あなたは、千の槍と千の刃とに貫かれて息絶えるだろう。
よく聞け。
君は火のような男だ。
今のままでは他人ばかりか自分を焼き尽くすことになる。
その土地に着いたら占ってもらうといい。
君の人生を穏やかにするために。
日本から12時間離れた異国への転勤。
旅立つ当日、ふと気になって空港から恩師に報告をすると
一瞬の沈黙の後、電話越しの恩師はそう言った。
まるで呪いである。
不吉な餞別をくれる人だと思った。
だが、恩師の言葉を馬鹿にする気にはならなかった。
僕は既に彼の罠にかかっているのかもしれないけれど。
この路地には、スルタンの時代から占い女が大勢いる。
占い小路だ。
女たちは頭にスカーフを巻き、
タロットカードがようやく並べられるほどの机を置いて
小路の壁沿い一列にうずくまっている。
一様に長い髪にビーズをたくさん繋いで。
小さな声で歌を唄う占い女の前で、
僕の手を引いてきた女が立ち止まった。
この占い師がいいだろう。
この占い師なら、この先長く、君の良い支えになるだろう。
女は私の耳朶を引っ張り、片言の英語で囁いた。
占い女は僕の土埃で汚れた革靴を見、
革のベルトを見、
僕の顔を見た。
がさがさがさがさがさがさがさがさがさがさ。
何と言ったのだ?
僕は紹介女の袖を引っ張って訊いた。
これが声か。
まるで落ち葉をかき分ける音だ。
女は僕の耳朶を引っ張って囁く。
「彼女は言った。
あなたは何よりも輝く。
その炎と光でその身を焼き尽くすほどに、と」
僕は土でできた城壁を眺め、青い空を仰いだ。
恩師の呪いどおりじゃないか。
「あなたの舌鋒に敵う相手はいない。
あなたはその舌のせいで
千の槍と千の刃とに貫かれて息絶えるだろう。
立ったままで」
占い女は商売道具の中から茶色い塊を一つ掴み出し
僕の手のひらに乗せた。
球根だった。
「あなたの魂の身代わりに、この花を植えなさい」
大きな一軒屋の借家の庭を
花ばかりで葉のない赤い花が埋め尽くしたのは
丁度、死者の祭りの時期だった。
咲いて咲いて咲いて
咲き零れて
花は立ったまま枯れた。
04.曼珠沙華 (別名 彼岸花)
/ 辺りが枯れ果てた中でのすがれの一輪