2004年9月4日、南ドイツ・バイエルン州で娘が結婚しました。お相手はドイツ人です。
ドイツでは結婚式の前にまず、市庁舎で「入籍式」をします。これが何より重要なのだそうですが耳なれない「入籍式」の実際は、こういうものでした。
午後2時、その「入籍式」は始まりました。市庁舎というと殺風景なお役所を想像しますが、ドイツのそれは町の中でも最も歴史のある建物で、中は明るく清潔なホテルのように磨き上げられています。出席者(35名)は時間になると、沢山のお花で飾られた瀟洒なお部屋へ案内されます。それぞれの親友であるの二人の立会い人にはさまれて正面テーブルの前に立った新郎新婦は、普通のスーツ姿。真っ白なパンツスーツ姿の娘の手にはオレンジ色のバラのブーケ。これでやっと花嫁とわかると言う感じです。式を取り仕切るお役人がおもむろに書類を開いて、二人がそれにサインをし(多分これが婚姻届)、立会人がサインをし、お役人もサインを加えたところで、一連のセレモニーが終了。お役人はまるで教会の牧師さんのようにドイツ語(当然ながら)でお説教?を始めます。私にはなにを言っているのやら、サッパリ見当もつきません。
涙もろい私が、いつ感激の涙を流すだろうと家族は期待していたようですが、私はそのきっかけすらつかめません。ただ、「トーキョー・オオタク」と聞こえたときは「あ、この子が生まれた場所のことだわ。。」と思い当たりました。そのときだけは、ジン!と来ましたが、それもほんの瞬間のこと。鼻の奥があつくなっただけ。あとは「???」
感動的で一番わかりやすい結婚指輪の交換が最後に残されていたので、覚悟してハンカチを握りしめていました。隣にいる新郎のお母様も身構えているのがわかります。先ず新郎から娘へ、無事彼女の左手の薬指に指輪はおさまり、次は娘の番。ところがどうしても新郎の指に指輪が入らないのです。どうやら新郎が緊張のあまり、自分用の指輪を先に娘の指にはめてしまったらしい・・・「これ、私の指輪みたい・・」と娘が言い出し、先ず二人が吹き出し、出席者もざわめいて部屋中の笑い声がとまりません。新郎のお母様と私も肩を叩きあいながら大笑い。全く予想外の展開でした。「20年この仕事をしているけれど、こーんなことは初めて!」とお役人も大笑い。最初から指輪の交換をやりなおして一件落着。おかげで私は一度も涙を流すこともなく大笑いのまま、全員でシャンパンとジュースで乾杯。ここまでの所要時間は約1時間・・・和気あいあいのうちにお開きになった入籍式でした。
ちなみにドイツ人は結婚指輪を右手の薬指にします。でも、ちょっぴりアメリカの影響を受けて育った二人は左手の薬指にはめることにしたようです。
この入籍式とそのあとの披露宴が開かれたのは、新郎の実家から車で1時間半ほどのヒンデラングというところ。本来なら地元で行うのでしょうが、この場所を選んだのには理由がありました。そこはオーストリアとの国境に近く、チロル地方のそれは美しいスキー・リゾート。スキーの国際インストラクターの資格を持つ彼は、ここの美しいアルペンホテルで披露宴をするのが夢だったようで、35名の招待客全員が当日このホテルに宿泊するということになっていました。私にはその意味がわかりませんでした。車で1.5時間くらいの所なら日帰りが普通でしょうに・・
しかし、その日になってみてやっとわかりました。二人の結婚を祝うその一日は親戚も友人たちも、出席者全員がずっと一緒にいてみんなで楽しく過ごすのです。2時から始まった入籍式の後、出席者はホテルのカフェテラスで、またはプールサイドで、皆一緒にそれぞれの時間を楽しみました。そして夜7時からのホテルでの披露宴は、司会者がいるわけでもなく、新郎の「これからおいしい料理をたくさん食べて楽しんでください。今日はイタリアンのビュッフェを用意しました。今日は来てくださってありがとう!カンパーイ」という簡単な挨拶だけで食事が始まり、あちこちで会話が弾み、笑い声が上がる。。という風でした。主人が必死でおぼえたドイツ語の挨拶が大ウケしたほかは、堅苦しい挨拶もなければ、かくし芸もない、大人の楽しい会話がなんと11時過ぎまで続き、そのあとはまた全員バーに席を移して、なんとお開きになったのは夜中の2時過ぎ。
これでは日帰りは無理なわけです。ドイツの結婚式は深夜まで宴が続くのが普通だとか。ただ、全員泊り込みというのはめずらしいのかもしれません。翌朝はホテルのレストランで「やあ、おはよう!」とまた顔をそろえての朝食です。たった一晩で新しい親戚たちも、友人たちも、その子供たちもすっかり打ちとけました。
「なるほど!」と思いました。これはとてもいいアイデアでした。約24時間をひとつ屋根の下で、ともに過ごした35名は、別れを惜しみながらそれぞれ家路についたのでした。
結婚のお祝いは前もって希望を聞いておくのがあちらのやり方で、娘たちがリクエストした、おかゆも炊ける炊飯器も、ワイングラスも、シルバーのセットも、ゾーリンゲンのナイフセットなども(切れるもの、割れるものも平気で贈るんですね)この日皆さんが持ち寄ってくださり、新婚の二人の車のトランクと座席はプレゼントで埋まりました。
本来は入籍式のあと、すぐに教会に場所を移して本当の結婚式が行われるらしいのです。しかし娘はクリスチャンではないため、ドイツでは教会での挙式が許されません。今のところはクリスチャンになるつもりがない娘と、それほど熱心でもないけれど一応クリスチャンである彼は、ハネムーンで訪れる、二人が大好きなハワイの
小さな教会で2004年10月18日に、一ヶ月半遅れの結婚式を挙げることにしました。この日やっと母親として娘のウェディングドレス姿を見ることになります。又ハンカチをにぎり締めて・・・
これでやっとドイツ式結婚の完結です。
