慣れない飛行機、初めての海外旅行…

慶祐の緊張ぶりは大変なものだった。

成田空港で、なにやらブツブツとつぶやいている様子。

そっときいてみると、どうやら「かふぃー。かっふぇー。」と聞こえる。

「どしたの?」と訊く恭子に、「だって、フランスの飛行機でしょ、

英語のコーヒーは『かふぃー』でしょ、フランス語は『かっふぇー』でしょ?」

飲み物の注文に備えて、練習しているらしい。

恭子は、なんとか座席が並んでとれるように、とそればかり祈っていた。

この機のエコノミークラスは、3・4・3なので、これほど緊張している慶祐が

一人になってしまったら、この先どうなることか

幸い、私たちは行きも帰りも二人並んで座ることができたが、周りを見ると

離れてしまっているカップルが大勢いた。

11時間のフライトも順調に過ぎ、(コーヒーの注文も無事に終え、)

いよいよ念願のタヒチ・ファアア国際空港に到着した。

タラップを降り、直に地面を歩いてイミグレーションに向かう。  空港内の自由撮影!やったー、南の島!

日本からの便のため、日本語の看板が出て、グランドホステスさんも「コンニチハ〜」と言っている。

南の島ですよ〜、という音楽が流れてきた。

この左端の楽器に注目して欲しい。プラスチックのゴミバケツをひっくり返したものに、棒きれと糸を張ったベースだ。

棒の傾け具合できちんと音階を出している。  右端のギターの人の手首も、本物の入れ墨だ。

各種のガイドブックに書かれている、有名な日本人のお土産物やさんが

早速「本当のお土産事情」と書かれた印刷物を配っている。

(実際、これはいろいろ役に立った。)

館内放送で、恭子の旧姓が呼び出されている。恭子のパスポートは旧姓だ。

英語なのでよくわからないが、“from Tokyo”と言っているので、

「どうしよう…。私みたい。」と言うが、海外初めての慶祐にも

できることがあるはずはなく、迎えの人(日本人だった)に即刻泣きつく。

彼はほかのゲストを待たせて、航空会社のオフィスを尋ね歩いてくれたが、

結局何だかわからず、もしわかったところでどうしようもないところまで

来てしまったのだから、とすっぱり忘れることにした。

荷物をピックアップする間に、恭子は両替へ。

空港はレートが悪いのは世界の常識。5万円だけ両替して、すぐ

国内線の乗り継ぎに向かう。

   

         見たくなくても見えてしまう、コックピット。

パイロットも1人だけ…。 

       

   国内線(モーレア島行き)は、エア・タクシーと呼ばれるほど、ポピュラーな島民の足らしい。  

運行時刻表は一応あるが、飛行機は次々降り立ち、また離陸する。

私たちのツアー一行およそ2、30人でさえ、チケットの数字で4つのグループに分けられた。

一グループが5〜6人。つまり、次に来た飛行機の大きさによって、いくつグループを

乗せるかが必然的に決まってしまうのだ。

私たちに配られたのは、使い古してボロボロになった3番の搭乗券。

ハワイの島巡りで、6人乗りの小さな飛行機で死ぬ思いをした恭子は、

「少しでも大きいのが来ますように」と祈る。

反面、慶祐は「小っちゃい方が、ダイレクトで面白い。」とこちらはこちらでそわそわしている。

しばらくして、「ナントカカントカ(フランス語&タヒチ語)、え〜、Three&Four、

サン〜、ヨン〜。」のアナウンス。あぁよかった、2グループなら

8人乗りではなさそうだ!

ホテルについて、真っ先にしたのは、絵ハガキ書き。

日本へは次の飛行機の出発日によって、6〜10日かかるという情報があったので、

なにはさておき急いで書いた。

(しかし、結果的にはこのハガキは私たちの帰りの飛行機で一緒に日本に着いた。

 ということは、行きの飛行機の中で書いて空港で出さないと、間に合わないということらしい???) 

ホテルは、奮発してビーチバンガローをとったので、目の前は通路一本はさんですぐ

セルリアンブルーの海が拡がる!

着替えをしようと思い、部屋の窓を閉じて暗幕になったカーテンを閉めると、

波の音に混ざって、外を通る人のさまざまな言葉、そして大粒の雨の降る音がしてきた。

夕方だったので、お腹もすいたが、この大雨ではレストランにたどり着くまでにずぶぬれになってしまう。

雨のやむのを暗闇でじっと待つ二人。

ところが、いっこうに雨の音は止まない。

恐る恐る外を覗くと、なんと、まぶしいサンセットが光り輝いているではないか!

雨の音と思ったのは、椰子の葉をゆらす風の音なのでした。