北京 ’87
はじめて中国に渡航したのは1987年。
短期留学という形で北京へと向かった。
そのときの荷物は中国語の辞書と必要最小限の衣類etc.。
現地で調達できるものは現地で買えばいいやと。
そのほか、旅のおともとして
当時よく聴いていたRUN D.M.C.をはじめとする
黒人ラッパーの曲をダビングした“カセットテープ”数本を
リュックの中に放り込んだ。
今みたいにMDなんかある時代じゃないのだ。
しかも、クラブDJの選曲や様々なテクに関心のあった私は
専らアナログ盤ばかり買っていたので、CDではなく
Myテープ(笑)を作って持っていくしかなかったのである。
現地滞在中はいつも
放課後になると郊外にある学校からバスを乗り継ぎ、
約1時間ほどかけて北京の中心街へ出かけていた。
だが、ひとたび街へ出ると
いたるところでしょっちゅう耳にする音楽があった。
それは、どうやら中国の民謡らしいのだが、
アレンジが当時の中国としては斬新(!?)で、
といっても、日本ではその頃すでに多用されていた
“ノンストップディスコ(笑)ミックス”(今風に言うなら“club mix”になるか…。)
のスタイルをとっていたのだ。
その「しょっちゅう耳にする」という現象がみられたのは
北京だけではなかった。
授業が休みになる週末、何度か列車に乗って旅に出ていたが、
旅先では言うまでもなく、列車の中の車内放送までも
「例の音楽」がひっきりなしにかかっていて
どうも全国規模で流行っているようだった。
当時クラブDJのリミックスに興味を持っていた私としては、
その音楽がいったい何なのか知りたくなってウズウズしはじめていた。
そんなある日、北京の街なかの書店に入ったところ、
店内のものすごく大きなラジカセで(しかもひどい音割れ状態(笑)!)、
ラッキーなことに丁度その音楽がガンガンにかかっていたので、
カセットテープ売り場の店員のお兄ちゃんに
「今かかってる曲のカセットってどれ?」
とたずねたところ、
「はい、これ。」と渡されたのが
“四十首民歌聯唱”
というタイトルで、中国国営のレコード会社「中国唱片公司」発行の
カセットテープだった。
私が迷わずGETしたのは言うまでもない。
その日はもう学校の寮にすっ飛んで帰り、部屋に入るやいなや
買ってきたテープを聴いてみたところ、
探していたのはまさしくコレ!!!であった。
中国の民歌(民謡)40曲を伝統的な中国民族音楽唱法で歌いつつも、
そのバック・トラックが
(ややチープな感じのするアレンジではあるものの)
結構ビートの効いたノンストップミックス、
というミスマッチ感覚がとても新鮮だったこのカセットテープは、
後に続編が発売され、CD化もされた。
しかし残念ながら、国外で注目されることは
無かったようである。
この“四十首民歌聯唱”、中国の隠れた名盤のひとつだと私は思う。