犬のジステンパーでリカオンがほとんどいなくなってしまったことは加藤さんが話していた

とおりだし、多くの草食獣はウシ科なので、それこそ今流行りの狂牛病でも持ち込んで

しまったら(これは菌ではないが、私たちが病気のモト入りのものを置いてきたところが

たまたま彼らの大好きな草の上かもしれないのだ。)本当に大変なことだ。家畜には、

結構危険な伝染病がある。逆に、人類がまだ未だ知らない病気が、彼らとは友好関係に

あるかもしれない。何かにビックリしてしりもちをついて、刺さったとげを抜いてもらうために

お医者でお尻を出す、というのもできれば避けたい。 現実の話をすれば、皆さんから

隠れながらズボンを下ろして、ふいて、ズボンをはいて、何くわぬ顔で現れる、というのは

やってみるとかなり手間もかかるし、難しい。(立ち上がると頭が出たり、下ばえが結構背が

高くてお尻を撫でたり、中腰のコントロールが必要!音に気を使ったりし始めると、

きりがない。)結論、ブッシュトイレは最後の手段。イイ思い出だけどね…。 サファリカーから

見ると、誰かが使った紙を丸めて捨てたように見える、その名もティッシュペーパーフラワーは、

愛らしい白い花が3、4個まとまって咲いているものだ。現地の人がトイレットペーパーとして

使う、柔らかい手頃な葉があるのだが、試していないのでコメントできない。

7.機内のトイレ

 機内には、いろいろな洗面用具が揃えてある。(特に国際線は)しかし、これらは搭乗したら

早いうちでないと、お目にかかれないことが多い。  今回は常に睡魔との戦いで、あまり

チェックしようという気にならなかったので、ストックボックスにものが少ないのは、出遅れて

しまったからか最初からあまりなかったのかはわからない。 エミレーツのエアシックバッグは

(やはり原点に返ってしまった!)シートポケットには用意されておらず、トイレ内にあった。

女性用品はその国を端的に表すようなもののような気がする。エミレーツのは、白色の厚地の

ビニール(30×7p位)に、折りたたまず個包装されていて入っていた。出していないので

実物の詳細はわからないが、日本の親切設計のものと比べたら、やはりかなりやぼったい

感じだろう。タテとヨコの比もかなり違うようだ。 ANAの方は、日本の有名ブランドが1パック

用意してあったようだが、中身はすべて持ち去られていて、空だった。 慶祐が、離着陸時には

トイレの表示がすべて「ocupied」になることを発見。気をつけて見ていたら、トイレの表示部分

のプレートを斜めにスライドするとカギを操作できる仕組みになっており、クルーが使用できない

ようにカギをかけて歩いていた。

8.成田空港

 トイレの数は多いが、トイレットペーパの質としていちばんレベルの低かったのは、成田。

トイレットペーパーのあり方としては大いに賛成するが、いかにも公共機関然とした、再生紙

シングルだ。何年か前は、巨大なロールで、引き出すのにものすごい力のいるものが使われて

いたように記憶するが、気のせいか?それにしても、落書きが多くてはずかしい。(お掃除の

方が一生懸命消した跡がある。内容も内容だし、漢字かな混じり文では、何人の犯行かが

丸見えである。)

まとめ

 トイレ観察のメモを取るのを忘れてしまったので、例えばシートペーパーがあったのはどこと

どこだったか、とか、どこかの空港(構造上、ケニアのいずれかである)では、日本のような

足元の開いていない扉だったが、それがどこだったか、など思い出せないことが沢山

出てきてしまった。 それにしても、香港のオバサン付きトイレ、タヒチの外鍵付きトイレ、

韓国の階段付きトイレ、そしてドバイのシャワー付きトイレ・・・と、トイレの文化はそれだけで

専門の研究者がいるほどおもしろい。また海外に出るチャンスがあったら、今度はメモを持って

入ろう。いやぁ、トイレって本当にいいものですね。

  

●慶祐による補足

1.シンガポール チャンギ国際空港

 シートペーパーがあったのは、ここ。ただし、場所は個室でなく、トイレの入口のドアを

開けるといきなり衝立(壁)になっており、その左手がL字に洗面所になって小用トイレに

つながっている。その入口の衝立に、何か字が書いてあり、そこにシートペーパーがあった。

これに気付いて持っていかないと個室のなかには、ない。

2.ドバイ空港

 空港内のトイレの場所によって、個室の広さが違った。利用者の多いところは個室も広く、

少ないところは小さめだった。 ここで驚いたのは、広い方の個室で2m四方程もあるのが

あり、他に空いていなかったので入ってみた。個室のドアを開けると、床が10p位低くなって

おり、足を置く40p位の台が2つ、そこにある。そこに足を乗せてしゃがむと、ちょうどお尻の

下に深い穴が空いている、という仕組みで、シャワーとトイレットペーパーが備えられているのは

同じだが、フラッシュ用の水を流すレバーが存在しないので、非常に困ってしまった。

よく見ると、穴の中は田舎のポットントイレと同じ状態であった。足台以外は濡れており、

金隠しもつかまるところもなく、壁も遠く、しかも壁もびしょぬれなので、足首の固い人には

非常に危険だ。 個室の横は工事中でロープを張った個室が3つ並んでいたので、もしかしたら

このトイレも工事中だったのか???

 トイレというのは、身近に外国を感じられる素晴らしい場所であることがわかった。しかし、

隣の豪快な音をききながら、まわりに人の気配がすると恥ずかしがってすぐ引っ込んじゃう

タチなので、空港毎にトイレホッピングしながら早く目的地に着くことを祈るのであった。