2005年8月
雅の世界に遊ぶ
源氏物語『藤裏葉』の巻より
神無月(旧暦10月)の20日過ぎ、冷泉帝は紅葉の美しいこの季節をお選びになり、朱雀院を誘われて光源氏の邸宅である六條院へ行幸された。
天皇、上皇うちそろっての行幸は滅多に無い晴れ晴れしいことであるので、源氏は心のこもったもてなしを心がけ、さまざまな趣向をこらしたのである。
帝の座す寝殿階(きざはし)前では左少将が六條院の庭の池で鵜飼いに捕らせた鮒を、右少将が蔵人所の鷹飼いが北野で狩りした鳥一番を、それぞれ左右から膝をついて献上している。帝の仰せをうけて、太政大臣がそれらの獲物を調理にまわすよう命じている。 庭では、楽所の楽人を召し、公卿の子供たちが華やかに賀王恩を舞い、池には龍頭鷁首の双胴船を浮かべ、胡蝶・がりょうびんの童たちが控えている。
西廂では、夜の管弦の遊びのために、宮中より取り寄せられた名器の琴などを女房たちが用意し、北廂では女房たちが趣向を凝らした御膳の用意をしている。