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この物語の出典から説明します。
日本では「千一日物語」は殆ど知られていないようです。
一応、東洋文庫のアラビアン・ナイト1巻の解説で説明されていますが(最終巻である18巻の解説にもあるらしい)
「千一日物語」として翻訳はされていないようで、細田理美訳「ペルシアの昔話」として一部の物語が
偕成社文庫から出版されています。
細田理美さんの解説を抜粋しました。
「千夜一夜物語が成立する数百年前にすでにサーサーン朝ペルシアに「千の物語」と呼ばれる物語集
があったといわれています。
(中略)
今から二千五百年も前に世界帝国を築いたペルシア帝国も次第に衰え、7世紀になるとアラブ人に
支配されるようになります。しかし高い文化を持つペルシア人は、逆に学問文化面でアラブ人を支配
していきます。こうしてアラビア語による「千夜一夜物語」に対抗して作られたのが「千と一日の物語」です。」
「千夜一夜物語」のルーツはインド、ペルシアからアラブに伝わったもの、と以前に書きました。
私達は"アラビアン・ナイト"と呼んでいますが「千夜一夜物語」の舞台はサーサーン朝の宮殿です。
(ペルシアは中東であっても、アラブではない)
「千一日物語」について詳しく調べている方がいらしたのでリンクします。
http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~mogami/1001tag.html
■「カラフ王子とトゥランドー王女の物語」に出てくるチャガタイ、チムール帝国、中国(明)について。
チムール帝国は中央アジアを統一した最期の遊牧民族の帝国として知られています。
実はチムールは英雄です。簡単にチムール帝国の成立を紹介します。
チンギス・ハーンの息子チャガタイは父の領土を継いで、チャガタイ・ハーン国を建国しますが、この国は
1320年、東西に分裂します。
1336年チムールは西チャガタイに生まれます。
その後チムールは、チャガタイの孫であるフセインとチャガタイ・ハーン国の再統一を目指すのですが決裂。
チムールはフセインを討った後、チャガタイ系の子孫を名目上のハーンとして擁立、チムール自身は一族から嫁を貰い
太守を名乗り、事実上の支配者にのし上がります。
チムールは頻繁に外征を行い、アフガニスタンからペルシアまで領土を広げました。
これで何故「カラフ王子〜」の物語でチムールが悪くかかれているかおわかりですね。
チムールもチンギスと同様、破壊大魔王でした。
(しかし「チンギスは破壊したが私は建設した」(チムール談)と言っております。)
物語の中ではチムールは自害したことになっていますが、実際には明討伐の遠征中に寿命が尽きてしまいました。
チムール帝国はチムールの死後も続いてます。
サマルカンド:
物語中にサマルカンドの王子がでてきて???なのですが、サマルカンドはチムール帝国の首都です。
サマルカンドの歴史は古く、アレクサンドロスの大遠征で美しいと褒め称えられています。(しかしアレクサンドロスは破壊したし、貴重な図書館
を焼いてしまった)その後、アラブ、チンギス・ハーン、チムールと、幾たびの戦乱をくぐり抜け重要な都市であり続けましたが、近代
以降絹の道が主要な貿易路から外れてしまい没落しました。現在ではウズベキスタン共和国の壮麗な都市です。
中国:
ペルシア語で「トゥーラン」とはアム河を境にペルシア文明の及ばない野蛮な地域を指すそうです。
「ドー」とは娘。
「トゥランドー」とはアム河の向こうの娘、といったところでしょうか。
この物語に出てくる中国は、実は中央アジアかと思われます。
■おまけ
その他の国も、私が知らないだけで、調べたら実在の国なのかもしれません。
少し興味を惹かれたのはサマルカンドの王子の死装束です。"糸杉と白い花で飾られた冠を被り白い服を着て"とあります。
糸杉は"生命の樹"であると同時に死・哀悼・絶望を意味する樹でもあります。白い花は死者へ贈る花を指すのでしょう。
-*感 想*-
「そんなに万人受けする顔ってどんなんだ?」とか
「顔がいいくらいで、命までかけっか?」とか
「一国の王子が恋に現を浮かすな」とか
「王子を殺されたら、どれか1つの国くらいは戦争をしかけてくるだろー」とか
読んでいて不満がたらたらと・・・・
一夜明けて、いきなり気が変わるトゥランドーの態度が解せません。
それに引き換え、どんな隷属をも嫌う元・王女(侍女)はあでやかです。
クイズに負けたぐらいで泣くなよ、トゥランドー、という気持ちになります。
ところで、この侍女。
男性の部屋に一人で忍び込んだり、
「トゥランドー様が殺そうとしています」と嘘をついたり、
カラフ王子の名前を教える、
という手段を選ばないツワモノです。
トゥランドーも、改めて自分から結婚を申し込んだことにするとは、どこまでも気位の高い女性です。
「中国と中央アジアを治めました」というラストもなかなか欲張り。
さて、「トゥーランドット」というオペラがあります。私は未見ですがどこまで筋が一緒なのでしょうか。
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