エヴォラあるき

 彼のおかげで、私はポルトガルを嫌いにならずにすんだ。いや、それどころかだんだん好きになっていった。
 「バス・トイレ共同が25ユーロ、部屋についてるのが30ユーロよ。どうする?」前宿セランディアでは、狭いシャワーと○○○トイレに辟易したので、5ユーロくらいならいいか、と思い、バス・トイレ付きの部屋にした。「部屋を見る?」ドアを開けてもらい、中に入ると、少々狭く、窓も小さいのが1つしかないが、白地に花模様のすてきなベッド、ナイトテーブル、ワードローブなどが並んでいる。木の床はピカピカに磨き上げられ、バスルームも清潔である。わーい。濡れた衣服を乾かし、一息ついたあと、まだ6時なので、町の散策に出かけることにした。フロントのおばさんにおすすめのレストランを尋ねると、「A Chouppenaがいいわよ」と教えてくれた。なるほど、見つかるといいなあ。

 さっきまでの土砂降りがうそのようである。いろいろ探検したくて、うろうろ歩いてみる。宿の向かいには、とっても怪しい雰囲気のアンティークショップが一軒。2匹の子猫がいつもおじさんの周りをちょろちょろしていて可愛い。レストランは意外なほど早く見つかった。しかし、お客の姿が見えるのにドアが開かない。???とりあえずまた来ようと思い、散策を続ける。小さな孫と、なにやら話しているおばあちゃん、杖をつきながら歩くおじいさん。丸い窓やくねっとしたバルコニー。風がひんやりしてきて気持ち良い。
 坂道をずんずん上っていくと、ぽっかり広場に出た。あれ、こんなに人がいたんだ。なんだ、インフォメーションはこんなにバスターミナルから離れたとこじゃないか!!まあいいや。もしかして、モンサラーシュ行きのバスの時間、ここでも分かるかなあ?と思い、聞いてみる。??そう、旅の計画を立て始めた頃は「エヴォラ→アライオロス2泊」のルートを考えていた。が、モンサラーシュの評判を聞くうち、だんだんそっちに心が傾いていたのである。13:00と17:00の2本、帰りは17:00だけだという。帰り、リスボンを発つ飛行機は13:25。17:00のバスでは間に合うはずが無い。タクシーを使ってまで行きたいのか、どうなのか・・・。この大きな問題は、出発直前まで私の頭を悩ますことになるのであった。

   いったん宿に戻り、上着と傘を持って再び外へ。レストラン、今度は開いているようだ。ドアを開けると「1名様ですか?こちらへ・・・」案内されたのは、今まで違う店だと思っていたカウンター席のスペース。なんだ、奥でつながってたんだ!カウンター内には眼鏡をかけた、どこかで見たことがあるような(何となく日本人っぽい)おじさんが一人。英語のメニューがあるので分かりやすいが、魚の名前などは英語でも分からない。どうしようかなーと迷ったあげく、”エビのケバブ”にした。”ケバブ”が何だったかうろ覚えだったが、しばらくして、頭つきのエビが串刺しにされてど〜んと出てきた。最初は頭だけ外し、ナイフとフォークでお上品に食べていたが、 「このまま全部食べたらお腹こわすんじゃ・・・」と思い始め、思い切って手で殻をむいて食べ始めた。薄い黄色のソース、レモン汁かと思ってかけていたが、全然酸っぱくならない。あ・・・オリーブオイルだったのか。


   まわりはおじさん、おじいさんがほとんど。独身なのか、奥さんが料理を作ってくれないのか・・・。第一、おばさんや若者は・・・?謎である。??全部食べきれるか心配だったが、完食!魚介類なら量が多くてもいけそうである。やっぱり次はデザートが欲しい。私は冷蔵庫に入っているティラミスのような物を指し、リクエスト。と、出てきたのは市販のアイスであった。おじさん、ごめんなさい、そうとは知らず・・・。
 こうして、ポルトガル第1日目にして私の誕生日は過ぎていった。

(3日目 エヴォラ→モンサラーシュ)
 翌朝、フロントに下りてみると、きのうのおばさんではなく白髪頭のおばあちゃん。まだ早い時間だからかな。
 朝食を買いに行く。青ギンガムチェックのかわいらしいお店に入ってみる。ショーケースの中にあったのは、パンではなくチーズやソーセージで少々がっかりしたが、水とアイスココア、クッキー2つを買った。ついでにちょっと離れたパン屋さんへ足を運び、ショーケースの前で迷うこと数分。おばさんは待ちきれなくなって店番しながらTelしだす始末。だってどれもおいしそうなんだもん・・・。カスタードドーナツ?カステラ風の?ココア色のは・・・。結局、パイ生地に砂糖がけしてあるものを一つ買う。店の奥が工房になっているらしく、会計が済むとおばちゃんはさっさと中へ入ってしまったが、こっちから「どうもありがとう!」
 さて、部屋に戻り、食べようとした時、アイスココアを飲むのに、栓抜きがないことに気付く。フロントに頼めば貸してくれるかなあ・・・。ドキドキしながらおばあちゃんに頼むと、「まったく・・・世話の焼ける客だねえ」と言わんばかりにブツブツ、ため息をつき、台所らしきところの、奥の引出しから栓抜きを取り出し、ヒョイッと開けてくれた。ひえ〜ごめんなさい。でもありがたい。
 さっき買ったパン。砂糖がけの激甘と、中の生クリームのちょっとの塩気と、パイ生地のバター分が一気に来る。しかし全部食べてしまった。体重計に乗りたくないなあ・・・

 12:00にはここを出なければならない。私はまだモンサラーシュ行きを迷っていた。往復タクシーだと、好きな時間に来てもらえるけど、かなり高くつく。じゃあ、行きがバス、帰りタクシーは?安いけど、モンサラーシュにタクシー乗り場なんてあるのか?帰りの交通手段がなくなったりしたら、たまったものではない。え-い、タクシーにしてしまえ!!
 最後に鍵を渡し、お別れをと思ってフロントに行ったが、さっきからガミガミばあちゃんは電話でしゃべりっぱなし。いつまでも切りそうもないので、目でお礼を言って出ようとした。と、ドアの側、陽だまりのところで猫がウトウトしている。近づいても全然逃げない。また来るよ、ガミばあちゃん、猫ちゃん。


おしろ

丘の上のモンサラーシュ。