「仙造、今日はシケじゃけん漁は止めにするわ」
「親方、コン位のうねりで止めんとか?」
「仙造、コン天気図を見れヤ、低気圧がここまで来てるんが分るんと?、今コン位のうねりでも、あと2時間もすりゃ大波になるんヨ」
「ほんとケ?、ほんに親方は物知りじゃなー」
仙造は、新潟の柏崎に来ている。ここには、母方の遠い親戚があり、漁師をしている。今日も、漁に出ようと朝3時に起き、様子を見に行った親方と話をしてる所であった。
仙造が新潟へ逃れてきて、早や5年が過ぎていた。
その後、母の連絡によると、養父のケガは首から胸にかけて15針縫う大手術で一命を取りとめ、1ヶ月間入院した後、無事退院したそうだ。
ケガの状況が、不自然なので、当然警察が調べにきた。
- シズは、
「屋根に梯子をかけ、家の外板の修理をしようとしていたら、梯子を踏み外し、落ちそうになって鋸を放したんです」
「鋸を持って梯子に上がったのですね?」
「はい」
「放した鋸が顔に当たり、そして首から胸に当たったんだと思います」と言った。
警察も忙しいのか、それ以上追求しなかったのだそうだ。
養父も、非は自分にあると思ったのか、何にも覚えていないと言うだけだった。
仙造は、この柏崎に来て良かったと思っている。なぜなら、ここの親方は仙造の馬力と、敏捷さを気に入り、良く面倒を見てくれたのである。
そして、親方夫婦に子供が居なかったため、仙造を養子に迎え、漁師の仕事を継がせようかとも考えていた。
仙造もまた、今まで他人に親切にしてもらった事が少なく、孤独な環境で育ったせいか、親方夫婦の暖かみが嬉しかった。
そして、何よりも嬉しいのは、仙造にとって大好きな海の仕事が出来ることである。
漁に出ると、「仙造、魚を採る基本は、潮を読む事だ」とか、魚の溜まり場は、岩礁と砂地が点在し、急に深くなっている所だ」と言うように、自分の息子の様に教えてくれた。
そして、明くる年の秋、仙造21才の時、養子縁組みが成立し、仙造は小林仙造になったのであった。
冬の日本海は、厳しい、北からの季節風が日本列島に吹き荒れると、海はシケ、漁に出る事など出来ない。
大半の漁師は、太平洋側の都市へ出稼ぎに行くのであるが、仙造は、親方の口利きで、12月から3月まで、新潟の料理屋「志葉亭」へ毎年手伝いに行っていた。
この志葉亭は、親方が捕った魚を直買いしてくれるところで、潮田唯興(しおだただおき)と言う料理人が経営している店である。
漁師の仕事も面白いが、板前の仕事にも興味があった。呑込みの早い仙造は、手さばきも鮮やかに魚をさばいていく。
「仙さん、次は鯵のたたき、4人前だー」
「ヘイー」
「次は、サヨリのお作り、6人前でーす」
「分ったー」
と言う具合に、次から次へ仕事をこなしていくので、女将や板長からも重宝がられていた。
しかし、まだ、味付けは任せられないので、板長がやっていた。
そして、年末の慌ただしさが一段落し、正月の休みに入った。
「仙造、今日は、嬢が白山神社へお参りに行くんだが、ついていってくれや」と女将から言われた。嬢とは、ここの2番目の娘で、名前を早季と言い、年は18才である。
上の娘は、幸と言い、去年東京へ嫁いで行った。
早紀は新潟女性特有の色白形ではなく、どちらかと言うと、南国系の女性の様に色黒である。小柄で、体の線がハッキリした体つきをし、昔風に言うと、グラマータイプとでも言うべきか。
顔立ちは、10人並みであるが、横顔が凛々しい感じがする女である。早紀は、仙造が始めて、この志葉亭へ来た時から、心を寄せていた。
早紀は、仙造の後ろ姿の、悲しそうな孤独感のある雰囲気に心を引かれ何かにつけ仙造に用事を言い付けるのであった。
その頃は、早紀はまだ14才である。この年頃では、好きな相手だとなおさら素直な態度を取れないことが多い。
仙造に難しい用事を言い付けては、「仙のばーか、早ようせんかい、もたもたすると、松に頼んじゃうからー」
松とは、仙造より2才年上の志葉亭で働く松吉のことである。
早紀にとってこれが仙造に対する。精一杯の愛情表現なのだが、無論仙造には分らない。
仙造は幼い頃から虐待を受けていたので、このくらいの事では何も感じなかった。かえって早紀に対して可愛い妹をあやすように接しているのである。
この様子を見ている女将と早紀の父親は、早紀が仙造に引かれている事を感じ取っていた。
しかし、このわがまま娘に何を言っても聞かないと思っているのか、黙って見ているだけである。
白山神社は新潟から柏崎方面に一駅である。
無事、お参りが終わり帰り道で、
- 「仙、ご飯食べていこう、おっかさんからお金もらってきたんだ」
「ヘイ」
- 「あっ!ここが良いよ」
早紀が指差した店は、割烹旅館である。
割烹旅館とは、忍び会いによく使われる料理屋で、客室は二間続になっていて襖で仕切られている。
一方の部屋で食事をするようになっており、襖の向こうには、布団が二組敷いてある。
仙造は慌てて、
- 「お嬢さん、ここはだめだが」と言うと
「仙、私の言うこと聞けねいのか!」
「ここは、割烹旅館なんだど、お嬢さんの行くとこではねいんじゃけん」
「良いから、付いておいで!」と早紀はどんどん門を入っていってしまう。
仙造は仕方ないので、後から付いていく。
部屋へ通されても仙造は落ち着かない。
早紀の方は、当然のごとく上座に座る。仙造がどうしたら良いものかと部屋の隅に片膝付いて座っていると。
「仙、ここへお座り!」と、早紀が座った向かいではなく、左面を指差した。
仙造は、言われた場所へしぶしぶ座った。
やがて料理が運ばれてくる。そして、
「仙、注いでくれや」と杯を差し出す。18才なのにダメです、とは言えず、酒を注いでやった。
子供の早紀には、酒の味など分るはずはない。同然のごとく顔が歪む。
「仙も飲めや」と言って徳利を差し出した。
「わしは酒が飲めんので」と辞退すると、
- 「私も飲んだんじゃ、飲んでみろ」と言って利かない。
仕方なく、注いでもらう。そして、二人黙って、料理を食べると言うパターンがしばらく続いた。
- 突然、早紀が、「苦しい!」と言って横になった。
- 当然だろう、飲みなれない酒を一合も空けたのだから、頭がふらふらするのだ。
- 仙造の方も、酒に強い方ではないので、頭がボーとしている。
「お嬢さん・・・大丈夫かね」と言いながら、立て膝で早紀の側へにじり寄る。
仙造が早紀の顔を覗き込んだ時、早紀は仙造の身体にしがみ付いてきた。
- 「布団へ連れて・・いって・・」
仙造は、早紀が苦しいので布団で少し休みたいのだろうと思い、遠慮がちに早紀を抱きかかえ、次の間へ連れて行く。
布団へ寝かされても早紀は仙造にしがみ付いたまま、離れようといない。
仙造も無理に離して、怒られたら困ると思いそのままでいる。
- 早紀が「仙、好きじゃ」とか細い声で言ったが、仙造は聞き漏らしたので、「お嬢何いったんか」と聞き返した。
すると、今度は大きな声で「仙が好きなんじゃ」と言ったから、仙造はびっくりした。
今まで意地悪ばかりされてきたので、てっきり嫌われていると思っていたのが、好きだと言われたのだ。
そして、仙造が驚愕から立ち直る間も与えないで、「私を抱いてくれ」と言ってきた。
仙造がためらっていると、早紀は自分の服をどんどん脱いでいく。
仙造は、逃げる訳にも行かず、ただおろおろするばかりだ。
やがて、早紀は生まれたままの姿になって目を閉じている。
小さな肩、張り出した乳房、くびれた胴、そして、左右に張り出した腰と、腰に続くちょっと太目だがふくよかな腿と足。
早紀の身体を眺めていると、仙造も興奮してきた。
店に帰れば、お嬢さんだが、今は、一己の女、潮田早紀として、仙造に相対しているのだ。
それに、「仙造が好きなんじゃ」と早紀が言った言葉が、仙造にはとても嬉しかった。
- 仙造は、震える指ももどかしく、急いで服を脱いでいく。
そして、裸になると、早紀に身体を重ねていった。
しかし、早紀はもちろん、仙造も始めてなのだ。
いきなり、結合しようとするが、早紀の蕾みは、硬く閉ざしたまま開こうとしない。
早紀は、痛いのか、顔を歪めている。たが、いつも仙造に対する態度とは違い、必死に我慢しているようだ。
仙造は、早紀のしぐさに愛おしさを感じ、早紀の頬に自分の頬を摺り寄せ、頬擦りした。
早紀は、小さく、「嬉しい」とつぶやく。
仙造の頬擦りは、頬から唇に変わり、肩から胸へ、乳房からおなか、そしてふくよかな茂みの張り出しから、足へと移っていく。
仙造の唇が、動くたびに、早紀は嬉しそうに声を上げる。
これが、愛撫となり、閉ざされていたつぼみが潤いを得て、少しづつ開いていく。
仙造は、自身を早紀に重ねていった。
結合してしばらくすると、早紀は、仙造から青春の露がほとばしり出るのを感じた。
そして、仙造は、自身の体の中を閃光が走るのを感じたのだった。
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