・・Korea 9days ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
韓 国 9 日 間  徒 然 日 記
第19号 3日目の5
2002.8.20 発行
今回のMission 七仏庵に向かえ その2
難易度 レベル5

発行責任者 ちはる

 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・Turezure Diary・・
この日記は、ちはるが実際に韓国でつけていた日記をもとに、加筆、修正、再構成したものです。
今回ちはるは韓国に行きましたので、呼称に関しましては在日本大韓民国大使館HPの記述に基づき、地域は「韓半島」、人は「韓国人」、言語は「韓国語」と表記します。特に政治的な意味はありません。
もしかしたら文中に、不適当な発言、あるいは間違った記述があるかもしれません。その場合はどうぞ容赦なくご指摘ください。ただし、旅の折々で胸の内に生じた感情については、あえてそのまま書いている場合もあります。どうぞご了承ください。

《2002年4月22日―5》

 チルブラン[C'hil-bul-am:七仏庵]ヘ−2

 11時28分、幅は広いが未舗装の道を歩きはじめる。
 歩きはじめてまもなくしたところで、トラックが正面から走ってきた。こんな道をトラックが走るのかっ!

 道幅はちょうどトラック1台分くらいしかなく、わたしとすれ違うことはできない。
 しかたない。わたしが畑に降りるかの。

 草ぼうぼうの畑に降り立って、乾いた未舗装の道を土ぼこりをあげながら走り去っていくトラックを見送りつつ、こりゃあえらいところに来たみたいだぞ、と思う。

 道をちょっと行くと、左右は森になった。
 あ、ジープがある、と思ったら、迷彩柄の軍服を着た男の人が3人立っていた。ちょっとギョッとする。

 何か話しかけられるかな、と思ったが、結局何も言われなかった。

 軍人さんとすれ違ってまもなくの11時31分、森を少し切り開いたところに小さな古墳があった。

 おお〜、こんなところに古墳がっ!
 さっすがナムサン、古都の山だぜ〜とか思いながら写真を撮ったが、何とこれは
古墳ではなく現役のお墓だった。
 え〜っ、これがお墓っ!?

 この時撮った写真を、後で韓国の人に見てもらったのだが、「これは古墳じゃなくて現代のお墓。いまでもキョンジュのあたりでは、死んだ人の棺おけをみんなでかついで(道が細くなると車は入れないから)ナムサンへ埋葬に行く」と言われてしまったのだ。

 そういえば、韓国では火葬は一般ではなく、土葬が今でも主流のはず。
 そうか、土葬するとこんな風になるのかっ!

NO PHOTO
本当は写真、あるのですが自粛します。
(自分の家のお墓の写真が無断で載ってたらふつうヤだし)

 ひょえ〜、知らなかったとはいえ、現役のお墓を写真にとって来ちゃったよ。
 お墓に入っていた人、ごめんなさい。

 しかし、この後も道沿いにはたくさんの小さな古墳型お墓が現れた。
 いま考えるとすごいところを歩いていたことになるわけだが、その時はそんなこと全然知らなかったので、わたしは古都気分を満喫していた。
 うーむ、まさに「知らぬが仏」である。

 11時34分、またしても十字路に出た。今度の十字路は真っ直ぐ進む道の手前にチェーンがかかっていて、通れないようになっている。

 どっちに行くんだろう? と一瞬悩んだが、よく見ると右側に行く道は行き止まりで、左に行く道はすぐ沢になっていて先に進むことはできないようになっていた。
 さらに周囲を見回すと、ライオンズ・クラブが立てた「チルブランはこちら」という青地に白い文字の看板もある。


十字路に見えるが1本道

 

正面の道の入口に
チェーンがかかっている
 

左側に見えるチルブランの看板

 ということは、チェーンを乗り越えて行け、ということか。
 本当に大丈夫だろうか? と思いつつ進むと、右手に民家があった。
 こんなところに人が住んでいるのか・・・山の管理人かなんかだろうか?

 この家で飼われている犬たちに吠えられたので、さっさと先に進む。

 11時37分、看板がふたつ立っているのを発見。道はこの先からのぼり坂となる。
 看板の字は、ハングルは読めるが意味がまったくわからない。
 「アンネウン」[An-ne-un」というのは、「案内何とか」か?
 もうひとつは「イプサン・トンジェ」[Ip-san-t'ong-je]と読めるが、意味は不明。
※Attention! イプサン・トンジェ=「入山統制」でした)

 何か重要な警告とかだったらどうしよう、とは思ったが、こんな初手で引き返すわけにも行かない。先に進む。

 ここから道は本格的に山道。左右には木々が深く生い茂り、道には大きな瓦礫のような石が散らばる。


石の散らばる山道

 花は、ピンク色のつつじが少し咲いていた。ちょっとだけ心がなごむ。

 しばらく行くと、道のかたわらに突然、青い大きな縦長の箱が現れた。
 何だろう? 緊急災害用の物資を入れた物置だろうか? と思いつつ箱に書かれた文字を読むと、「〜〜ファジャンシル」[Hwa-jang-sil]と読める。

 ファジャンシル――ってことは、これ、トイレ?
 げ、これ公衆トイレかいっ!
※Attention! ファジャンシル=化粧室)

公衆トイレ
公衆トイレ

 この公衆トイレ、外見は非常にきれいだった。
 ということは、頻繁に人の手が入って整備されているということか。

 じゃあ、やっぱりチルブランへの道はこっちであってるんだな。

 とりあえず安心、と思ってちょっと先に行くと、一筋の水の流れが道を横切っていた。
 「川」というほど水量は多くない。だから「沢」というほどのものなのだけど――そこに橋はない。
 まるで「この石を伝って渡れ」と言っているかのように、大き目の石が敷き詰められているのみ。

 ここを渡れってかっ!?

いきなり現れる沢
いきなり現れる沢。
橋を使わず水の流れを横切るなんて、
ちょっとどきどきする。

 

この沢の下流
 

この沢の上流

 ちはる、少々呆然と水を見つめる。
 ・・・まあ、大丈夫だけどさ、雨が降ってないから鉄砲水のおそれもないし。
 山道になってからまださほど時間がたっていないけど、もはやここは本格的に山なのだった。

 しばらく風景を見る余裕もないほどきつい山道を歩きつづける。

きつくなってくる山道
道に散乱する石がだんだん大きくなる。
木の根も張り出していて、足場はかなり悪い。

 11時43分、ちょっと大き目の古墳(実際には現役のお墓)をふたつ発見。
 かたわらの低木の茂みの中に、欠けた青銅の鏡の中心に笑った人物の顔が浮き彫りにされているという、どうもキョンジュのシンボルマークのような看板がある。
 看板には「チルブラン 1.5km」と書いてある。

チルブラン 1.5km
チルブラン 1.5km

 ああ、ここからチルブランまで1.5kmなのか。
 距離に関する情報はずっとなかったので、目安がわかってほっとする。

 1.5kmというと、ふつうなら20分ちょっとで歩けるけど、ここは山道だから30分くらいかかるかな。
 特に目印となるものもないので、時間には気をつけて進むことにする。

 ここで少し休憩し、ふたたび出発。

 11時52分、またしても沢越え。トイレもあった。

 道は依然としてのぼり坂。
 ちょうど周囲に松の木が多いあたりで、松の枯れ葉が道を覆うどころではなく、4〜5cm堆積するほどに落ちていたので、トレッキング・シューズとはいえすべって困った。

これも山道
周囲の木がうっそうとしていて、
見通しは非常に悪い

 12時ちょうど、どこからか滝の流れ落ちるような水音が聞こえてくる。
 本当に滝があるのかな、と思ったが、結局見つけることはできなかった。

 3人組の軍人さんとすれ違って以来、人の姿はまったく見ない。
 このあたり、ほとんど人は来ないんだろうか? と思っていたら、突然前方から作務衣を着たおばちゃんが現れた。
 うわっ、と思いっきりびっくりする。

 山で人とすれ違ったら、「こんにちは」とあいさつするのが確か日本の山登りでの礼儀のはず。
 韓国でも同じ法則が通じるかどうかはわからなかったが、とりあえず「アンニョンハセヨー」とあいさつすると、おばちゃんも「アンニョンハセヨー」と返してくれる。

 そしてさらにすれ違いざまに「アガシ〜、ナンタラカンタラ〜」とわたしに声をかけ、おばちゃんはそのまま山道を下りていった。

 それにしても軽装なおばちゃんだった。足なんて子どもがはく上履きみたいなのじゃなかったか?
 どこから来たんだろう? 何をしてきたんだろう?

 ・・・とりあえず、向こうから人が来たってことは、この先に道があるってことだよね。
 チルブランまであと1kmちょっとのはず。がんばれ、わたし。>

 おばちゃんとすれ違って間もなく、ひさびさに風景のひらけた所に出た。
 山に岩肌なんかも見えていて、「もしかしてあそこに磨崖仏とか線刻画とかないかなあ」と目をこらしたが、残念ながらなにも見えなかった


何かありそうなんだけど、
何もない崖

 12時7分、すでに5度目の沢越え。
 山はまだまだ上り調子。

 12時11分。暑い。息があがる。
 うぇー、どーにもこーにも、きっつー。
 小さな岩の上に座って休憩。

 12時17分。ダメだ、歩けん。
 またまた休憩。
 うーん、休憩の間隔がどんどん短くなってるぞ。

 道は、なだらかなところもあるが、もはやよじ登らなければならないほど傾斜が急なところもある。
 本当にたどり着けるのか、チルブラン。

 いままでずっと長袖のシャツを着ていたが脱ぐ。もう、暑くて着ていられない。
 風が吹くと涼しいけど、先ほどからほぼ無風状態。
 日焼けをおそれて上着を着ていたら、熱中症になりそうなほど暑かった。

 少し休んでまた歩き始める。
 そして
12時25分、わたしの行く手を大きな岩がさえぎった。

道をさえぎる岩
道をさえぎる岩。でかいです。

 げ、迂回する道がどこにもないぞ。
 ということは、この岩をよじ登って乗り越えなくちゃいけないのか――っていうか、本当にこの道、あってんのか?

 しかも岩のあたりには地蜂の巣があるらしく、蜂がぶんぶん飛んでいる。

 しかし、岩を乗り越える以外に道はない。
 ひーん、怖いよー、と心の中で泣きながら岩を乗り越えると、なぜかそこに大きな石をコンクリで固め、トタンと木を組み合わせて作った小さな洞窟のようなものがあった。中をのぞいてみると、底にきれいな湧き水らしきものがたまっている。

 なんでこんなところに水屋が???

水屋
水屋

 不思議ではあったが、確かにわたしの手持ちの飲み水も少なくなっている。
 トタン屋根の上に置かれていた水色のプラスチック製ひしゃくで、ありがたく水を飲ませてもらって、ふう、と一息ついたところで気がついた。

 ――ここ、行き止まりじゃん。

 そう、なんとこの水屋の先には、いままであった人が踏み固めた道筋がどこにもなかったんである。

 ええっ!? ちょっと待てよ。

 水屋の周囲をあわてて見回す。
 すると、水屋の背後の岩が折り重なったすぐ横に、苔むした平らな岩が斜めになっているところがある。
 強いて言えばこの岩をよじ登れば、なんとか上に行けそうだけど・・・


水屋の横の斜面。
仰角が何度になるのやら・・・

 そうだ。水屋にいろいろ字が書いてあった。
 あの字の中にこの先のヒントがあるのかも。

 水屋に白いペンキで書いてある文字を読んでみる。


これがその文字

 「チョップル キョジ マセヨ」とわたしには読めるが、意味なんてひとつもわからない
※Attention! 「チョップル」=ろうそくの炎、「キョジ」は「キョジタ」=「(火や電気を)つける」、「〜マセヨ」=「〜しないでください」。つまり、「火気厳禁」というようなことが書いてあったようです 笑)

 どうしよう・・・こりゃエライことになったぞ。
 まさかわたし、こんな山の中で迷子になっちゃったのかっ!?

 確かに、「チルブラン 1.5km」と書かれた看板があったところから、すでに山を登りつづけて40分以上たっている。平地なら3km近い距離を歩き終わっている時間だ。

 行くべきか、退くべきか・・・

 悩んだ末に、先に進むことにした。ここであきらめて引き返したら、あとできっと後悔する。行けるところまで行こう。

 水屋の横の、どこにも手がかりのない水にぬれた平らな岩に足と手をかける。
 ううう、軍手を忘れずに持ってくればよかった。
 そしてのぼり始めたとたん、苔にすべってわたしは岩の上を滑落した。岩の上に腹ばいになって、どうにか止まる。

 ・・・ヤバい
 これ、マジにヤバいんと違う?

 じっとりぬれた岩にへばりつきながら、わたしは自分の脳裡に赤い回転灯がくるくるとまわりはじめるのを感じた。

 「行くも地獄、退くも地獄」とはこのことか?

 ええい、同じ地獄なら前に進んでやるっ!(笑)

 深く枯れ葉が積もった山の斜面に、ふくらはぎくらいまで埋もれながら、土から浮き上がった木の根本を伝いつつどうにか上へ上へと登っていく。

 あそこに見える木のあたりまで行けば、少しは先を見渡せるだろう。そんな期待を持ちながら、どうにか目標としていた木のところまで来たけれど――その先にはさらにきつい道とは言えぬ枯れ葉が積もった山の斜面が続いているだけだった。

 この時、ふと思ったのだけど――わたし、道を歩いているんじゃなくて、枯れた沢を登っているんじゃないか?
 本格的に、山中で迷子になっているんじゃなかろうな、わたしっ!?

 何気なくかたわらに目を向けると、誰が積んだのだろう? 石を組みあわせて作った祠のようなものがあった。


積まれた石を見て、一瞬、
ここは賽の河原かと思った。
それくらい危険な場所で見た。

 ・・・ということは、やはりここは人が通るルートなのか。
 でも、先がまったく見えない。

 登ってくるのも大変だったが、これはどう考えてみても降りるのも大変そうで、これ以上高いところに行った場合、わたしはひとりで無事に降りてくる自信がない。

 引き返そう。

 たとえ後悔することになってもいい。これ以上は危険だ。>

 必死になってよじ登った山の斜面を、黙々と降りる。
 水屋で水を補給して、途中の広場で昼食をとり、今度は下りばかりになった山道をどんどん引き返す。

 13時31分、十字路に見えて、実は真っ直ぐにしか進めないところまで戻って来た。
 行きにここを通ったのは11時34分。まる2時間の行程だったけど――ついに石仏はひとつも見ることができなかったのだった。

おわり


今回のMission 七仏庵に向かえ その2
難易度 レベル5
今回のMission結果 大失敗!(T_T)
本部からのコメント ミッション的には失敗ですが、無事に山のふもとまで帰ってこれたことは成功としましょう。
もう少し、山の中に道標があってもよさそうなものでしたが、なかったから仕方ありませんね。
なんにせよ、ケガなく帰ってこられてよかったです。今回は本当におつかれさまでした。

 

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