| ○9月6日(木) モーニングコール、今日は慶祐が出る。 今朝のサファリは、色白の姉妹と4人で、朝夕の 2回分をまとめて半日のロングドライブを加藤さんが組んでくれた。遠出するというので、 途中でマサイの土産物屋に寄れるかもしれないと思い、(慶祐はロッジのキーホルダーに なっているマサイのライオンクラブが気に入って、どうしてもお土産にほしいと言っていた。) セーフティーボックスを開けてもらおうと思ったが、早朝は係がいないので無理だと断られて しまった。 早速シマウマ公園でシマウマが一頭だけ、こちらを伺うように道端に立っている。 ウィリアム、“信号待ち”とギャグを一発。今日はよく象に遇う。いくつものグループを見ながら 進む。“どれがリーダー?”と訊くと、ウィリアムは群れを見渡して、すぐ指差す。リーダーは 大きくて、ファイティングのため牙が欠けていたり、耳に傷が付いていたりするのですぐ わかるそうだ。ジャクションフランコリン、遠くにキリン、そして初めてバッファローの大群に 遇う。背中にはイグレット(アマサギ)を載せているグループと、ウシツツキを乗せている グループがくっきり分かれている。(鳥の方が分かれて留まっている、といった方が正確 だろう。)さらに、ハーテビースト(コンゴニ)の群れ、遠いのでこちらを向くと、黒い顔にYを 二つ重ねたような角と耳で、沢山の円マークが並んでいるように見える。両脇にシマウマの 大群とトピを見ながら進むと、行く手に大きめの鳥が道の真ん中にいる。 “クラウンプルヴァー(オオカンゲリ)”と言うなりウィリアムは車を降りるので、全員が 捕まえてきて見せてくれるのかと勘違いする。(四駆にしに行っただけ。)鳥は、赤い脚を 見せながら飛んで逃げてしまった。今日は左手にバルーンサファリの気球を見ながらの サファリ。今朝は割と風があるので、どうだろうか。色白姉妹は、昨日はバルーンだったので いなかったのだそうだ。話を聞くと、やはり着陸が難しいらしく、初日に首を痛くしていた人は、 バルーン帰りで、着陸の時に手を離してしまったのだという。私たちは、飛行機から見た トムソンガゼルで、バルーンサファリには興味を持っていなかったが、彼女たちはオススメだと 言っていた。 気球と別れ、逃げないトムソンガゼルの群れを見、初めてヌー(2頭だけ)を 見る。一頭は駈け歩で逃げていってしまった。ヌーの顔が、沢田亜矢子の離婚した夫に 似ている、という話で盛り上がる。 やがて、側方にセクレタリーバードの優美な姿、思わず ウィリアムに大きな声をかけて停まってもらう。木の上に二羽のハゲワシがいるところでも 停まってもらい、一羽は胸が白く、もう一羽は全体にグレーで小型なので、巣立ちした親子か と思って訊くが、“若い鳥だが、チャイルドではない。”という。いくつか訊き方を変えて、 やっと違う種類のハゲワシがたまたま同じ木に留まっている、ということがわかった。 ウィリアムは、きっと≪なんでこの人は鳥が若いか、エサをどうするか、とか訊くんだろう。 鳥の研究家か?≫と思ったに違いない。(やたらと鳥で停めさせるし…。)道が急に悪くなる ところがあり、そのたびにウィリアムが「つかまっとれ〜、Please!」と言うので、みんな大笑い。 脚の長いシギのような大きな鳥が恭子の側方から急に飛び立っていくが、恭子、とりあえず 黙っておく。 今日は時間が長いので、何を見たいかと訊かれる。ヒョウは、昨日に引き続き、 笑って却下される。(ウィリアムですら、1ヶ月以上見ていないとのこと。)すぐそっちが タンザニアとの国境と言われ、皆すぐ見えるようなつもりで顔を向けるが、わかるはずもない。 どうやって国境がわかるのか、訊くと、“石がある”という。せっかくなので、国境へ行って みたいとお願いし、国境で朝食ということに決まるが、どうやらアフリカ式の“すぐそこ” だったらしく、それからさらに30分は走ることになった。 途中、トピやシマウマの大平原、遠景でエランド3頭(美しいねじり角だが、下半身はモロに 牛だ。)、4頭のオスのいるインパラのハーレムなど、草丈が短いのでとても見やすい。 トピの群れが、車を見て大慌てで走っていくのを、ウィリアム“Morning jogging topi.”という。 国境に近づくと、石がごろごろしだした。このあたり、ということなのかなぁ、と思っていると、 やがて1mほどの高さの、国境を示す石(実はコンクリート製)の所に来た。傍らのアカシアに、 カスタムのハゲワシが留まっている!(このジョークは、ウィリアムも笑ってくれた。)前方には、 写真で見るまんまのヌーの大群が横一線に視界を占める。今年は、セレンゲティーで草が 豊富だったので、マサイマラには来なかったと聞いていたし、走ってきたちょうど前方なので、 あっちがタンザニアかと思ったら、あにはからんや、石の右側がケニアで、左側がタンザニア とのこと。ボーダーの両側1qは、どちらの国にも入らない、という取り決めになっていると 教えてくれた。 車を降り、もう一台後からやってきたジェイムスの客5人とも合流、“トイレに 行きたい人は?”と女性全員、ジェイムスの車でタンザニアにあるブッシュへ連れて行って もらう。先にジェイムスが、ブッシュに動物が潜んでいないか確認し、“OK。誰か、運転したい 人は?”と訊くので、色白妹が大喜び。みんな散らばってブッシュに入り、良さそうな場所を 探す。そこらじゅうに先客のフンがある。乾燥しているので、臭いや“ぐちゃ”はない。 用を済ませて車に戻ると、ジェイムスは気を利かせて先にもう戻って、食事の支度をしており、 こっちを向いて両手でハンドルを動かす仕草をしてみせる。突然尻込みする女性陣。「エンジン かかってないじゃ〜ん!」「一番右がブレーキだからぁ…」「え〜、運転手さん来てくれるよォー。」 勇気のある一人が運転席に座り、「どーするんですかぁ?」と訊くので、恭子が指導(!) 「ニュートラルなってる。」と言うので、「真ん中のブレーキ踏んで、エンジンかけて。」というと、 いきなりガックンと前に進んだ。一斉に逃げる女性陣、ジェイムスが走ってくる。しょうがないと 恭子、十数年ぶりに運転席へ。ジェイムスが隣に乗り、“シート前に出して。”と言うので、 いよいよ恭子が運転することになった!! ところが、残りの全員、勇気があるというか、 知らぬが仏というか、そそくさと車に乗り込んだ。恭子、意を決して発進、意外とスムーズに ギアは2から3へ。するとジェイムス、“ポレポレ〜、ポレポレ〜”。やっぱりプロは怖さが わかるらしい。200mの国境越え決死行は無事終了、万雷の拍手の中を得意になって 降りる恭子であったが、慶祐は何気なく車にカメラを向けると、運転席に見慣れた顔がある ので、ビックリしてシャッターが切れなかったという。証拠写真がなくて残念に思う恭子だった。
朝食のボックスは、ハムとチーズのサンドイッチにクロワッサンサンド、デニッシュ、ゆで卵、 フランクフルト、りんご丸ごと1個にパックのジュースと盛りだくさん。さらにポットにお湯と ホットミルクを持ってきており、インスタントのコーヒーとティーバッグの紅茶が飲めるように なっていた。ここでおもしろい事件が発生。ポットを持ったウィリアムが、“カワモトー、 カワモトー!?”と一同を見回すので、日本人は「川本さんを捜しているんだ、オレじゃない けど。」と思って、無言でお互いの顔を見る。早く名乗り出なさい、川本さん。しかし、 ウィリアムは別に人を捜していたのではなく、“カハワ、モト(ホットコーヒー)”を 勧めてくれていたのだ。気づいた恭子が説明すると、一同納得して大笑いになった。 食事にホスト側の人(特にローカルのスタッフ)が一緒というのはパックツアーでは あまりないことなので、みんなで一緒の食事ができるというのは本当にうれしいし楽しいが、 慶祐はそこら中に散らばるフンが気になって落ちつかないと言う。食後は、一人の男性が ジェイムスに運転させてくれ、と頼んで“一周だけね”と言われているので、慶祐のお尻を 押すが、「イヤだ。」とヘンなところで意地を張る。色白妹が「一生後悔しますよ〜。」と 言うので、運転してみたいが自信がないという彼女と二人で行っておいで、と送り出し、 めでたく慶祐も念願のサファリドライブが叶った。彼女に感謝!
食事も終わり、出発するとウィリアム、気分がよいのかジャンボブアナの歌をうたいだした。 色白姉妹と恭子で“ハクナマタタ〜”だけ合唱。石ころの原を抜けると、ジャッカル、 蟻塚ごとに一頭ずつ佇むトピ、インパラのオス、クロトキ、エランド、インパラ…とまた豊かな 野生の王国に戻りはじめる。急に道をはずれ、サバンナの中へ。思いがけず急に揺れると、 ウィリアムは“Are you OK madam? my friend?(ウィリアムは私たちのことをこう呼んでいた。 この違いは何?),sorry.”と必ず一人ずつに訊いてくれる。と、ガーデニアのブッシュに シマウマが寝ている。よく見ると腸が出ており、木陰には二頭のオスライオンが涼んでいる。 暑くて今は食べたくないので、ハゲワシや他の肉食獣に取られないように隠しているのだ そうだ。慶祐はかわいそうがって、写真を一枚も撮らない。車から頭さえ出さないでジッと している。他のサファリカーが集まってきたので我々は出発、やはり木の下に昨日の チーターの親子を発見する。眠くて仕方がない、といった様子で、たまに体を入れ替えては 横になる。今日はセクレタリーバードが何度も見られて幸せ。慶祐、「さっきのがもうここまで 飛んできたのか!」と真顔で言って色白姉妹に大受け。なんとなくもう帰り道だな、と いうのがわかるところまで来たところで、ウィリアムが“マサイ村には行ったか?”と訊く。 姉妹は、もう明日帰るので時間がないと答えると、“お金は後で加藤さんにうまく話をつけて もらうから、今から行ってみるか?”と提案した。慶祐はあまり乗り気でなかったが、恭子は 慶祐に「いくら持ってる?」と2人の所持金(2人ともチップ用に米1j札をいくらか持っていた) を確認し、慶祐のほしがっていたクラブ位買えるのではないか、とバッグの中のボールペンや 髪飾りを出し、手もとに揃えた。
マサイのボスは割とフレンドリー、笑顔も見せる。オロロロの村は全部で一家族で、 いろいろな説明をする途中で“子どもたちの学校のために”というセリフを随所にはさむ。 あまり楽しげでない女性の歌とダンスの列に無理無理入れられたあとは、一つの家に案内 される。仔犬(1ヶ月くらい)が寝ているが、遊びに誘っても全く乗ってこない。人間の子ども たちは、今からマサイらしい子もいるが、恥ずかしげに家の陰から手を振る子、堂々と近く まで来て“ハロー”という子もいる。家の中に入ると、入り口の脇に動物の仔をしまう部屋 (蚊いぶしがしてある)があり、奥に進むと3つのベッドの真ん中にいろり、いろりのところだけ 窓が切ってある。ボスの指示に従って一人ずつ座る場所を指定されるが、ベッド以外の椅子 はすべてガタガタして座りづらい。家の説明が終わると、外の女たち(さっき歌と踊りを見せて くれた人たち)のマーケットへ。約束のクラブを3jプラス100円ライター1個で手に入れる。 意外と安いぞ、と思った恭子、残りの10jと小物で会社の人のお土産用にビーズの飾りの ついたクラブを8本手に入れようとするが、大口取引なので(?)ボスが来て、1本10j、 どんなに手間ひまかかっているかから牛の価値まで説教されて、決裂。みんな車に 戻りかけていたので、最後にボスの手持ちのクラブとボールペン5本を交換しないか、と 持ちかけると、恭子のキャップをプラスしろ、と言われ、慶祐の会社の販促用キャップを とられる。
本物のクラブを手に入れたが、部屋に戻ると牛くさくて困った。慶祐も恭子も、 体がなんとなく牛くさい。だんだん部屋も牛くさくなってきた。靴の底には、マサイが村の一面に 敷き詰めて乾燥させている牛のフンをたっぷりつけてきている。慶祐、靴の室内持込禁止令を 出して、ベランダで一生懸命洗い落としている。恭子は手を洗おうとして、腕時計を見てハッと する。この時計、去年2,000円で買ったオモチャで、交渉道具の一つとするつもりでわざわざ 今回つけてきたのだ。これを忘れるとは…。悔しくて、地団駄を踏む恭子。
戻るとすぐに昼食の時間となった。慶祐は疲れか「今日は食べない。」と言うので、ビュフェ だから少しだけ取ればいい、ととりあえずレストランへ。ところが今日はさらにゲストが 少ないのか、昼からコースであった。 メニューはビーフバーガーとチキンカレーの選択で、2人ともカレーを注文する。慶祐は、 食欲不振の原因を、さっきのライオンのランチで気分が悪くなったせいと説明し、第二のソウル フード、カレーですっかり盛り返す。フランシスが、“おかわりは?”と訊くと、慶祐またシャイに なって「いらない。」と言うが、レストランを出てから「カレーおいしかったナ…」と未練を残す。
レストランの外に、ハイラックスが来た! 私たちの席のすぐ前の木には、ハタオリドリが 巣作りの最中だったし、こんどはハイラックスが花壇の葉っぱをムシャムシャしている! 念のためにいつも無愛想に立っているウェイターさんに、“あれ、ハイラックスでしょ!?”と 訊くと、そうだ、とぼそっと言うので、いつかテレビで、ローカルの人がハイラックスを捕まえて “今日はごちそうだ”と言っていたシーンを思い出し、“あなたはあれ食べるの?”と訊くと、 “Never. Because I'm Masai.”−失礼いたしました、と赤くなる思いの恭子であった。 (マサイは、基本的に遊牧民の常として、乳しか摂らない。肉を食べるときでも、自分たちの 所有する山羊や羊しか口にしないという。逆に、よく彼がレストランで働いていられるなぁと 思った。) 売店に寄って、ハガキを出した。いつ頃日本に着くのかと訊くと、今度の月曜に出す ので、それから一週間とのこと。私たちが日本に着くまで(現地時間で月曜未明に帰国予定。) ハガキたちはここで待っていてくれるようだ。部屋に戻り、慶祐二度目の洗濯。「茶色い水が 出る。」と言って何度も洗っている。2本のクラブも石けんで洗う。慶祐、また洗濯物の番を しながら、今日はスワヒリ語の勉強。そのうち外は強風が吹き、遠くで雷鳴が響いている。 NRに雨のカーテンが拡がっていく様子が手に取るように見える。午後をのんびり、成田スルメ に成田ウィスキーでで過ごす私たち、今日は本当に良かった! |