*第13章 また会う日まで *


デリーで出会った旅の道連れエダッチ・バン君・ナイケン君達は、ここバラナシに一 泊した後、今朝にはもうそれぞれ次の目的地へと旅立っていく。
みんなの出発の時間 まで、ドミトリーでダラダラおしゃべりをしながら時間をつぶす。
なんだかこうしていると、長い間一緒に過ごしてきた合宿生活のよう。とても数日前 に会ったばかりの気がしないのが不思議。たった数日間だったけど、毎日一緒にご飯 を食べたり、いろんな苦労や感動を共にしたり、深い話やどうでもいい話(こっちの 方が多いけど)をしたりしてきたから。

バラナシに着いて即効おなかを壊してしまったバン君は、せっかく久美子さんに貰っ たインドのスペシャル薬を無くして慌ててる。敷き詰められた布団をあちこち必死で めくりながら探している。
昨日彼が、「ちょっとトイレに行って来るわ・・・。」と力なく言いながら消え、再び現 われた時の“やつれぶり”には、みんなで引くほど驚いたものだった。「浦島太郎か よ!」と突っ込みを入れたくなるくらい、一瞬にしておじいさん顔になっていた!彼 のこの先のインド旅に何よりも必要であろう腹痛薬をみんなで必死に探す。

無事薬も見付かり、今度はみんなで記念写真を撮ることに。
「はい、チーズ!」の代わりに、「ハイ、バラナシ!」「ハイ、ルピー!」「ハイ、ぼった くり!」と、最後の口が“い”の形の笑顔になる掛け声のインドバージョンをあれこ れ考えながら。

そうやってふざけて笑ってる内に、出発の時間。
次の町へ旅立っていく彼らと握手をしてお別れ。
玄関先で見送った後、ガート沿いを歩いていく彼らにもう一度サヨナラを言う為、 残ったみんなで急いで屋上に駆け上がる。

今日も、容赦なく太陽がギラギラ照り付けている。
熱い足元。でも風が気持ちいい。
屋上に干された私達宿泊客の洗濯物が、パタパタと大きくなびいている。

眼下の川辺を見下ろすと、たくさんのインド人に混じって、少し先の方に、真っ直ぐ 歩いていく後ろ姿を見つけた。
「バ〜イバ〜イ!!」身を乗り出して、大声で叫ぶ。
驚いて振り向いてキョロキョロとし、やっと私達の方を見上げた三人が、大きく手を 振る。

“サヨナラだけが人生だ”って言ったのは誰だっけ?
旅先で偶然出会った私達は、いつかまたどこかで会えるかもしれないし、
もう二度と 会えないかもしれない。
出会いと別れはいつでも二個一セットだ。
数え切れない程の 出会いと別れを繰り返しながら、みんなお互いの道を歩き続ける。
今はただ、その道の途上でこうして出会い、奇跡のような時間を共有できた事に感謝 するだけだ。

そんな事をしみじみと思いながら、大きなバックパックを背負って川沿いを行く彼ら の姿が見えなくなるまで、大きく大きく手を振り続けた。
洗濯物の真っ白なシーツも一緒にバタバタと大きくはためき続けていた。
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