*第1章 はじまり、それはカレーだった *


めずらしく予定のない、ある春の休日のこと。
目覚し時計をOFFにしたまま、ゆっくりと気持ち良く目覚める。
何気にTVをつけると料理番組がやっていた。メニューはインドカレー。
「おいしそ〜♪今日は私もカレーにしようかな。」と思いつつ、番組を観終わる。
チャンネルを替えると、また別の局でもカレーの番組がやっていた。
関西の美味しいカレー屋さんを紹介するものだった。
ダラダラとその番組も観終わり、今度はスカパに切り替える。
と、なんとまたインドカレーの番組!

「はっ!もしかして!
これは、インド(カレー)が私を呼んでいるのでは!?」


私はそのまま、カレーを食べるのも忘れて、
インド行きの往復航空券を買いに旅行会社へと走った。

* * *

海外のあちこちを一人で旅するようになって以来、
心の奥で一番気になっていたのがインドだった。
多くの表現者達によって、様々に紹介されている場所。
藤原新也の写真を見れば、川辺で人の死体がめらめらと焼かれ
その焼けかけの足に犬がガジガジとかぶりついている。
横尾忠則は、『インドには行けるものと行けないものがあり、その時期は運命的なカ ルマが決定する。』と三島由紀夫に言われたらしい。

むむ。なんだか、これまで訪れた国々とはケタ違いの何かがありそうでは!?
それは、ギラギラ燃える灼熱の塊のように心の奥に住みついて、
時々私の心をそわそわさせていた。
近付けそうな気がする時もあれば、はるか彼方に遠のいて行ったりもする。
「あぁ、どんな所か自分の目で確かめたい。でも、とっても恐ろしそう…。
そのうえ、いろいろ騙されたり病気になったりするんやろな、やっぱり…。」
ずっとそう思っていた。

なんでもいいから、何かに背中をドンッと押して欲しかったのかもしれない。
「このチャンスを逃がしたら、今行かなかったら、 もう一生インドには行けないかもしれない。」
カレー番組をトリプルで観てしまった後、そんな気がして仕方なかった。
三島由紀夫の言うところの“カルマ”が、インドカレーによってなんて、
ちょっと軽過ぎはしないか?いや、ちょっと食いしん坊過ぎはしないか?
とも思うけど、こうしてやっと念願のインドへの旅を決意した。

 次の章へ進む
 ESSAYコンテンツへ戻る 

ホームへ