○9月2日(日)

 朝がやってきた。慶祐から電話が来ない。12時半のNexを予約してあったので、

11時には家を出ないといけない。少しやきもきしたが、無事帰宅、シャワーを浴び、

11:06モノレール桜街道駅を出発。中央線も今日は遅れていない。  新宿駅で、恭子

「小田原名物小鰺の押し寿司」を発見し、1,200円で購入。Nexに乗り込むなりバクバク食べ、

東京駅着前に2人とも爆睡。みんなに、「道中長いから、できればシンガポールまで(ANA、

22:15着)起きてて、あと言葉のわからない所は寝ていけばいい」と言われていたのに、

車掌さんが検札に来たの(だろう)さえ知らなかった。

 ツアーのパンフレットに「乗り継ぎはお客様ご自身でやっていただきます」という一文が

あったが、「アフリカくんだりへ行くんだから、きっと英語ペラペラの人が一行の中にいる

だろう。その人の顔を覚えて、ついていけばいいサ。」と、申し込みの時は思っていた。しかし、

出発間近に「ハローお出かけダイヤル」に訊いたら、「成田発はお客様お一組です。

関空発では、同日程ですが周遊コースのお客様が数組いらっしゃいますが」。えーっ、大変だ。

慶祐はほとんど英語話さないし(閑話休題:先日恭子の英会話のLissa先生ご夫妻と

ドライブに行ったとき、"I'm hungry."と言った。結婚5年目、初めて聞いた慶祐の単語じゃない

英語だった。)恭子は英語が嫌いで大学ではドイツ語をとったほどだ。おまけに

トランジット(給油のための中継)の経験はあるが、自分で席をリクエストするトランスポート

(全く違う機への乗り継ぎ)は初めて。事前にLissaに“ダンナと一緒の席にして”という言い方を

教えてもらい、メモを仕込んではあったが、成田の係の人には(2人だけのツアーだから

ヒマだろうし)じっくり教えてもらおう、と思って、指定のZカウンターへ。ところが、これが

見込み違いで、シンガポールへ、またはそこを経由してバリへ行くツアー客がゴマンとおり、

カウンターは大混雑。ツアーリストには私たちもシンガポールへ向かう客の一組として

載っているだけで、「ハイ、これがシンガポールから先と、帰りのキップですからなくさないで

くださいネ、ではお気を付けてー。」と係のお姉さんは忙しく、イロイロ訊ける状態ではない。

クレームタッグをもらうときに「スイマセン、この重さわかりますか?」と、昨晩6時間かけた

大作の計量だけしてもらう。「ハードケースが15.1sですネー、両方で30s。」慶祐に向け、

エバっている間に、係のお姉さんは次の人へ…。

何も訊けなかった…。

     

 さらに、三井住友銀行の帰国ゲート脇にある両替所を探す。これは、恭子が旧姓でサインをした

旧住友銀行発行の米j建てT/Cを持っており、パスポートが変わって、サインも変わって

しまったので、交換をしてもらうためだった。(これだけでもヤヤこしい。)

なぜこの日にここなのかというと、恭子はまず、会社の近くにある旧さくら銀行で交換してほしいと

申し出たのだが、「ウチはトーマスクックしか扱っていませんので…」と断られた。それでは、と

旧住友銀行に行くと、「交換ということはできないんですよ。買い取って、また販売という形に

なりますね。」と言い、その差額として現金で5,000円程かかるという。アホらしいので、

「では、米jの現金で結構です。」というと、「国内で米j建てT/Cを米j現金に、というのは

できません。」とのこと。そんなアホな。「では、ちょっとおたずねしますが、T/Cを紛失して

再発行してもらう場合の手数料はいくらかかるんですか?」

しばらく調べ、上司とも相談して「無料です。」と言う。では、そのような扱いにしてくださいというと、

「発行会社の扱いになりますので、直接そちらへ連絡してください。」仕事に行く途中だったので、

これ以上時間が無く、仕事の後言われたところへ電話をすると、「そんなことしなくても、

交換は無料ですよ。銀行のミスです。」と言うではないか。すでに夕方だし、週末だし、

ということで、この人から成田空港の両替所で交換してもらえるよう話を通してもらったのだが、

その話をつけた先が「帰国ゲート」階の窓口だったのだ。しかし、この窓口の人には良く話が

通じていて、「ご迷惑をおかけしました。」と、丁寧な応対をしていただいた。

     

 成田流浪の旅は、まだ続く。 毎年、ただ1万円払うばかりの、クレジットカードの

ゴールドメンバー。何が何でもメンバーラウンジへ行かなくては、とラウンジの場所を探して

右往左往。ようやくクレジット会社のサービスカウンターをみつけ、ラウンジの場所を聞くが、

「只今連絡が参りまして、満員でございます。とりあえず、海外でカードを使うとメリットになる

キャンペーン中ですので、ご登録だけなさいませんか?」と言われ、全く目的外の登録を

すると、パンチ一発で急速冷却、というパックをくれた。そして、もらいものに弱い慶祐、

早速自分のカードを出してカウンターへ。冷却パックを2つゲットして、ダメでもともと、と

駐車場棟にあるメンバーラウンジへ行くと、幸い席は空いていた。

ゆっくりお弁当でも、と思ったが、四方の壁には「お食事はご遠慮ください」の貼り紙が

してある。セルフサービスをいいことに、慶祐、ビールを2本あける。ただ座っているだけでも、

人が行き来してうるさいところよりも、やわらかいソファと静かな空間のほうがずっと良い。

場所もわかったし、今度からは直行しよう。(注:数ヶ月後の会誌に“ラウンジ移転の

お知らせ”が出ていた。次回もジプシーだ。)

     

 時間になり、出国ゲートへ。やっぱりちょっと緊張する金属探知ゲート。“日本人のオヤジ”の

代表のようなオジさんが、係員に止められている。「もう一度お願いします。」「なんでオレだけ

何度も何度も…」ピンポ〜ン「おいおい、いい加減にしろよな。壊れてんじゃねーのか?」

さらに調べていた係員、「お客様、果物ナイフをお持ちではないですか?」「おう、持ってるよ。」

ここまで聞いて、私たちは先へ進んだ。免税店で、慶祐「何でこんなに安いの!?」と、お酒選びに

余念なし。

 飛行機が飛び立つと、関東平野は稲刈りの真っ盛り。黄金色の美しい大小さまざまの長方形が

びっしりと並ぶ。一枚一枚の大きさはいろいろだが、すべて同じ形の模様が入って いるのが

おもしろい。コンバインの跡か? 

 前の座席は、一人旅×3人で、窓側からオジさん(飛行機に不慣れ)、若い女性、日本語の

堪能な白人男性。オジさんは、読書灯を点けてみたり、スチュワーデスさんを何度も呼んだり。

そのうちに、眠ってしまった女性越しに、白人男性に話しかける。(着陸後も、「やー、

あんたのような人と会えて良かった。シンガポールのホテルはどこ?また会いましょう。」

とやっていた。)

     

 「当機は間もなくシンガポール・チャンギ空港に…」の放送で目を覚ます。恭子、通りかかった

スチュワーデスさんに「乗り継ぎのことを教えてください。」と声をかけると、乗り継ぎ便を聞いて、

「少しお待ちください。」といってギャレーに戻り、空港のパンフレットを持って「同じCカウンター

ですから、ここへ行って…」と親切に教えてくれた。これに力づけられて、Cカウンターを

Connecting Counterの矢印に従うと、ロープで封鎖された待合室に辿り着いた。ロープの脇

には、アジア人独特のむすっとしたおばさんが身を半分乗り出した小さなブースがあるので、

"Excuse me!" と近寄り、トランスポートの手続きをしたいんだけど、と言うと、ロープを寄せて

入れ”という。中のカウンターのお兄さんにも、自分でも何だかよくわからない英語の最後に

"please"をつけ、チケットとパスポートを添えて出すと、ナイロビまでのチェックインを一気にして

くれた。隣のカウンターに、全く英語のできないらしい日本人の女性2人組が来て、係員が

英語で話しかけても2人で顔を見合わせて「?」と確認しあうだけ。係員が単語だけになる。

"passport" "name?"2人の対応は変わらないので、別の係の人がカウンターから出てきて

手取り足取りやっているのを見て、ちょっと余裕の出てきた恭子、思い出したように

ダンナの隣の席にしてくれ”と言ってみた。

"Yes, all right!" やったー、通じた!曲がりなりにも週一度でも英語にふれていると相手の

言っていることも聞こえるし、緊張しないで対応できるのがスゴいと思った。"Thank you!"

"Good trip!" と、サッときびすを返す、スマート!!(こんな事に感激しているんだから、

我ながらカワイイもんだ。)

      

 乗り継ぎの時間がすごく長い。免税店を覗くが、すでに深夜なので閉店のところもあるし、

家電を見たって仕方がない。日本語版の空港案内図を手に入れ、外の空気が吸えるところも

見つけるが、何たって深夜である。夜勤明けである。慶祐はすでに便秘、機内では遠慮して

オナラができないのが原因とか。ずいぶんトイレでがんばっている。空港内のところどころに

テレビがあり、テレビを向いた柔らかい椅子にはスピーカーが仕込まれている。セリフものは

わからないので、カバの番組をやっているテレビの前に陣取る。  冷たいものが飲みたいと

いうので、帰りに入国もすることだし、とりあえず20米jを両替する。1米j=1.712Sjで、

34.24Sjになった。慶祐、勇気を出して10Sj紙幣を持ち、カフェテリアへ。ぐるっと見回し、

スーパードライと恭子に小さい水のペットを指差して紙幣を出すと、“足りない”と言われる。

お会計は12Sj、日本円換算855円!! ダンナさん、スーパードライはここでは輸入品なん

ですよ。おならづまりの慶祐、メゲながらも薬を飲み、「これで安心!」と自分に言い聞かせて

いる。何度もトイレを探し、かわいそう。オナラがまんしなくていいのに。

     

 ようやく乗り継ぎ便の待合室ゲートが開いたので、中へ入ると、急に白い布をかぶった

男女が増える。さすが、UAE(アラブ首長国連邦)のナショナル・フラッグ・キャリアだ。

エミレーツ航空は、トーシローの我々は初めて聞く航空会社だったが、世界の航空会社の

好感度ランキングにいつも上位入賞しているとのことで、クルーの感じも良いし、エコノミー

クラスにも全席にモニターが配置されているなど、ハード面でもよく整っている。ただ、

客の方が飛行機に慣れていない人が多いのか、トイレに行くと手洗いの水が排水されて

いなかったり、手を拭いたペーパータオルが“ご自由にお使いください”の備品がしまわれて

いる棚に5つも6つもねじ込んであったりしたが、これはアラビア語(?)と英語の表示が

読めないからだろう…。(外国人が日本の飛行機に乗ったらおんなじ気持ちになるんだろう

なぁ。)  超ネムの恭子は、即刻熟睡。シートの頭の部分のクッションは、3つのパーツで

できていて、頭を左右から包み込むように固定してくれて、とても良い。しかし、ISLEなので、

通路を人が通るたびに背もたれにつかまられて、目を覚ましてしまう。慶祐は、(体型を

見てか?)眠っているのに無理矢理起こされて、機内食全食ゲット。

 エミレーツ航空のクルーは、国際色豊か。地上係員は現地採用のようだが、クルーは

白人系(多い)、ミックス、カラードと本当にさまざま。ただし、聞いた話だと、アラブ人だけは

いないという。なぜなら、アラブ人は金持ちなので、労働はしないのだとか。そんな中で、

行きのシンガポール−ドバイの機内では、4人いるという日本人スチュワーデスの一人、

マリコさんに当たった。はじめは気づかなかったが、突然「お飲物、紅茶かコーヒーは

いかがですか?」と声をかけられ、「あ〜、日本の人だぁ〜」と、早くも万感胸に迫り来る

二人であった。  モニターには、高度、速度、目的地までの時間等が漸次表示されている。

その中で、面白いと思ったのは、(アラビア語の表示なので推測だが)聖地の方向が矢印で

示されること。空港にも、ちゃんとお祈り用のスペースと、そこまでの案内表示矢印があったし、

機内も非常口の周囲が広いスペースになっており、通行の邪魔にならずに祈れる工夫が

されていた。しかし、聖地は私たちの前後左右ではなく、下にあるのだと思うが…。食事も、

先に白いシーツ姿の人(失礼!)には、クルーが先にハラルの要否を確認し、(「搭乗前に

ご予約ください」でないところが、さすが。)ハラルの人に先に配ってから一般のワゴンサービス

に移る、という順だった。

 到着予定まであと2時間、というくらいになったところで、恭子、急に専売特許のすわりくらみ

(座っているのに立ちくらみ)が来た。緊張はしていないつもりでも、夕べほとんど寝ていないのと、

環境の変化に身体がサインを出しているのだ。こういう時は、トイレに直行…するが、満室。

青い顔をしていたのだろう、たまたまそこにいたマリコさんが気づいて、「どうしました? 

大丈夫ですか?」と声をかけてくれた。「エアシックバッグをください。」と言うと、急いで探して

くれるが、「すみません。ここにないので、とりあえずこれを。」と、免税品販売用の手提げ袋を

くれ、さらに「座った方が楽ですよ。」と、クルーの離発着用のシートを出してくれた。

トイレが空くと、さらに歯磨きのセットを手渡してくれた。やはり、具合の悪い時に日本語で

対応してもらえるのはありがたい。近くでずっと見守り、落ち着いた恭子に、「成田から

ですか?結構遠いですからね。着いたらゆっくりなさってください。」と言葉をかけてくださり、

「ありがとうございます。次まで3時間くらいあるので。」と恭子が答えると、「えっ、ナイロビ

までですか!でも、この飛行機が少し早く着きそうなので、良かったですね。

お気をつけて。」と言ってくださった。

     

 マリコさんの言葉どおり、tail windで20分の早着。乗客があらかた降りたところで

後方で緊張の解けたスチュワーデスさんに、“写真をご一緒にお願いできませんか?”と

声をかけた。エミレーツ航空は、女性の制服がとても素敵で、砂漠を彷彿させるベージュの

スーツ(ボトムはスラックスの人が多いが、タイトスカートもある。地上では、マタニティの

ジャンパースカートも見た。)に真っ赤な帽子、その帽子からはイスラム風のオフホワイトの

長いヴェールが垂れ下がっており、首を一周して胸元に優美なドレープを形作っている、

というスタイル。こんなに素敵なのに、あまり「写真を」という人がいないのか、怪訝な顔を

されたので、“制服がとてもキュートなので、是非モデルになって記念写真を撮らせて

ください。”と言うと、急に照れて、キャーと大きな声で周りの男性クルーの陰に逃げ込み、

他のスチュワーデス仲間に押し出されたりしてちょっとした騒ぎになってしまい、聞きつけた

マリコさんが「どうしました!?」とすっとんで来てしまった。男性(こちらは地味な制服なので、

写真はパス。)にシャッターを押してもらい、お礼を言うと、モデルになってくれた人は仲間に

こづかれていた。他の客が誰もいなくなってしまったので、急いで出口へ向かったが、

マリコさんとも写真を撮らせてもらいたかった。残念。